名古屋フィル・第338回定期演奏会
昨日は名古屋に遠征、以下のものを聴いてきました。
名古屋フィルハーモニー交響楽団第338回定期演奏会 愛知芸術劇場コンサートホール
バルトーク/ヴァイオリン協奏曲第2番
~休憩~
ブラームス/ハンガリー舞曲集(全21曲)
指揮/広上淳一
独奏/植村太郎
コンサートマスター/日比浩一
わざわざ名古屋にまで聴きに行ったのにはいくつか理由があります。
何といっても広上の指揮。曲目にブラームスのハンガリー舞曲全曲というナマでは聴いたことのない演目があること。名古屋は家内の実家にも拘らず、このところご無沙汰だったこと。家内の名古屋での学友がクラシックのコンサートに行きたがっていたこと等々。
名古屋フィルは、以前にすみだの地方オケ・フェスティヴァルでナマ演奏に接したことがあります。そのときは当時の常任指揮者・沼尻氏の指揮でやはりブラームスがメインでした。アンコールがあって、今回もやるハンガリー舞曲第1番でしたが、実に熱い演奏で、良い印象が残っています。
愛知芸術劇場はもちろん初めて。名古屋には何度も行っているけれど、この街で音楽を聴くこと自体初体験です。
愛知芸術劇場という施設にはいくつもホールがあって、今日の演奏はコンサートホールの大。もちろん小ホールもあります。
その他に劇場と称するものもあって、大劇場ではオペラもかかる由。展覧会を催しているスペースもあるみたい。
ただ当方が札幌や京都とは違い、心構えが少しいい加減なので、あまり詳しい点にまで注意が行き届きません。
それに地元住まいの家内の友人と待ち合わせたため、あとはすっかり女性軍にお任せしてしまいました。
その準備不足がいきなり露呈。曲目をロクにチェックしていなかったためにいきなり面食らいます。
最初のバルトーク、てっきり1番と勘違いしていました。メインのブラームスは小品の集合体とはいえ、全部演奏すれば小1時間はかかります。前半の協奏曲はそんなに長いものではないと勝手に考えていましたので、大曲の第2とは思わなかった。不覚。いきなりマエストロが棒を振り始めて気が付く始末。
そのバルトーク、意外にもナマではあまり演奏されないように思います。とにかく難しいです。ソロだけじゃなく、オーケストラも。聴く方も。
今日のソリストは1984年の桑名市出身。まだ23歳かな。歳の割りに落ち着いて見えるのは、容姿だけでなく音楽にもいえる事。とても20台前半の音楽とは思えません。
腕は立ちます。ソロだけでなく、室内楽やコンサートマスターとしての経験も既に豊富で、近く本拠をヨーロッパに移すのだとか。
今日奏でたヴァイオリンは、宗次徳二氏所有のグァダニーニの1752年製。太い音色がバルトークに良く似合い、オケの全奏に対峙しても埋もれることはありません。ホールも良いでしょうし、オーケストラのバランスも見事でした。
私は不覚にも曲目を勘違いしていたことと、長距離を移動した疲れから、第2楽章は舟を漕いでいました。従って細かい点に触れることは避けます。
それでも目覚めた後の第3楽章は素晴らしかった。ソロも冴えていましたが、何といっても広上。こんなスリリングなバルトークは予想外でした。
大体この曲は名声ほどにはこれまで感心しなかったのです。フルトヴェングラーの指揮はご愛嬌だし、大分前にN響を振ったシュタインはほとんど崩壊していましたっけ。
とにかく指揮者にとっては難曲だと思います。フィナーレは3拍子で書かれていますが、実は2拍子系の部分が随所に出てくるし、曲想の変化が目まぐるしく、スコアを音にするだけでも大変なシロモノ。これをあそこまで咀嚼して音楽作品としての感動を以って演奏し切る、というのは並みの才能じゃない。予想を遥かに超える収穫。
後半のブラームス全曲。1番から21番まで順序どおり演奏しました。曲中、ところどころに拍手も入ります。
本来は曲集から何曲か、という提案だったようですが、オケ側から全曲やりましょう、ということになつた由。楽譜集めるのも大変ですよ。
実際第10曲まではスコアがバラバラですから、広上氏も曲を終えるごとに楽譜を取り替えます。
更に普段よく聴く「名曲」は前半に集中しているので、11番以降はほとんどの聴衆にとって「新曲」。ドヴォルザークのスラヴ編とは違って全てが2拍子なので、続けて聴くとどうしても飽きてきます。“エッ、まだあるのか~”。こればかりはさすがのマエストロも仕方がありません。
それでも客席は沸きましたね。ブラヴォも随分かかっていました。この「受け」は意外でした。同行した友人も“ナマは久しぶりだけど、ヨカツタ、ヨカッタ”と絶賛。お誘いした甲斐がありました。
広上=ハンガリー舞曲は、チョッと見るとオーケストラに乗って指揮者が踊っているように感じられます。しかし実態は、広上マジックに乗ってオーケストラが踊っているのです。
極めつけは4番と6番。4番の「艶歌」の迸るような情熱。6番の変幻自在なフェルマータとリズムの切れ。
コンサートの楽しみは、良く知っている曲をそのとおりに聴かせてくれる満足感にあります。しかし時に、知っているはずの作品から思いもかけぬ展開を聴けることがある。これは至福の時。
マエストロ広上に私淑するのは、その至福が味わえるからに他なりません。もちろんいつもそう、というわけにはいきません。しかし今日は少なくとも三つありました。バルトークの第3楽章、ハンガリー舞曲の4番と6番。こんなの聴いたことない!!!
名フィルと広上には浅からぬ縁があります。外山音楽監督の基で1年間アシスタントを務めたのがこのオケですし、名フィル初の海外ツアー(1988年8月)を率いたのも広上でしたね。
ですからマエストロとオケの相性もピッタリ。今後も客演の指揮台に立たれることに期待しましょう。
であれば、こちらとしても名古屋に遠征する機会も増えるでしょうしね。
このコンサートホール、なかなか音響も素晴らしいと思いましたし、オーケストラの演奏レヴェル、とっても高いですねぇ。友人も名フィルは下手だ、と思い込みがあったようですが、“オーケストラ上手かったねぇ” 灯台下暗し、ですよ。
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