第30回・東響名曲全集

今日も演奏会です。東京交響楽団が本拠地・川崎ミューザで行っている、名曲全集。
私は名曲○○というコンサートが苦手で、このシリーズも一度出掛けただけだと思います。今回の目当ては、フィトキンのサーキット再演。

東京交響楽団名曲全集第30回 ミューザ川崎シンフォニーホール
ヘンデル=ハーティ/組曲「水上の音楽」
フィトキン/サーキット
~休憩~
チャイコフスキー/交響曲第6番
指揮/大友直人
独奏/小川典子、キャサリン・ストット
コンサートマスター/高木和弘

最初のヘンデル、昔懐かしいハミルトン・ハーティ卿が現代のオーケストラ編成のためにアレンジした水上の音楽です。私が聴いて育った水上の音楽は、このハーティ版でした。ミュンシュ/ボストンのドーナツ盤、カラヤン/フィルハーモニアのMP盤、音楽好き中学生が毎日学校から帰ると聴いていたのが、これ。
昨今のオリジナル楽器の水上は、どうにも馴染めません。出自がそうなんだから仕方ないでしょ。

ですから今日も懐かしく楽しみました。ただ、東京交響楽団は、私の好みから言うと、いささか動きが重い。今回のヘンデルもフル編成の弦楽(16型)のせいだけではないと思います。このオケの体質。もう少し軽やかなアンサンブルで聴きたい、と考えるのは無いものねだりでしょうかね。

続いて本日のメインディッシュ(私にとって)、サーキット。
これは興奮しましたね。この作品、世界初演のテープ、日本初演の東京フィル、今日と同じコンビによる再演などで何度か聴いてきましたが、この日はこれまで以上のスリルを味わうことが出来ました。これぞサーキットの真価。正に作品自体が進化していると言えましょうか。
噂によれば、今回はレコーディング・セッションが同時進行している由。いつも以上に弾き込まれている状況が影響しているのは間違いないでしょう。

私のサーキットへの惚れ込みは、遂にはスコアを取り寄せるまでになっていたのですが、譜面を見て判断できることは、これが実に難しい作品であるということ。
リズムを正確に刻むことの困難もさることながら、エネルギーを保ちつつ、最後に一気にクライマックスに向けて突進するパワーが要求されているのです。音量の上で弱まるところがあっても、内在するエネルギーは決して弛緩しない。それはソリストにとっても、オーケストラにとっても同じ。

今回はこれが見事にクリアーされていました。Last Minutes の圧巻。それはもう、ヘンデルで感じた不満を一気に解消してしまう見事さでしたね。
いずれ発売されるCDを期待して待ちたいと思います。いや、これだけのナマ演奏を披露してくれれば、それ以上は贅沢でしょうか。

演奏後、客席の作曲者が呼ばれましたが、日本初演の時以上に軽快にステージにジャンプ。本人も大満足の様子でしたね。
ストット=小川のデュオも、彼らのために作曲された作品の本質を完璧に描き出していましたし、マエストロ大友との呼吸も万全でした。
それにしても大友さんと小川さん、先日の京都でも息の合ったところを披露してくれましたね。何気なくプログラムを見ていたら、二人ともイニシャルは「N.O.」なんですね。気が合うわけだ。

今日はアンコールとして、プーランクのエレジーが準備されていました。サーキットとは正反対、メインの緊張を解してくれる音楽。

本来のメインはチャイコフスキー。改めて思うことは、ミューザは音が良い、ということ。またか、と思われるかもしれませんが、そうだから仕方ない。
大友/東響は最近も池袋で聴いています。ですが今日は印象が違って聴こえるのです。例えばブルックナーでは硬く、深味に欠けて感じられる全奏が、ここでは温かく豊かに響く。これがこのオーケストラ本来の響き、と思いたいですね。
マエストロの自然な音楽の運びが、ここでは心地良く、チャイコフスキーの苦悩も子守唄にすら感じられるのでした。

アンコールは「くるみ割り人形」のトレパーク。

 

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