SQWのクァルテット・プラス

昨日は久し振りに晴海トリトンの第一生命ホールに行ってきました。個人的には室内楽の聴き初めになります。
最近ではオーケストラの演奏会より室内楽のコンサートに顔見知りが多く、何人もの知人に“明けましておめでとうございます。今年もよろしく”という挨拶に。
聴いたのは晴海で続けられてきたSQW(String Quartets on Weekends)の一つ、エクセルシオの出番。主催者には申し訳ありませんが、当シリーズには往年の情熱も影を潜め、今シーズン私が聴く予定はこれだけ。従って担当者にお任せの1階後方席での鑑賞となりました。
プログラムは新年に相応しく以下のもの。

ヴォルフ/イタリアン・セレナーデ
シューマン/弦楽四重奏曲第3番
     ~休憩~
ボッケリーニ/ギター五重奏曲第4番ニ長調G.448
三善晃/ギターと弦楽四重奏のための「黒の星座」
グラナドス(大場陽子編)/スペイン舞曲集作品37より
 ギター/大萩康司
 クァルテット・エクセルシオ

晴海でラボ・エクを続けてきたエクセルシオですが、クァルテット・プラスに形を変えて3回目の今回はギターとの共演。スペインを代表する楽器でもあり、選曲は自ずと肩の凝らない作品が並びます。
それにしても見事な選曲。前半のクァルテットのみによる作品にしても、オープニングの定番たるヴォルフ、比較的軽いタッチのシューマンで耳慣らしをしてから後半のギターとの共演に持って行く辺り、心憎い配慮と言えましょう。

そして後半にしても、決して軽い内容とは言えない三善作品を置くことにより演奏会全体が引き締まります。三善のレアものを聴かんがために会場に足を運んだ室内楽ファンも少なからずいたでしょう。かく申す小生もその一人。

新年を祝うシャンパンのような前半が終わり、ギターの俊英・大萩康司を伴ってメンバー全員が登場します。選ばれた3曲、実は中央の三善作品以外は、昨年のサントリー・ブルーローズで行われた室内楽アカデミーでも共演したもの。
ボッケリーニにはカスタネットが登場し、グラナドスはサントリーで初演された大場氏編曲の3曲(ビリャネスカ、アンダルーサ、ホタ)の再演。共に感想は去年認めましたから省略しましょう。

で、個人的には本命の三善作品。これが公開で演奏されるのは二度目か三度目と言う貴重な機会とか。作品の概要を記録しておくと、
プログラム誌の曲目解説(寺西基之氏)によると、1989年にギタリスト芳志戸幹雄氏が三善作品のアルバムを録音する際にフィル・アップとして委嘱されたものの由。その後、1992年に第1回大阪国際室内楽コンクールの課題曲として作曲者自身によって弦楽四重奏曲のみの編成に編曲され、その形で出版・演奏されてきた経緯があります。
実際、手元にある全音のスコアにもその旨が記されています。「黒の星座」とは、芳志戸氏がオリジナルの曲名「Constellation noir」(黒い星座)を「黒の星座」と呼んでいたために、そのまま弦楽四重奏(第3番)のタイトルにしたそうな。

今回の公開演奏は少なくとも2回目だそうで、ギターのパート譜などは新たに起こしたという話も伺いました。「苦労の星座」でもありますな。
再び解説に戻ると、クァルテットのみによる冒頭は両曲に共通していますが、その後はギター版と四重奏版とでは別作品とした方が良いほど差異があるもの。五重奏版はギターと弦楽の異なる2つの音響世界が交錯する譜面になっています。

実際に聴いてみると、冒頭から如何にも三善晃の鮮烈な世界が炸裂し、単一楽章の比較的短い時間の中でテンポも目まぐるしく変化。カデンツァを挟み(もちろん四重奏版とは別の世界)、動と静の対象が鮮やかな三善ワールドが的確に描き出される演奏でした。

後半は曲目毎にセカンド山田が大萩にミニ・インタヴューする形で進行します。その中で三善作品に寄せる想い、ブルーローズでも紹介されていたスペイン旅行の感想などが披露されました。

こういうコンサートでは不可欠のアンコール、キューバの作曲家エルネスト・レクオーナのアフロ=キューバ舞曲集からダンザ・ルクミ Danza Lucumi (ルクミ族の踊り)が演奏されましたが、この小品についても大萩氏から詳しい内容についてのスピーチがありました。
帰宅してからネットで調べたものを総合すると、ルクミとは、かつてナイジェリアのヨルバ語族が黒人奴隷としてキューバ東部に連れてこられた人達のことで、キューバでは良く知られた音楽とのこと。けだるいリズムと、ブルース風のメロディーが特徴の三部形式による舞曲。
今回演奏されたのは、野平一郎氏がギターと弦楽四重奏にアレンジしたもので、エクによれば“数年前?”に白寿ホールで初演したそうな。今回が二度目のライヴなんでしょうか。

最後は恒例のサイン会もあって、エク女性メンバーの衣裳に相応しく、華やかな新年最初の室内楽が終了しました。

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