京都市響・名古屋公演

お彼岸の中日、3連休の最終日、未だ残暑の厳しい名古屋に出掛けました。お彼岸絡みではありますが、広上/京響の名古屋公演を聴くのが最大の目的です。
名古屋公演は京響にとっては4回目の由、私は初体験でした。会場は名古屋における芸術活動の発信地、愛知県芸術劇場コンサートホール。もちろん名フィルの本拠地でもあります。

このホールは何度か名フィル定期で聴いたことがありますが、どうしても定期では希望の席は会員券で埋まっており、今回のような一からチケットを売る公演こそ、好みの席で聴くチャンス。チケット売り出しの当日に良席をゲットしました。
ところで良い席ってなんでしょう? もちろん人によって好みは異なりますが、私は歌舞伎座でそれとなく言われている「とちり」ですね。「とちり」とは、イロハ順に並べて7列目から9列目まで。この列の中央ブロック辺りが、音響的にも視覚的にも優れているという俗説。私も全く同感で、どこでも選べるなら「とちり」の真ん中を指名してきました。現在の各オケ定期もこの方針。
余談はそこまで。今回は「り」のど真ん中、即ち9列目の中央に陣取りました。それにしてもチケット、廉いですねェ~。この内容でこの価格、新幹線で日帰りする価値は十二分以上にあると感じます。以下のプログラム。

デュカス/交響詩「魔法使いの弟子」
ロドリーゴ/アランフェス協奏曲
     ~休憩~
リムスキー=コルサコフ/スペイン奇想曲
ラヴェル/ボレロ
 京都市交響楽団
 指揮/広上淳一
 ギター/沖仁(おき・じん)
 コンサートマスター/泉原隆志

京響は3月定期@京都以来ですが、実は8月定期も聴きに行く予定でした。チケットも買って楽しみにしていましたが、どうしても外せない用事が入り、止む無くパス。完売だったチケットは、元京響楽員のO夫人にピンチヒッターをお願いした次第。
友人でこれまた楽員OBさんと同行された夫人によると、“すっごく良かった。京響も巧くなったわねェ~”との感想。京都の恨みを名古屋で晴らす気持ちで「のぞみ」に夢を託します。

どうしても本公演を聴きたかった理由がもう一つ。小欄は未だ広上が若手バリバリだった頃からの追っ駆けですが、悔しいことにスペイン奇想曲は聴き逃した一品。その快演(あるいは爆演だったとも)は今でも語り草になっている程で、この機会に実際に自分の耳で確かめたかったから。
ということでややフライング気味に名古屋入り、コンサートホールに向かいます。会場に入ると、関連グッズ売り場には20日に発売になったばかりの「京響ライヴ・シリーズ」第3弾が目に。躊躇わずゲットして「り」に陣取ります。

以下、コンサートは期待通り、予想通りに進みます。
冒頭のデュカスは小手調べと言うか、好みの席で聴く愛知県芸術劇場コンサートホールの音響を確認。やはり歌舞伎座の俗説は正しいのだ。

2番目のアランフェス。正直に申せば、ほとんど期待していなかった曲目。予想通り、個人的には強い違和感を覚えました。
初めて聴くソリストは、独学でエレキギターを始めた人で、クラシックギターはカナダで1年間学んだとか。元来フラメンコ畑の人で、ジャンルを超えて活躍中の才人。
ただ私の持っているアランフェスとは凡そ懸け離れた感性で、楽器も違うし、音も乾燥度が低く、私の肌には合いません。スピーカーを通して響く低音の重い音は気分を低くさせるし、第2楽章のカデンツァで腰を挙げるパフォーマンスも煩わしく感じられました。

直ぐにアンコールが弾かれ、自身の作曲によるフエゴ(炎)という短いもの。ここでは終始立ち上がり、右足を踏み台に叩きつけるようにして相槌を入れます。もちろんフラメンコの伝統的な奏法でしょう。客席は喝采。

私の期待は、もちろん後半。なるほどこれがスペイン奇想曲かと感心頻り。この作品は指揮者はもちろんのこと、各プレイヤーの妙技が無ければ完全には楽しめないもの。特にコンサートマスターとクラリネット・ソロは重要で、京響の二人はオケの看板とも言える名手たち。
加えてホルン、フルート、ハープなど、次々にレヴェルの高いテクニックが披露されていきます。古臭い表現かもしれませんが、光彩陸離として間然する所なき名演と呼べるでしょう。
しかし聴き落としてならないのは、第2章の「変奏曲」。広上は、この曲のツボはここだと言わんばかりに、濃密な表現で弦をタップリと謳い上げます。ここが「出汁」となり下地にタップリ浸み込んでいるので、後半のスリリングな展開が一層光を放つのでした。

ボレロはこれまでも客席を唸らせてきた名曲。レヴェル・アップした京響のパワーを信頼してこその熱演が、客席の大歓声に繋がります。オケも、前半と後半では管楽器の首席を入れ替える層の厚さを証明していました。
マエストロはボレロの前半ではほとんど動かず、後半に入ると鰻掴み踊りとでも表現の仕様が無い独特のくねり。これが何とも音楽的で、如何にもボレロという所が、広上音楽の楽しさ、見所でもあります。

本編を終え、マエストロから短いスピーチ。先ず自分の指揮者としてのスタートは名古屋だったことを告白、“名東区に住んでました。”と紹介すると開場から拍手。
このあとも流行語や最新の話題を交え、シッカリ京響のCDも宣伝して客席を和ませ、この分野でも堂々たる名人芸を披露。正に「名トーク」(名東区)だったと、これは個人的な駄洒落。
“クラシック、聴くなら今でしょ”で指揮台に飛び乗ったのがブラームスのハンガリー舞曲第6番。あ~、面白かった!!

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1件の返信

  1. azumino より:

    はじめまして
    普段はジャズを聴いているのですが、この公演に僕も行きました。広上さんの指揮は、ダイナミックで歌わせるところもあってよいですね。ご指摘のように、アランフェス協奏曲ですが、つまらなくて、なぜ皆が拍手をしているのか全くわかりませんでした。ただ、彼のファンだという人も客席にいて、チケットの売り上げには貢献したようです。

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