2012年チェンバー・ミュージック・ガーデン千穐楽
6月2日に開幕したサントリーホール・ブルーローズのチェンバー・ミュージック・ガーデン、早いものであっという間にフィナーレを迎えました。父の日の日曜日、6月17日。
チケットが一般発売された日には早や完売間近と知人から脅かされてゲットした席は、右ブロックの後方、舞台は余り良く見えません。なるほど完売だったようで、ほぼ満席に近い入り。室内楽ではあまり見かけない評論家率の高い客席で、チョッと不思議な気分になりました。
千穐楽は所謂ガラ・コンサートの趣。室内楽アカデミーの講師を務める諸先生方を中心にした演奏者による室内楽聴き所特集でした。尤もこの企画全体が室内楽ガラの様相を呈していて、コアなファンはもう少し凝ったプログラムを期待するのではないでしょうか。(私はコアなファンには分類されませんよ。念のため)
通常のコンサートよりはやや長め、盛り沢山なプログラムです。
ベートーヴェン/ヴァイオリン・ソナタ第5番「春」
デュオ・ノリス
モーツァルト/ピアノ協奏曲第14番変ホ長調K449
若林顕(ピアノと指揮)、CMGアンサンブル
~休憩~
ブラームス/弦楽六重奏曲第1番
ヘンシェル・クァルテット+吉田有紀子(第1ヴィオラ)、堤剛(第1チェロ)
メンデルスゾーン/弦楽八重奏曲
ヘンシェル・クァルテット+クァルテット・エクセルシオ
冒頭のデュオ・ノリス、ヴァイオリンが小林朋子、ピアノは今井彩子という二重奏で、サントリーホール室内楽アカデミーの選抜アンサンブルに所属する若手。
有名なソナタを新鮮、かつ基本に忠実に再現しました。この二人で活動を続けることになるのかは未知。
続いては若林先生を中心にするアカデミーの選抜メンバーによるモーツァルトの協奏曲。氏の弾き振りに、チェロ以外は起立しての演奏です。メンバーは第1・2ヴァイオリンが4人づつ、ヴィオラとチェロは各5名で、コントラバスは入りません。クァルテット・エクセルシオの4人もアンサンブルに加わり、ややバス・へヴィーな合奏。
スコアにあるオーボエとホルンは省略された版による演奏ですが、元々管楽器パートが単独で動く部分は無く、モーツァルト自身が弦楽のみの伴奏で演奏可とした作品です。
余り演奏機会には恵まれませんが、第1楽章にはフィガロの結婚に良く似たフレーズがあったりして、モーツァルトらしいブリオに満ちた音楽。第1楽章のカデンツァはモーツァルト自身が書いたものが弾かれました。
休憩を挟んでブラームス。ヘンシェルQの4人にエクの吉田、館長堤御大が加わる6重奏。ヴィオラとチェロの1番は吉田・堤が担当します。第2楽章の美味しいヴィオラ・ソロを弾く吉田氏の得意満面が印象的でした。リラ~~、リラリィ~~~。いいなぁ、ブラームス。
ヘンシェルのヴァイオリンは、ベートーヴェン全曲(私が聴いたのは1回だけでしたが)とはパートを交替し、ダニエルがファーストを弾いていました。メンデルスゾーンも同じ。この辺の事情は聞いていません。
最後のメンデルスゾーンの前にサプライズがありました。
拍手に送られて登場したのはチェロの二人だけ。あれ、他の6人はどうしたのかなと思っていると、カルツホイと大友のデュオが楽器を鳴らし始めます。するとこれに共鳴するように、他のパートが夫々組になって客席3方から楽器を構えながらシズシズと行進しての入場。
出だしで直ぐにピンと来ましたね。そう、エクが蓼科で披露したことのあるボッケリーニの「マドリードの帰営ラッパ」の最初のところ。様々なアレンジのある曲で、こうした演出も有りの楽しいサプライズでした。全員が揃ったところで盛大な拍手、いよいよメインのメンデルスゾーンです。
エクはこの曲を他のクァルテットと度々演奏していますが、今回はヘンシェルとの共演。夫々の第1パートをヘンシェル、第2パートがエクという分担でした。
従って第4楽章のフーガは、大友→カルツホイ→吉田→モニカ→山田→クリストフ→西野→ダニエルの順で入ってきます。この曲の最大の見どころと言えるでしょう。
ベートーヴェン全曲の達成感もあってか、各メンバーも真に開放的かつダイナミックなアンサンブル。ブルーローズ一杯に響く弦の響きは、これこそメンデルスゾーンの最高の「交響曲」と納得してしまいました。
この日大ホールは某有名ヴァイオリニストのリサイタルだったようで、偶然終了時間が重なった赤坂のカラヤン広場は人でごった返しています。
地味な室内楽の定期演奏会にも、この位の聴衆が集まると良いのですが、ね。
まとめtyaiました【2012年チェンバー・ミュージック・ガーデン千穐楽】
6月2日に開幕したサントリーホール・ブルーローズのチェンバー・ミュージック・ガーデン、早いものであっという間にフィナーレを迎えました。父の日の日曜日、6月17日。チケッ…