秋の東工大

今年の4月に東工大のコンサートを紹介しましたが、11月14日の月曜日、今年第2回目として秋のコンサートが開催されました。記録も兼ねて、簡単に触れておきましょう。大隈良典栄誉教授のノーベル賞受賞に沸く東工大、生憎の雨でスーパームーンこそ拝めませんでしたが、キャンパスも何処となく華やか気。

2015年にスタートしたシリーズ、今回が通算では3回目。大学のキャンパスで無料のコンサートを開き、学生に良質な音楽を体験してもらおうという企画は、本学のK先生が“ウィーン大学ではウィーン・フィルのメンバーが、パリ大学ではパリ管のプレイヤーがコンサートを行っている”と呟いたことから始まったそうな。
“東工大なら日本フィルでしょ”ということで毎回同フィルの楽員が出演し、今回も演奏したトロンボーンの藤原功次郎君が活躍しているワケ。前回、杉原由希子のオーボエ・リサイタルで藤原氏と思しき人物が裏方で働いているのを見て訝しく思いましたが、これで腑に落ちました。

今回のプレイヤーは4人。「Fleur de Paris」と題し、パリへのオマージュという多彩な内容で7曲を楽しんできました。必然的に司会進行は藤原君ということで・・・。
今回も曰く付きのベヒシュタインが鎮座し、ピアノはザルツブルグ・モーツァルテウム音楽大学を最優秀で卒業した吉兼加奈子さん。最初は藤原君とのデュオでシャンソの名曲「枯葉」。プレヴェールとコスマの共作を藤原が編曲したもの。

続いては芸大在学中ながら日本フィル団員でもあるクラリネットの照沼夢輝(てるぬま・ゆめき)が登場し、プーランクの「エディット・ピアフを讃えて」。
えっ、そんな曲あったっけ、と思いますが、実はピアノ・ソロ曲の即興曲ハ短調を照沼君がクラリネットとピアノ用にアレンジしたもの。元々ピアフ追悼のために書かれた一品で、テーマの出だしが「枯葉」ソックリということで繋がっているのでした。

シャンソン繋がりで、3曲目も藤原/吉兼デュオによるピアフの絶唱歌「愛の讃歌」。シャンソンをトロンボーンで聴いたのは初めてで、藤原の朗々たる絶奏に大喝采。
引き続き藤原トロンボーンで、ビゼーのカルメン・セレクション。もちろん藤原自身のアレンジで、これが世界初演と書かれていました。要は、ハパネラと闘牛士の歌を続けたもので、トロンボーンの超絶技巧も登場するアレンジ。藤原も大汗をかいての大熱演。

前半の最後はプーランクのクラリネット・ソナタ。ここまではシャンソンや名曲のアレンジと軽い作品が続きましたが、前半は純然たるクラシックで締め。プーランクのソナタは実に素晴らしい作品で、何といっても第2楽章のロマンスが聴き所でしょう。

15分ぐらい、の休憩をはさんで、後半は小林美樹をゲストに迎えてベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタ第5番「春」。小林と日フィルの繋がりは、同オケ来年2月の九州ツアーのソリストということですが、藤原君がナンパして見事成功、という裏話のようです。彼女のソロを無料で聴けるという贅沢。
パリへのオマージュなのに何でベートーヴェン、とも思いますが、パリはベートーヴェンを熱狂的に迎えた都市で、死の翌年には交響曲全曲演奏会が開かれた街だから。季節は秋から冬を過ぎ、やがて新しい春が来るという意味もありそう。

今回はベヒシュタインとの合奏ということで、何とも格調高い演奏を満喫。アンコールはモンティのチャルダッシュで、会場となった構内のディジタル多目的ホールも沸きに沸いていました。

この流れで行くと、来年の春はプーランクのフルート・ソナタ、かな?

 

 

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