シャンハイ・ボビー敗れる

昨日の土曜日、アメリカのG戦は予定通り3つの競馬場で5鞍が行われましたが、先週の悪天候で順延されたフェア・グラウンズの一鞍も実施。合わせてのレポートとなります。

最初にガルフストリーム・パーク競馬場、2鞍はいずれも今春のクラシックに繋がるトライアル戦で、共に中心となる馬の登場が注目されます。先ずはフォワード・ギャル・ステークス Forward Gal S (GⅡ、3歳牝、7ハロン)。馬場は fast 、僅かに6頭立て。お正月にオールド・ハット・ステークス(GⅢ)を圧勝したカウアイ・ケイティー Kauai Katie が1対5の断然1番人気に支持されています。プエルト・リコのチャンピオン2歳フサイチズワンダフル Fusaichiswonderful が本命馬と同じプレッチャー厩舎にトレードされてアメリカ初戦を迎えるのも話題。こちらは7対1の4番人気。
大外6番枠からスタートし、すんなりと先頭に立ったカウアイ・ケイティー、そのまま他馬を寄せ付けず2着マイ・ハッピー・フェイス My Happy Face (9対2、2番人気)に5馬身半の大差を付ける楽勝で貫録を見せ付けました。3着には更に2馬身4分の3差で最低人気(45対1)のパウ・ワウ・ワウ Pow Wow Wow 。注目のフサイチズワンダフルは4着に終わっています。
トッド・プレッチャー厩舎、ジョン・ヴェラスケス騎乗のカウアイ・ケイティーは、これで6戦5勝。2歳時にはメイトロン(GⅡ)、アディロンダック(GⅡ)を制しており、唯一の敗戦はBCジュヴェナイル・フィリーズでの4着のみ。クラシックに向けて視界良好と言えましょう。

続いては牡馬のクラシック・トライアルとなるホーリー・ブル・ステークス Holu Bull S (GⅢ、3歳、8.5ハロン)。2歳チャンピオンのシャンハイ・ボビー Shanghai Boby が3歳初戦を迎え、イーヴンの1番人気に支持されています。しかし他厩舎も強気、チャンピオン相手に9頭が挑戦状を叩き付け、10頭立てで争われました。
やや不利と思われる1番枠スタートのシャンハイ・ボービー、いつものようにロージー・ナプラヴニクを背に先頭に立ち逃げ切りを図りますが、3番手を追走した2番人気(9対2)のイッツマイラッキーデイ Itsmyluckyday の動きが良く、直線入口で本命馬に外から並び掛けると、直線での叩き合いを2馬身制しての逆転勝ち。それでも勝馬に食い下がるシャンハイ・ボビーと3着クリアリー・ナウ Clearly Now との着差は11馬身半も開いていました。勝時計の1分41秒81はトラック・レコード更新、チャンピオンの初黒星より、勝った馬の強さが光る一戦でした。
エドワード・プレーサ師が管理、エルヴィス・トルヒーヨ騎乗のイッツマイラッキーデイは、これで9戦5勝。前走はお正月のガルフストリーム・パーク・ダービー(一般ステークス)で、2着に6馬身4分の3差を付ける圧勝を演じていました。
敗れたシャンハイ・ボビーのプレッチャー陣営、無敗の連勝記録は「5」で止まったものの内容には満足。レコード・タイムが出たことでもあり、3着との着差を考えればこの日は勝った馬が強かったということ、引き続きクラシック戦線の中心的存在であることに変りはないでしょう。

西海岸のサンタ・アニタ競馬場でもクラシック・トライアルとなるサンタ・イザベル・ステークス Santa Ysabel S (GⅢ、3歳牝、8.5ハロン)。雨が降ってダートコースは湿っていましたが、発表は fast 、1頭取り消して5頭立てで行われました。ここ4戦でいずれもステークスで2・3着している堅実なスカーレット・ストライク Scarlet Strike が3対2の1番人気。G戦でもシャンデリア・ステークス(GⅠ)で2着、ハリウッド・スターレット(GⅠ)でも3着と今一歩でG勝ちを逃してきました。今度こその必勝態勢。
レースは3番人気(3対1)のエスケープ・アクト Escape Act が逃げ、スカーレット・ストライクは最後方待機。2番手を進んだ4番人気(6対1)のフィフティーシェイズオブヘイ Fiftyshadesofhay が直線で抜け、2番人気(2対1)ヘア・キッティー Heir Kitty に5馬身4分の3差を付ける番狂わせ。本命スカーレット・ストライクも追い上げましたが1馬身半差及ばす3着、又しても入着に甘んじてしまいました。fast とは言え、この馬場では後ろから行き過ぎたのではないでしょうか。福永ジョッキー騎乗で勝ったこともあるスイッチ・トゥー・ザ・リード Switch to the Lead は最低人気で4着(と言っても3着からは27馬身遅れ)。
勝ったフィフティーシェイズオブヘイは、名門ボブ・バファート厩舎、ラファエル・ベハラノ騎乗。前々走11月のハリウッドで初勝利し、前走サンタ・アニタの芝一般ステークスは8着と凡走して芝には不向きであると判断、ここで真価を発揮しての6戦2勝となります。

サンタ・アニタのもう一鞍は、古馬牝馬スプリンターのサンタ・モニカ・ステークス Santa Monica S (GⅡ、4歳上牝、7ハロン)。去年まではGⅠ戦でしたが、今年はGⅡに格下げ。これで1月のGⅠは無くなることになりました。アメリカのグレード戦格付けは度々変わり、終始一貫していないのが特色。システム導入から通してGⅠにランクされてきたレースは意外に少ないものです。
ということでサンタ・モニカ、ジャンルとしては牝馬スプリント(芝コースは除く)路線で、馬場が湿っていることもあってか2頭が取り消し、7頭が出走してきました。3対2の1番人気は、去年のBCフィリー・アンド・メア・スプリントでは8着にバテたテディーズ・プロミス Teddy’s Promise 。前走同じサンタ・アニタ今開催の一般ステークスに勝っての連勝に期待が掛かります。
外からダッシュ良く飛び出したキンドル Kindle の3番手に付けたテディーズ・プロミス、直線で外から逃げ馬を捉えると、4番手から追い込むシュガーインザモーニング Sugarinthemorning に3馬身差を付けて見事期待に応えました。半馬身差で逃げ粘ったキンドルが3着。シュガーインザモーニングは、2年続けてのサンタ・モニカ2着です。
ロナルド・エリス厩舎、ヴィクター・エスピノザ騎乗のテディーズ・プロミスは、2011年にラ・ブレア・ステークスを制したGⅠ馬。その余勢をかって挑んだ去年のサンタ・モニカ(当時はGⅠ)では道中に不利があったこともあって5着敗退。今回は一昨年のラ・ブレア以来久し振りのG戦優勝となります。

事実上、土曜日最後に入電したのがサム・ヒューストン競馬場。フロリダの東部時間(ET)とテキサス州ヒューストンの中部時間(CT)との時差がどのくらいあるのかは知りませんが、ホーリー・ブルは午後5時スタート、サム・ヒューストンのメインは夜9時15分スタート、この間にジョッキーは移動できるほどの時間差があるようですね。地図を見ると、メキシコ湾上空を真西に移動すれば良いみたい。
時差に付いて拘ったのは、ホーリー・ブルで本命シャンハイ・ボビーに騎乗したロージー・ナプラヴニクが、メインのG戦ジョン・B・コナリー・ターフ・カップ John B. Connally Turf Cup (芝GⅢ、4歳上、9ハロン)でも人気の一角キング・デヴィッド King David に騎乗していたから。去年10月にジャマイカ・ハンデ(芝GⅠ)にナプラヴニク騎乗で勝った同馬は、ハットトリック Hat Trick 産駒であることでもお馴染みでしょう。しかしキング・デヴィッドは5対1の4番人気、9対5の1番人気に支持されたのはスイフト・ウォリアー Swift Warrior 、3歳時にはトロピカル・パーク・ダービー(GⅢ)で3着した馬です。
1番枠から好スタートを切ったスイフト・ウォリアー、絶妙なペースを作っての逃げ切り勝ちです。6番枠から出たナプラヴニク騎乗のキング・デヴィッドは巧みに内ラチ沿いにコースを取り、4番手からインコースぎりぎりを通って追い上げましたが、スイフト・ウォリアーは直線で再びリードを広げる快走で、キング・デヴィッドを2馬身4分の3差を付けて期待に応えました。2番人気(5対2)のウィルコックス・イン Willcox Inn が後方から追い込み、4分の3馬身差で3着。
ジョン・P・テラノヴァ厩舎、ホセ・エスピノザ騎乗のスイフト・ウォリアーは、去年2月にタンパ・ベイ・ステークス(芝GⅢ)、11月にはハリウッド・パークのターフ・フェスティヴァル開催でリヴァー・シティー・ハンデ(芝GⅢ)でいずれも3着した5歳馬で、これがG戦初勝利となります。
一方4番人気のキング・デヴィッドを2着に持ってきたナプラヴニク、フロリダのシャンハイ・ボビーに続き又しても2着でしたが、いずれも好騎乗。当夜のサム・ヒューストンでもメインの前後の一般ステークスを共に制しており、女流とは言え騎乗テクニックはレヴェルの高いアメリカでも一流のもの。そのタフさを含めて日本のジョッキーも学ぶ所が多いと思います。

ところで昨日はフェア・グラウンズ競馬場でもG戦のカーネル・E・R・ブラッドリー・ハンデ Col. E. R. Bradley H (芝GⅢ、4歳上、8.5ハロン)が行われました。本来は1月19日に予定されていたレースですが、同コースは雨が降り続いていたため芝コースが荒れ、予定の3日前には順延が決まっていたもの。開催途中で中止されたステークスが日を改めて行われた形です。そう、先日日本でも雪のために京成杯を含めた番組が延期されたのと同じ措置ですね。
この日は good の芝コース、9頭が出走し、2対1の1番人気に支持されたオプティマイザー Optimizer が順当に逃げ切りました。3馬身半差2着に2番人気(7対2)のストリング・キング String King が入り、4分の3馬身差で最低人気(14対1)のビン・バン Bim Bam が3着。
勝馬を管理するウェイン・ルーカス師は、19日には予定通り行われたメイン・コースのルコント・ステークス(GⅢ)をオックスボウ Oxbow で制しており、2週に跨ってのG戦ダブル達成です。ジョン・ケントン・コート騎乗。オプティマイザーは去年9月にデラウエアでケント・ステークス(芝GⅢ)に勝ち、前走ハリウッド・ターフ・カップ(芝GⅡ)でも3着した実力馬。二つ目のG戦制覇となりました。

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