2011年クラシック馬のプロフィール(4)

昨日に続いてフランスのクラシックです。仏2000ギニーの勝馬ティン・ホース Tin Horse のプロフィール。

ティン・ホースは父サーキー Sakhee 、母ジョユーズ・アントレー Joyeuse Entree 、母の父ケンドール Kendor という血統。「ティン」ホースと言うと、オールド・ファンはティン・ホイッスル Tin Whistle やティン・キング Tin King を思い出してしまって何となくスプリンターというイメージが付き纏ってしまいますが、全く別の血統です。

実はティン・ホースの牝系からは目立った活躍馬がほとんど出ていません。私の調査不足かも知れませんが、最大の資料にしているレースホース年鑑に登場する馬もほんの僅か。近親馬のほとんどがフランスで走っていることもあって、頼りになるデータが少ないのが悩みですね。
そこで今回は判った範囲のことに留めますが、来年の3月に発刊されるレースホース2011にはより詳しい血統紹介が載るでしょう。その際には若干の補足ができることに期待して、今回は極く大雑把なプロフィールになることで勘弁願います。

ティン・ホースは5月にシャンティーの新馬戦(1000メートル)でデビュー勝ち、続く6月の小レース(メゾン=ラフィットの1100メートル)も連勝して同じメゾン=ラフィットのロベール・パパン賞に1番人気として出走します。
しかしここでは終始内に凭れるレース内容で5着に凡走して初黒星。その後は立て直して、ドーヴィルのモルニー賞(勝馬はドリーム・アヘッド Dream Ahead)とロンシャンのジャン=リュック・ラガルデール賞(勝馬はウットン・バセット Wootton Bassett)で共に2着(後者は2着同着)してシーズンを終えます。
明けて3歳、ティン・ホースはシーズン初戦に選んだフォンテンブロー賞(勝馬はグラスヴェーギアン)で3着し、見事本番でこれまで負けていた馬に雪辱し、クラシックの栄冠を仕留めました。
所属するのがディディエ・ギルマンという小さい厩舎であること、あまり目立たない地味な血統と言うことでレース前から脚光を浴びるタイプではありませんが、堅実に走っていること、父サーキーにとって最初のクラシック・ホースとなったことで、今後の成長に注目が集まります。

母ジョユーズ・アントレーは2歳時に1100メートルから1600メートルまでに勝鞍のある馬で、2歳牝馬のパターン・レースであるオマール賞 Prix d’Aumale (GⅢ)に勝っています。
オーナー・ブリーダーであるマルケーザ・ド・モルターラの生産馬であるジョユーズ・アントレーの産駒は、ほとんどがフランスで走っていて、ティン・ホースが5頭目の勝馬になるそうです。
主なものを挙げると、
6ハロンから7ハロンの距離で勝鞍のあるスウィング・ヴォーター Swing Voter (2001年、鹿毛、牡、父マキャヴェリアン Machiavellian)、
ドーヴィルの1600メートル戦やフランスの地方競馬クラオン競馬場のクリテリウムに勝ち、コンデ賞(GⅢ)に3着した実績のあるビカムズ・ユー Becomes You (2006年、牝、父ロミタス Lomitas)といったところ。

2代母ケープ・オブ・グッド・ホープ Cape of Good Hope (1987年、栗毛、父クリスタル・グリッターズ Crystal Glitters)の競走成績は判らず、産駒で判明したのはジョユーズ・アントレーのみ。もしかすると早逝したのかも知れません。

3代母はレディー・エグランティーヌ Lady Eglantine (1980年、栗毛、父ライトニング Lightning)と言い、彼女の別の娘ステファノーティス Stephanotis からはフランスの障害レースのGⅠ戦に勝った馬が出ています。

更に遡っても特記するほどの馬は出ていないようですが、5代母ネヴァー・セイ Never Say (父ネヴァー・セイ・ダイ Never Say Die)は英国馬で、牝馬のセントレジャーと言われるパーク・ヒル・ステークスに勝ったステイヤーです。

ティン・ホースの直接の牝系では11代遡ったところで漸く1917年のオークス馬サニー・ジェーン Sunny Jane が登場し、更に2代遡ると名馬セプター Sceptre に行き当たります。
セプターはダービー以外のクラシックを総なめした4冠馬として並ぶもののない名競走馬でしたが、繁殖牝馬としては失敗しています。恐らく彼女のファミリーから出たダービー馬(1963年)はレルコ Relko が最後ではないでしょうか。(レルコの7代母がセプター)

ということで、ティン・ホースはセプターの流れを汲む久々のクラシック馬かも知れません。最近の特徴を見ても、継続的にクラシックホースを出し続けるファミリーとは言えないようです。
ティン・ホースの父サーキーは凱旋門賞を圧勝した馬。ダービーは2着でしたからスタミナを伝える種牡馬と思いきや、現在までの代表産駒がスプリンターのサーキーズ・シークレット Sakhee’s Secret という具合で、父系からもティン・ホースの将来を占うのは難しいようです。

ファミリー・ナンバーは、16-h。

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