第3回アンサンブルシリーズ

ミューザ恒例、アンサンブルシリーズを聴いてきました。
今回はピアノ・デュオ、小川典子さんと田部京子さん、二人の人気ピアニストのデュオです。ファンの多い二人、特に男性には圧倒的な人気ですから、会場は男性客ばっかり、という声も聞こえてきます。そうかなぁ。

コンサートは二部構成。前半はピアノが1台置かれていて、小川・田部の二人が夫々ソロで登場、最後に二人の連弾で締めます。後半は文字通り2台ピアノによる、ピアノ・デュオ作品が並びました。
オープニングは小川典子さんで、グリーグの抒情小曲集から小人の行進、夜想曲、トロルドハウゲンの結婚の日。

続いて小川さんから紹介があり、田部京子さん登場。こちらは吉松隆のプレイアデス舞曲集から小さな春への前奏曲、線形のロマンス、鳥のいる間奏曲、真夜中のノエル。
引き続き田部さんで、リストのリゴレットパラフレーズが演奏されます。
夫々が得意にしている作品ですが、この日は腕試しという雰囲気、メインディッシュはあくまでもデュオにあります。

前半最後の連弾は、シューベルトの大傑作、幻想曲へ短調D940。連弾曲故にあまりナマで聴く機会には恵まれませんが、シューベルトの天才が随所に溢れ出すような素晴らしい作品です。
一緒に行った家内も、“エッ、こんないい曲があったの”とビックリしていましたね。演奏も作品の瑞々しさをどこまでも美しく描いて素敵でした。美しいけれども芯のシッカリした演奏。ありそうで中々味わえない、至福の時間を満喫できました。

後半は、管弦楽の名作をピアノ2台にアレンジした作品が3曲選ばれました。
ホルストの組曲「惑星」から火星、金星、木星、続いてサン=サーンスの「動物の謝肉祭」から水族館、白鳥、終曲、最後はラヴェルの「ラ・ヴァルス」です。
ピアノの分担は、前半の連弾共々第1ピアノを田部さん、第2ピアノを小川さんが受け持ちます。

2台ピアノは一言で言えば、圧巻でした。特にフランスの2作品は、二人の息が見事に合致し、二人のピアニズムの微妙なギャップをも味方に付け、2台ピアノの素晴らしさを聴衆に深く印象付けたのです。
特にラ・ヴァルスのテンポ・ルバートの見事さには舌を巻きましたね。
実は、小川さんはキャサリン・ストットさんとも組んでデュオを演奏してきましたし、私も浜離宮で聴いております。

しかしこの日は、それを遥かに上回って強烈な印象を残してくれました。
それには演奏の素晴らしさの他に、ホールの良さが大きく起因していると思われます。
先日も小川・田部デュオをサントリーホールで聴きましたが、ここまでピアノの微妙な音色や迫力は伝わってきませんでした。曲が違うと言えばそれまでですが、ホールの違いこそが最大の原因ではないでしょうか。
ラ・ヴァルスは管弦楽も顔負け、あるはずのないシンバルや大太鼓が聴こえてくるような多彩なピアノには、ただただ呆気に取られるばかりです。

アンコールが二つありました。第1・第2ピアノを入れ替えて演奏しましたが、最初の曲は知りません。アンコール掲示板を見てくるのを忘れました。
最後は動物の謝肉祭から騾馬。二人の曲芸的アクロバットをバッチリ決めて、大喝采が爆発。
会場を出ると雨がパラついていましたが、雪になるような寒さはどこにもなく、それこそ“春雨じゃ、濡れて行こう”という趣でしたね。暖かさだけでなく、今聴いたばかりのピアノ・デュオの心地良い余韻の所為でもありましょう。

 

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