英語の語りによるエディプス王

今年のプロムスではサカリ・オラモの活躍が目立ちます。初めてラスト・ナイトを振る他にも4つの公演に登場。ヴァイオリンも巧みな指揮者で、カドガン・ホールで行われる室内楽プロムス4ではジャニーヌ・ヤンセンのリサイタルにもゲスト出演し、プロコフィエフの二つのヴァイオリンのためのソナタを演奏することになっています。
そのオラモの第一弾が7日のプロムス、BBC響との演奏会でした。

8月7日 ≪Prom 28≫
ベートーヴェン/「エグモント」序曲
ブレット・ディーン Brett Dean/Electric Preludes (英国初演)
     ~休憩~
ストラヴィンスキー/エディプス王
 BBC交響楽団
 指揮/サカリ・オラモ Sakari Oramo
 電子ヴァイオリン/フランチェスコ・ドラツィオ Francesco d’Orazio
 エディプス王/アラン・クレイトン Allan Clayton
 ヨカスタ/ヒラリー・サマーズ Hilary Summers
 クレオン/ユーハ・ウーシタロ Juha Uusitalo
 ティレシアス/ブリンドリー・シェラット Brindley Sherrat
 使者/ダンカン・ロック Duncan Rock
 羊飼い/サミュエル・ボーデン Samuel Boden
 弁者/ロリー・キネアー Rory Kinnear
 男声/BBCシンガーズ、BBCシンフォニー・コーラス

最初のベートーヴェンについては特に書くこともありません。

2曲目は、当初発表ではルカ・フランチェスコーニの Duende-The Dark Notes という作品がイギリス初演されることになっていました。これもヴァイオリン協奏曲の秘曲を紹介するシリーズの一つで、ソリストはレイラ・ジョセフォヴィッツの名前がクレジットされていたものです。
しかし何故か上記の作品に変更され、これに伴ってソリストも替りました。(楽器が違いますから当然でしょうが)

替って取り上げられたブレット・ディーン(1961-)は、オーストラリア生まれのの作曲家、ヴィオリスト、指揮者。ベルリン・フィルでヴィオラ(1985-1999)を弾いていたほどの名手ですが、現在は指揮と作曲に専念しているようです。

http://www.boosey.com/composer/Brett+Dean

ヴィオラの演奏家が指揮者や作曲家に転身(進化?)する例は古今東西枚挙に暇がありませんが、ディーンもその一人に数えられるでしょう。今回演奏されたのは電子ヴァイオリンと弦楽合奏のための作品で、6楽章から成ります。出版はブージー・アンド・ホークスで、25分ほどの作品。ヴァイオリン協奏曲には違いなく、秘曲中の秘曲か。作品の概要はこちらから

http://www.boosey.com/cr/music/Brett-Dean-Electric-Preludes/57840

後半はストラヴィンスキーのオペラ・オラトリオという珍しいジャンル。演技を伴って舞台上演されるケースもありますが、今回は演奏会形式でしょう。スコアを見ながら聴いたのは確か松本のサイトウキネン・フェスティヴァル以来ですから、懐かしく楽しみました。
歌唱はオリジナル通りにラテン語ですが、今回の語りはE・E・カミングス訳の英語でした。ティレシアスを歌ったブリンドリー・シェラットは、先にシュトラウスのドイツ・モテットでも歌っていたバスです。

なお第2幕は、スコアでは冒頭に前幕の終曲である「グローリア」を繰り返してから語りが入るよう指摘がありますし、普通はそのように演奏されますが、今回はグローリアの復唱は無く、いきなり語りから始まるように変更されていました。もちろんオラモの意図だと思われます。

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