読売日響第490回名曲シリーズ
昨日は読売日響の名曲シリーズを聴きに池袋に・・・。
行ってきました、と続くのですが、いやぁ、行きも帰りも大変でしたわ。
休日に池袋に行くには湘南新宿ラインを使います。最近は便利になったもので、拙宅の最寄駅・西大井からは30分もかかりません。正確には駅から駅で21分、かな。
で、開場時間に着くように家を出たのですが、丁度乗る電車が架線の事故か何かで品川に迂回する、というアナウンス。
では仕方が無いので山手線で大崎、そこからは埼京線で充分間に合う。ところが車内放送によると埼京線も止まっている由。
ここでパニックですね。山手でチンタラ行ったのではギリギリ。
と目黒で窓外を見ると、埼京線は動いているではないか。慌てて恵比寿で山手線を乗り捨ててホーム移動。ところがタイミングが悪く、結局池袋に着いたのは開演時間の18時。こりゃ間に合わないと思いましたが、オーケストラの方で少し開演を遅らせてくれたようで、何とかセーフ。さすがに息が切れたぁぁぁ。
ということで次のもの。
ブラームス/ピアノ協奏曲第2番
ブラームス/交響曲第4番
指揮/ユーリ・テミルカーノフ
ピアノ/ウラディーミル・フェルツマン
コンサートマスター/藤原浜雄
フォアシュピーラー/鈴木理恵子
要するにブラームス・プログラムです。ロシア人指揮者によるブラームスというのは少し心配もありましたが、これは素晴らしいブラームスでした。電車のトラブルなどは瞬時に忘れてしまうほど、音楽に、音楽そのものに没頭できた2時間です。
まずフェルツマンとの協奏曲。このピアニストについては事前に心配な情報を貰っていましたが、どうしてどうして本格的な演奏家。至極マトモなブラームスです。
テンポは中庸より僅かばかり遅目に傾いていましたが、オーケストラの重量感に溢れた伴奏に乗って、ドッシリと腰の重いブラームスを紡いでいきます。いや伴奏というのは中りませんね、これはピアノ付き交響曲。その観点から見ても、満腹感タップリの名演です。
第3楽章のチェロ・ソロは毛利伯郎氏。ピアノと絶妙な対話が素晴らしかったですね。今日のチェロ軍団は、毛利・嶺田コンビが座り、万全の体制でした。
ホルンは1番・山岸、3番・久永のコンビ、相変わらず安定した吹奏で聴衆を惹き込みます。
第3楽章中間部のクラリネットとピアノの絡み、これは素晴らしかったなぁ。改めてブラームスの魅力に酔い痴れた一瞬でした。
余計な事かもしれませんが、聴きどころに書いたピッコロは、第1楽章も第3楽章も2番奏者が担当していました。
休憩後の第4交響曲。
私はテミルカーノフを聴いたのは今回の来日が2度目で、前回はオルフのカルミナ・プラーナでした。そのときは曲目故でしょうが、今一つ特徴を掴み切れなかったのです。
しかし今回は定期のラフマニノフとこの夜のブラームスで、完全にその実力が判りましたね。これは凄い指揮者ですよ。
そのブラームスですが、まだこういうブラームスをやる人が世界には存在していたのですね、と言うくらいドイツ・オーストリア音楽の伝統的演奏スタイルを踏襲したもの。
とに角「うた」に溢れている。どこを聴いてもジューシーなブラームスが滲み出し、肉厚なビーフステーキを味わっている感触と言ったらよいでしょうか。
演奏が始まって直ぐ思い出したのは、ブルーノ・ワルターのブラームス。晩年の枯れた演奏ではなく、ニューヨーク時代の、推進力がありながらどのパートも歌いに歌わせたブラームス。
最近流行の客観的に醒めたアプローチとは対極にある演奏です。ロシアでは古楽的アプローチなどはほとんど縁が無いのでしょう。私は断然このブラームスの方が好きですね。
最初の下降3度、やりましたね! 思い切り音を引っ張り、ミーード。普通のアッサリした出だしの3倍くらいに感じました。
テンポも速目を基軸にしてかなり揺らしますが、決して不自然なものではなく、作品の自然な摂理に忠実。第1楽章では歌に満ちたアレグロに降参。
以後も見事な出来で、第3楽章と第4楽章は思いきってオーケストラを煽ります。オケも必死で喰らい付くスリル。
終了後、ハンカチで汗を拭う楽員が少なからず見受けられましたが、おそらくテミルカーノフはオケの実力を完全に把握した上で、ギリギリの能力まで出し切ったのでしょう。
大いなる満足感。マエストロの表情に出ていました。
第4楽章でフルートを担当した倉田優。いつぞやも感じましたが、音が良く通り、素晴らしい音楽性を持ったソリストです。一際大きな拍手が彼女に送られていました。
アンコールがありました。定番、ハンガリー舞曲第1番。これでテミルカーノフと読売日響は東京芸術劇場を引っくり返してしまいましたね。
帰りは電車のダイヤが滅茶苦茶。乗っている電車を途中で降ろされたりしてやっと帰り着きましたが、このブラームスを堪能した後では、怒る気が起きませんでしたね。
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