エトヴェシュ、最新作を振る
水曜日のプロムスは、ホスト・オケのBBC交響楽団を今年75歳を迎えたハンガリーの作曲家エトヴェシュが指揮し、最新の自作を振るというプログラム。こんな内容でした。
7月24日 ≪Prom 8≫
ドビュッシー/牧神の午後への前奏曲
エトヴェシュ/アルハンブラ(ヴァイオリン協奏曲)英国初演
~休憩~
バルトーク/舞踏組曲
ストラヴィンスキー/バレエ「火の鳥」組曲(1919年版)
BBC交響楽団
指揮/ペーター・エトヴェシュ Peter Eotvos
ヴァイオリン/イザベル・ファウスト Isabelle Faust
エトヴェシュは1944年の1月2日生まれですから、今年が75歳。いろいろ説明するより自身の公式ホームページを参照してください。
今回取り上げられた「アルハンブラ」という作品はヴァイオリン協奏曲第3番に相当し、つい先日の7月12日にグラナダで初演されたばかり。プロムスでのソリストでもあるイザベル・ファウストと、グラナダで世界初演を指揮したパブロ・ヘラ=カザルス Pablo Heras-Casals に献呈されています。プロムスではエトヴェシュ自らが指揮棒を取りました。
この作品、何と既に出版社であるショット社からペルーサル・スコア(閲覧して詳細を確認できる)の形で公開されており、有難いことにダウンロードして個人的になら楽しめるのですね。そこで私も早速PDFの形でパソコンに表示し、目と耳で新作の英国初演を楽しみました。(このスコアを見たい方はショット社のホームページからアクセスしてください)
スコアの序文にも書かれているように、この曲はタイトルであるアルハンブラ ALHAMBRAが音名として用いられているばかりか、ソリストのイザベル・ファウストと指揮者のパブロ・カザルスも音名化されて密かに忍ばせてあるそうな。BBCの放送でも演奏前のインタヴューで触れていますから、こちらも併せてお聞きください。特にALHAMBRAについては練習記号H、第180小節目と181小節目のヴァイオリン・ソロのパートに明確に表記されていますから皆さんで確認してください。つまりラ・ラ・シ・ラ・ミ・シ・レ・ラという音列になります。
この他に事前のインタヴューでエトヴェシュはソロに準ずる楽器としてマンドリンを解説し、サンチョ・パンザの役割だと紹介していました。これ、意味は分かりますよね。
また冒頭のソロによるパッセージはアルハンブラ宮殿を鑑賞する「プロムナード」動機(展覧会の絵を思い出してください)だとも説明していますし、全曲で3回ほど登場してきます。
ということで聴き始めましたが、途中でスコアとは違う展開になる箇所も。自身は触れていませんでしたが、恐らくペルーサル・スコアがアップされて以降に改訂が施されたものと想像します。
特に明瞭なのは終結部で、スコアではソロがミ・ラ・ファと音程を下がるとハープ・マンドリン・ヴィブラフォンが合いの手を入れて終わることになっていますが、今回の演奏ではソロのみ、それもプロムナード動機が静かに繰り返されて全曲を閉じる形に改変されています。初めて聴く作品ながら、色々な視点で楽しめるヴァイオリン協奏曲でした。
他の3曲は「踊り」という共通点の他に、ヘンリー・ウッドがプロムスでの初演を指揮したということもあるのだそうです。そう言えば火の鳥組曲、この形にアレンジされてから今年で丁度100年の記念にもなるんですね。
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