そろそろトゥービン・モードに切り替え

暑さ寒さも彼岸まで、と言いながら、今年は3月に入ってから寒いですねぇ。今日も散歩しようという気が起きません。

ところで札幌行きが近づいてきました。別に宣伝することでもないのですが、滅多に旅行しない身としては、気が漫ろになってきました。
ただの観光ならば黙って行けばいいんですが、目的があります。札幌交響楽団の定期演奏会を聴クッッッ!

何故か。プログラムがいい。東京じゃ聴けない、こういうものを逃してしまうと一生悔やむぞ、という思いが募ったからですね。
ニールセンの「アラジン」組曲、グリーグのピアノ協奏曲、トゥービンの第4交響曲。
小川典子さんのグリーグも楽しみだけれど、今回ばかりはオーケストラ作品が目的です。その上で小川/グリーグとくれば仕事など放り出してでも行くしかないでしょ。

アラジンとトゥービン? アホか、と思われるかもしれませんね。そう、アホなのです。何と言われようと、これからトゥービン・モードに切り替えていかなければなりません。お、金曜日だぞ、もう時間がない。ということでこれから予習に入ります。

そうそう、以前の投稿がありましたよ。捜して貼り付けておこうっと。

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トゥービンの第4交響曲が演奏される由、驚いております。トゥービンの交響曲については、数年前に広島交響楽団が秋山和慶氏の指揮で第3交響曲を演奏したことがありますし、第4も御大ネーメ・ヤルヴィ氏が10年ほど前に大フィルで演奏したことがあるのです。今回は多分それ以来のことですが、いずれも関西方面というのが不思議です。トゥービンの誕生日は6月18日ですから、時期としてもアニヴァーサリーに相応しいですね。私も遠征したいのですが、日程的に難しそう。万難を排することが出来ればスコアを握りしめて新幹線に飛び乗りたい気持ちであります。

トゥービンの楽譜については、アカデミア・ミュージックを通して八方手を尽くして貰ったのですが、大半は絶版・品切れという返事しか返ってきません。それでも第3・第4・第7の三曲が手に入りました。今年は生誕100年でもあり、記念出版を望みたいところで、今後もこまめに海外の出版情報をチェックする積りです。
アカデミアでも最近トゥービンを「常時在庫作曲家」に格上げしたそうですが、私がトゥービン、トゥービンと騒いだ所為ではなく、各所からの問い合わせが多いのでしょう。それだけの価値ある作曲家です。

今回演奏される第4交響曲は数奇な運命を辿った作品で、解説がてらに紹介しておきます。
作曲は1943年(38歳)、まだトゥービンがエストニアで指揮者として活躍していた時期の作品です。

エストニアの歴史は、周囲の大国の脅威に蹂躙された小国の悲哀の歴史でもありました。1940年、ソ連軍がエストニアに侵攻したのも束の間、ナチス・ドイツがこの国を占領下に置きます。
完成した第4交響曲のスコアは、パート譜を作成するため首都タリンのエストニア劇場四階にあったエストニア放送協会の金庫に保管されていました。ところが1944年3月9日、ソヴィエト空軍による空爆が劇場を直撃、一冊しかないスコアが保管されていた金庫は四階から地下室までまっ逆さまに・・・。
翌朝まだ熱い金庫を開けると、スコアは周りこそ焦げていたものの無事で、トゥービンは震える手でそれを取り出したのだそうです。
しかし時と共に傷みが激しくなり、1978年(73歳)再版を創る際に改訂も施しました。1979年、当時まだエストニアに住んでいたネーメ・ヤルヴィがストックホルムに客演、出来たばかりの新版と空爆に遭った旧版とを持ち帰った、ということがヤルヴィ盤のライナーノーツに紹介されております。
私の手元にあるのはこの改訂版ですし、今回の演奏もこれによって行われるのだと思います。

第4交響曲はスコアに Sinfonia Lirico(No.4) と書かれている通り、抒情的で、エストニアの自然の美しさを連想させるような音楽です。トゥービンの「田園交響曲」と言えるかも知れません。これに先立つ第3交響曲が激しさと悲劇性を帯びた英雄的作品でしたから、抒情交響曲によってバランスを取ったのでしょう。
全体は4楽章、第2楽章はスケルツォですが、激しさよりも軽やかさが魅力。緩徐部分である第3楽章には、同時に作曲していた歌曲からの引用もあるようで、ハープに伴奏されたフルート・ソロやヴァイオリン・ソロの美しい楽章です。
第3楽章冒頭のチェロとコントラバスで奏される主題は、 第1楽章冒頭のヴァイオリンとヴィオラに出る主題から派生したもので、曲全体の統一にも細かな配慮がなされています。
終楽章最後の清冽な弦合奏、全体を締めくくるホルンからトランペットに橋渡しされる輝かしいテーマは、あたかも交響曲全体に虹が架かるが如く感動的です。
この演奏会に行かれる方は、素直にその美しさに浸れると思います。

トゥービンの代表作は第5交響曲ですが(ネーメの息子パーヴォ・ヤルヴィも最近レコーディングしましたね)、名指揮者ハンス・シュミット=イッセルシュテットによって紹介された第6交響曲もジャズを取り入れたリズミックな大作です。この曲の圧倒的なオーケストラ・パワーは、ナマで聴かなければ到底その真価が伝わらないでしょう。
“Northern Light”(オーロラのこと)というタイトルの付いたピアノ・ソナタ第2番は現代ピアノ作品の大傑作と評されていますが、まだ聴く機会がありません。これなどスウェーデンのレコード会社と繋がりが深い小川典子がレパートリーに加えてくれることを密かに期待しているのですが・・・。

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