マルッキの真骨頂
今年のプロムスの柱でもあるピアノ協奏曲名曲選、ベートーヴェンのピアノ協奏曲全曲シリーズが終了し、次はプロコフィエフの全曲演奏会に続きますが、その間に挟まれていたのが27日のコンサート。
BBC交響楽団を女流の異彩指揮者マルッキが振る現代モノを据えた以下のプログラムです。
7月27日 ≪Prom 13≫
ブーレーズ/ノタシオン第1~4、7番
ルカ・フランチェスコーニ Luca Francesconi/Duende―The Dark Notes (BBC委嘱、英国初演)
~休憩~
ホルスト/組曲「惑星」
BBC交響楽団
指揮/スザンナ・マルッキ Susanna Malkki
ヴァイオリン/リーラ・ジョセフォヴィッツ Leila Josefowicz
女声合唱/エリジアン・シンガーズ Elysian Singers
今年のアニヴァーサリー作曲家としてはシベリウスとニールセンにスポットライトを当てているプロムスですが、ピエール・ブーレーズも今年90歳を迎えるという意味ではアニヴァーサリー作曲家の一人。1970年代にはBBC響の首席指揮者を務めていたこともあり、私もサントリーホール(?)で火の鳥などを聴いた記憶があります。
当夜のオケとも密接な関係にあるブーレーズですが、彼はフランスでアンサンブル・アンテルコンタンポランを設立した指揮者でもあります。もちろんブーレーズが初代音楽監督でしたが、現在のシェフがこの日の指揮者スザンナ・マルッキ。
マルッキは確か3年ほど前にもプロムスに登場しましたが、その時は現代モノと言っても現代の古典に入る作品が中心でしたから、今年の演奏会こそマルッキの真骨頂と言えるでしょう。冒頭にブーレーズを取り上げたのも大先輩へのオマージュで、それはオケにとっても同じです。
ところでノタシオン、原作は若い頃のピアノ曲ですが、後に一部をオーケストレーションしたのがこれ。原曲は12曲から成りますが、最初に纏めたのが1番から4番で、バレンボイム/パリ管が1980年にパリで初演しました。その後7番が管弦楽化され、続編も予定とのことでしたが、今のところ完成したという話は聞いていません。どうなっているのかしら?
「1-4」の合本が大型スコアで販売されていますが、何分にも92.95ユーロと高価。たかだか15分ほどの作品にしては値段が張り過ぎます。7のスコアは出版されていないようで、未だ貸譜でしょう。続編があるとすれば纏められる可能性もあるので、単なる愛好家としてはスコアを求める気にはなりませんね。
ユニヴァーサルのサイトによると、現在進行形のノタシオンは、1・7・4・3・2の順に、または1・3・4・7・2と並べて演奏することを推奨してます。先ごろ演奏したロト/読響は前者だった由。しかしCDは区々で、例えばギーレン盤は1番から7番までを数字の順番通りに録音していました。ブーレーズ自身(エラート盤)は未だ7番の無い時代で、1・4・3・2の順で入っています。
今回の演奏は、私が解説の英語を何とか聴き取った感じでは後者(1・3・4・7・2)で演奏したようですが、手元にスコアが無いので確信はありません。NMLでも何種類かの演奏が聴けますから、好きな方はチェックしてください。ということでブーレーズはお終い。
続いてはイタリアの若手作曲家、ルカ・フランチェスコーニの新作となるヴァイオリン協奏曲。実は去年のプロムスで初演される筈でしたが、何らかの理由で1年先延ばしされたもの。既にミラノで、今回のソリストと指揮者によって世界初演されています。作品もジョセフォヴィッツに捧げられました。
ドゥエンデ duende にはスペイン語で「歌や踊りの魔力」という意味があるそうで、もしかするとガルシア・ロルカと関係あるのかも。フランチェスコーニについてはウィキペディアのイタリア語版が最も充実しているようです。このサイトからリコルディの楽譜サイトにも飛べますし、作品についても概略が掴めます。
https://it.wikipedia.org/wiki/Luca_Francesconi_(compositore)
リコルディのサイトには26分とありましたが、実際には30分近く掛かる大作。後半は動きを伴うスペイン風の雰囲気で、アコーディオンが合いの手を入れます。その後暗い音で葬送風な音楽に変り、カデンツァに突入。
なお、マルッキはフランチェスコーニの作品を集めたCD録音があり、それもNMLで全曲試聴可能。探せば多くの情報源があるものです。
最後はプロムス定番の惑星。冥王星探索が話題になっているので絶好のタイミングですが、残念ながら後にマシューズが付け加えた「プルート」は演奏されません。
これほど大きな編成になるとネット中継はやや厳しいものがありますが、最後の海王星の女声コーラスは13回?まで聴き取れましたが、皆さんは如何。おまけに子供の泣き声も5回?ほど聴こえましたね。これはライヴならではのご愛嬌で、固いことを言うのは止めましょう。
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