ノセダ指揮のBBCフィル
8日のプロムスは、イタリアの指揮者ノセダの指揮、かつての首席指揮者で現在は桂冠指揮者の肩書を持つBBCフィルとのラテン音楽特集です。
8月8日 ≪Prom 29≫
カセルラ/英雄的悲歌
ショパン/ピアノ協奏曲第1番
~休憩~
フランク/交響的変奏曲
サン=サーンス/交響曲第3番
BBCフィルハーモニック管弦楽団
指揮/ジャナンドレア・ノセダ Gianandrea Noseda
ピアノ/ベンジャミン・グロヴナー Benjamin Grosvenor
オルガン/デヴィッド・グード David Goode
最初に演奏されたカセルラは、ノセダの出身国であるイタリアの作曲家。マエストロはBBCフィルとシャンドスにカセルラ作品集を何枚か録音していますが、英雄的悲歌は未収録だったと思います。
今回これが取り上げられたのは、今年のプロムスのテーマである第一次世界大戦勃発100年に因んだからでしょう。「英雄的悲歌 Elegia eroica」は、第一次大戦で犠牲になったイタリアの無名戦士に捧げた曲だからです。
しかし作品の背景はかなり複雑。ノセダのインタヴューでも、コメンテイターの解説にも出てきませんでしたが、この曲の初演は大変なスキャンダルでした。ヘフリッヒから復刻されたスコアの解説によると、ほぼ3部からなる作品の最後の個所で客席からは抗議の声が上がり、最後の子守歌(死んだ我が子を思う母の歌を表現している)はほとんど聴き取れない状態に陥ったとのこと。
新聞評も過酷を極め、カセルラを売国奴呼ばわりし、“イタリアから出て行け”との表現もあったほど。何が不評だったのかはハッキリしませんが、不協和音を多用した響きが、ヴェルディの愛国歌のような作品を期待していた一般に受け入れられなかったのかも。
皮肉なことにカセルラは、第二次世界大戦ではムッソリーニに捧げる作品を書いたり、ナチに協力的だったことで批判されてきました。両大戦から100年、70年を経て戦争に翻弄された作曲家カセルラの英雄的悲歌はどのように聴かれたのでしょうか。実際にネット中継を繋いで見てください。
曲の最後にイタリア国家が僅かに顔を出すのが聴いて取れると思います。
2曲目からは誰でも知っている名曲が並びます。この3曲は何も考えずに楽しめる選曲でした。特に最後のサン=サーンス、オルガンの物々しい32フィートの低音は、ネット中継でも感じが出ていると思います。
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