シュトゥットガルト放送交響楽団、最後の演奏会

いつものようにパソコンをBBC3に繋げ、7月28日の夜7時からのプロムス中継を聴き出してビックリしてしまったのですが・・・。
海外音楽事情に疎いので先刻まで知らなかったこと。私も来日公演を聴いたことがあるシュトゥットガルト放送交響楽団が、英都ロンドンで最後の演奏会を行いました。その記録です。

7月28日 ≪Prom 17≫
ベルリオーズ/歌劇「ベアトリスとベネディクト」序曲
ベートーヴェン/ピアノ協奏曲第4番
     ~休憩~
ブラームス/交響曲第1番
 シュトゥットガルト放送交響楽団 Stuttgart Radio Symphony Orchestra (SWR)
 指揮/サー・ロジャー・ノリントン Sir Roger Norrington
 ピアノ/ロバート・レヴィン Robert Levin

ノリントンとシュトゥットガルト放響は確か2年前のプロムスに登場し、英国のファンから大歓迎されていましたっけ。私はノリントン卿の音楽には馴染めない立場なのでただ感心するばかりでしたが、その感想は残念ながら今回聴いても変わりません。
ベートーヴェンの第4協奏曲とブラームスの第1という組み合わせは、私が以前にサントリーホールでナマ体験したのと全く同じ選曲。あの時はサリヴァンの恐ろしくつまらない序曲が冒頭に演奏されましたが、今回はそれがベルリオーズに替っただけ。

そのベルリオーズ、オペラの題材はシェークスピアの「空騒ぎ」によったものですから、もちろん紗翁没後400年記念の一環です。最初からロイヤル・アルバートホールは大歓声に包まれました。

続いてのベートーヴェン、8年前?の日本公演は小菅優がソリストでしたが、今回はレヴィン。映像が無いのでハッキリしませんが、多分ピアニストは正面の客席には背を向け、ノリントンはオケの中に入って指揮(あれで指揮と言えるのでしょうか?)していると思われます。
冒頭の和音からしてアルペジオで開始したレヴィン、カデンツァも第1楽章、第3楽章共ベートーヴェン自身のものではなく、ノリントン好みの一品を弾いていました。レヴィンのアンコールはシューマンの「ウィーンの謝肉祭の道化芝居」から間奏曲。

木管は全て倍管で演奏されるブラームスもノリントン独特の解釈で、ノンヴィブラート主義。序奏部から譜面には無いクレッシェンドとディミニュエンドを頻繁に繰り返し、矢鱈に速いテンポで突き進みます。私には納得できないスタイル。
勢い余ったか、第1楽章のコーダではアンサンブルが怪しくなる個所も。

無事に全曲を終え、アンコールに移ります。先ずは同じブラームスからハンガリー舞曲第5番。ここで客席は絶叫と狂乱状態。“そんなに凄いのかぁ~”
これに続いて、コンサートマスター(女性)を務めるナタリー・チー Natalie Chee のスピーチがありました。彼女は今回が同オケにとって6回目のプロムス公演であることを告げ、続いてこのオーケストラとしては最後のコンサートである、とも。ここで客席から失望の溜息。

彼女の話によると、同オケが所属する南西ドイツ放送は管轄する二つのオケ、即ちシュトゥットガルト放送交響楽団とフライブルク交響楽団(南西ドイツ放送交響楽団のこと)の合併を決定したため、今回のプロムスがシュトゥットガルト放送交響楽団としての最後のコンサートになるとのこと。
1945年に設立された同オケは71年の歴史を閉じ、18年間に亘って指導してきたサー・ロジャーに最大の感謝を捧げると挨拶。最後の最後に、アンコールとしてエルガーのエニグマからニムロッドが演奏されました。

流石にこのスピーチは感動的でした。ノリントン嫌いの私でさえウルッと来てしまいましたから、彼のファンにとっては聴き逃せないコンサートだったでしょう。今日から1か月弱はネットで試聴できますから、日本のオーケストラ・ファンにも是非最後の雄姿を聴いて貰いたいと思います。
思えばシュトゥットガルト放送交響楽団はチェリビダッケ、マリナー、ジェルメッティ、プレートル、そしてノリントンと日本にも馴染深いマエストロたちが首席を務めてきましたし、方や南西ドイツ放送交響楽団も創立指揮者ロスバウトから始まり、ブール、ギーレン、そしてカンブルランと現代音楽に強いマエストロたちに率いられてきました。

早速シュトゥットガルト響のホームページを検索してみましたが、既に削除されて「このページは見付かりません」という告知も。ドイツはユーロ圏の優等生とされていましたが、やはり財政的には極めて逼迫していることを改めて思い知らされました。数年前にも度々来日していたザールブリュッケン放送交響楽団が合併により別の名前になっていますね。
もちろん政治的な介入もあるのでしょうが、没落する西洋文明の一端を見た思いがします。

 

 

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