ランニクルスのタンホイザー

前日に続き、8月4日の日曜日にはランニクルス指揮BBCスコティッシュ管によるワーグナー「タンホイザー」全曲の演奏会形式上演が行われました。
もちろんドイツ語による歌唱です。

≪Prom 29≫
ワーグナー/歌劇「タンホイザー」(演奏会形式)
 BBCスコティッシュ交響楽団
 指揮/ドナルド・ランニクルス
 合唱/ベルリン・ドイツ・オペラ合唱団
 ロバート・ディーン・スミス(タンホイザー)
 ハイディ・メルトン(エリザベート)
 ダニエラ・シンドラム(ヴェーヌス)
 アイン・アンガー(領主)
 クリストフ・ポール(ヴォルフラム)
 トーマス・ブロンデル(ワルター)
 アンドルー・リース(ハインリッヒ)
 ブライアン・バナタイン=スコット(ラインマール)
 アシュレー・ホランド(ビーテルロフ)
 ヒラ・ファヒマ(羊飼いの少年)

前回ランニクルスを絶賛しましたが、このタンホイザーも圧倒的な公演でした。
実は私が初めて歌劇の全曲レコードを買ったのが(いや、買って貰ったのが)、タンホイザー。コンヴィチュニー指揮でグリュンマー、ハンス・ホプフ、ディースカウ、フリックなどが歌った名盤。盤面が擦り切れるまで繰り返し聴いたものです。
タンホイザーは、昨日も川崎で序曲と夕星の歌を聴いたばかりですが、全曲を通して鑑賞したのは随分と久し振りのことでした。冒頭のホルン、クラリネット、ファゴットのアンサンブルを聴いただけでゾクゾクしてきますね。

で、この歌劇の場合はドレスデン版かパリ版かという問題がありますが、プロムスのホームページ等では一切記載はありませんでした。コンヴィチュニー盤がドレスデン版だったことでもあり、何となくこの版だろうと決めてかかりましたが、序曲の途中でパリ版に移って行ったので大慌て。オイレンブルク版のスコアを後に飛んだり前に戻ったりと慌ただしく聴き終えたところです。
最新刊ではどうなっているのか知りませんが、手元のオイレンブルク版スコアは基本をドレスデン版とし、付録としてパリ版が印刷されています。両版の相違箇所は第1幕に3か所、第2幕に2か所、第3幕が1か所で合計6か所ありますが、その度に行き帰りするのは結構面倒なものです。

更に戸惑うのは、今回のプロムスは完全なパリ版という訳でもなく、確かに第1幕はパリ版でしたが第2幕はドレスデン版。最後の第3幕は再びパリ版という具合で、折衷版による演奏、ということで良いかと思われます。
一部自身が無い個所がありますが、この長丁場をもう一度聴く気にはなりませんので、後日時間が出来、未だ視聴可能であれば再確認しておきましょう。

そういう煩わしいことは抜きにして、タンホイザーの本格的な演奏を楽しめます。何より合唱が巧いなぁ~、と感心したら、ベルリンからの客演でした。このオペラでは合唱が隠れた主役でもありますから、これが貧弱では演奏は台無しです。
タイトル・ロールのスミスも立派。プロムスでは代役のトリスタンも感心しましたが、タンホイザーは適役。ローマ語りでの集中力と表現力は、現在でも屈指のタンホイザーと言えましょう。

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