巨匠ランニクルス

プロムスの遅れを取り戻すべく、早朝からBBCにアクセスしています。どうやら猛暑が戻ってくるようですから、早朝のいくらかでも涼しい時間に聴きましょう。
今回は8月3日の分で、

≪Prom 28≫
ヨハン・シュトラウス/美しく青きドナウ
マクミラン/ヴァイオリン協奏曲
     ~休憩~
ベートーヴェン/「コリオラン」序曲
ベートーヴェン/交響曲第5番
 BBCスコティッシュ交響楽団
 指揮/ドナルド・ランニクルス
 ヴァディム・レーピン(ヴァイオリン)

BBCスコティッシュ響は、去年も首席指揮者ランニクルスとのコンビで二度登場し、ブルックナーやワーグナーでプロムスを沸かせました。
私の中で急成長しているのが、この指揮者。メットでもピーター・グライムズなどを聴いた人で、左利き。チョッと聴くと普通に平凡な音楽をやる指揮者のように見えますが、どうして聴後に残るものがズシリと重いタイプですね。
ドイツに優秀な指揮者が不足する中、独墺系音楽を振って独特な存在感を持つ巨匠に伸し上がってきたと思います。来日したことがあるのかは知りませんが、王道のドイツ音楽を振れる指揮者を探しているオケは、今直ぐにでもコンタクトを取るべきでしょう。

最初は珍しくシュトラウスのワルツですが、所謂ウインナ・ワルツのリズムではないものの、真に芸術的な演奏と言うしかありません。格調が高い、ということでしょう。

マクミランのヴァイオリン協奏曲は素晴らしいと思いました。母の追憶として書かれたもので、今回のソリストであるレーピンに捧げられた作品。2009年作曲で、既に世界各地で演奏されている由です。
25分ほど、3楽章構成で、スコットランド風の楽想が特徴。第1楽章は特徴のあるリズムが中心となって何度も登場、第2楽章はスコットランド民謡を想起させるメロディアスな音楽ですが、ダイナミックな幅はこの楽章が一番でしょう。
聴きものは第3楽章で、恐らく楽員の掛け声と思われるドイツ語の1-2-3「アインス・ツヴァイ・ドライ」で開始。最後の方では女性の声がスピーカーから増幅して流され、「5・6・7」(フュンフ、ゼクス、ジーベン)に続いてドイツ語で何事か語られるのです。この後に続くのが、レーピンによる見事なカデンツァ。

この協奏曲は聴きものでしょう。スコアがあれば是非手に入れたいと思いました。もちろん音盤も。

後半のベートーヴェンは、現在のランニクルスを代表する演奏。さり気ない中にスタイリッシュなベートーヴェンを聴かせてくれました。
第5交響曲では、第4楽章も繰り返し。古楽器系とは無縁、かと言って奇を衒った表現も、スコアの改竄も一切無し。私が理想とするベートーヴェン像です。

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