今日の1枚(233)
私が初めてカラヤンのレコードを買ったのは、いや買って貰ったのは、コロンビアから出ていた「フィルハーモニア・プロムナード・コンサート」というモノラルのLP盤でした。楽しい作品ばかりが収められていた1枚で、正にクラシック入門者にはうってつけ。これを毎日のように、それこそ盤面が擦り切れるまで聴いたものです。
後で知ったことですが、カラヤンはこの名曲アルバムをモノラルとステレオの二度録音しており、前回紹介したムック本に掲載されているジャケットの写真から思い出すに、私が聴きまくっていたのはモノラル盤だったことが判ります。当時はステレオ録音でも装置の普及度に鑑みてモノラルでも出していたことがありましたが、私のは最初のオリジナル・モノでしたね。
ということでカラヤンの2枚目ですが、これは正にその「フィルハーモニア・プロムナード・コンサート」から4曲も取り上げられています。但しステレオ録音の方。従って新鮮さと言うより懐かしさが先に立つ今日の1枚でもあります。
①ワルトトイフェル/ワルツ「スケートをする人々」
②シベリウス/交響曲第4番
③ワーグナー/楽劇「トリスタンとイゾルデ」愛の死
④リスト/ハンガリー狂詩曲第2番
⑤ワインベルガー/歌劇「バグパイプ吹きのシュヴァンダ」~ポルカ
⑥シャブリエ/狂詩曲「スペイン」
⑦シャブリエ/楽しい行進曲
⑧オッフェンバック/歌劇「ホフマン物語」間奏曲
③以外は全てフィルハーモニア管弦楽団との演奏で、唯一ベルリン・フィルとの③も含めて全てがEMI原盤の音源、他社に気兼ねなく選曲したプログラムです。例によってムック本を手かがりにデータを紹介して行くと、
①は「フィルハーモニア・プロムナード・コンサート」に含まれていた音源で、正に最初の1曲として耳に焼き付いている名演奏です。所謂スケータース・ワルツは他の演奏もありますが、私にとってはこのカラヤンこそが決定盤でもあります。
1960年9月21日と23日、ロンドンのキングスウェイ・ホールでの収録で、プロデューサーはウォルター・レッグ、エンジニアがダグラス・ラーター。繰り返しが多数ありますが、カラヤンは是々非々、このコーナーで紹介したことのあるトスカニーニとは微妙に異なっています。煩わしいので一々は取り上げません。
②はモノラル最後期の名録音で、1955年7月5日と6日、やはりキングスウェイ・ホールでの録音。①と同じレッグ/ラーターのコンビです。当時シベリウスはヨーロッパ大陸では全く人気が無く、中では唯一イギリスだけで演奏されていました。従ってカラヤンがフィルハーモニアと「知られざるシベリウス」を演奏したのは理由があるのですが、それにしてもカラヤンとシベリウスの相性はピッタリ。現在聴いても第1級の名演奏で、モノラルながら些かの古さをも感じさせません。音質も当時のオーディオ・ファイル級。
③はベルリン・フィルを指揮した同楽劇の全曲録音から最後のアリアのみ取られたもの。イゾルデはヘルガ・デルネッシュが歌っています。
ステレオ時代、1971年の12月から翌年の1月にかけてダーレムのイエス・キリスト教会での録音。ムックには細かい日付も掲載されていますが、「愛の死」が何時収録されたかは不明です。
カラヤン/ベルリン・フィルはドイツ・グラモフォンへの録音が主体で、特に晩年は同オケの本拠地だったベルリン・フィルハーモニーでの録音が主でした。しかしDGも当初はイエス・キリスト教会を使っており、その意味ではEMIとDGのコンセプトの違いを聴くのも楽しみの一つでしょう。聞いた話ではこの録音場所は次第に外からのノイズが多くなり、現在では録音場所としては適さなくなった由。
④もカラヤンならではの選曲で、疎かにされ勝ちの通俗名曲?を真剣に演奏した見事な一品。カラヤンの面目躍如たるものがあります。演奏・録音とも現在でも立派な現役。この曲にはいくつかのアレンジがありますが、カラヤンが選んだのは最も良く取り上げられるカール・ミューラー=ベルグハウスの編曲によるものです。
1958年1月9日と10日、キングスウェイ・ホール。レッグ/ラーターの名コンビによる録音で、オリジナルのLPはチャイコフスキーの1812年、ベルリオーズのラコッツィ行進曲、シベリウスの悲しきワルツ、ウェーバーの舞踏への勧誘と組み合わせれての発売でした。
⑤⑥⑦の3曲は全て「フィルハーモニア・プロムナード・コンサート」に含まれていたもの。3曲とも私の愛聴ナンバーでした。①と同じレッグ/ラーターによる録音ですが、収録日付はムックによると微妙に異なるようで、3曲とも1960年9月23日ですが、④だけは翌24にも追加収録があったようです。会場は全てキングスウェイ・ホール。
⑤は現在では滅多に演奏されなくなった作品で、手元のブージー版スコアではポルカとフーガが纏めて収録されています。例えばケンぺは2曲を続けて録音していますが、カラヤンの選択はポルカのみ。丁度101小節で書かれており、アンコールには最適のピースだと思うのですが・・・。
④はスコアを買って驚愕した記憶があります。耳で聴いていただけでは2拍子系のように聴こえ、途中から3拍子に変わるので不思議だと思っていましたが、スコアを見て納得。こういう3拍子があるのかぁ~、と感心したことを懐かしく思い出します。スコアを見ながらレコードを聴くようになる切っ掛けになった録音でした。
⑧は意外にもつい最近になってやっとスコアを入手した作品です。これもカラヤン/フィルハーモニアはモノラルとステレオで二度録音しており、ここで配信されているのは1959年1月5日にロンドンのキングスウェイ・ホールで収録された方。プロデューサーはウォルター・レッグですが、エンジニアはハロルド・ダヴィッドソンに替っています。
EMIが制作したCDでは第2幕の舟歌の管弦楽編とあり、編曲者不詳とも表記されていますが、実際は歌劇の所謂「シューダンス版」Chodens Edition の第24番として収められている「間奏曲」 Intermede そのもの。第2幕には確かに声楽を伴う舟歌がありますが、カラヤンが演奏しているのはこの間奏曲で、誰かが舟歌を管弦楽用にアレンジしたものではありません。
実はこのシューダンス版は極めて高価なものでしたが、去年の年末に廉価版で有名なドーヴァー社が大型スコアとして再版したばかり。私はアカデミアからの連絡で知り、一も二も無く注文したばかりでした。今回初めてスコアを見ながら聴けたもので、長年誤って記載されてきた編曲版ではないことを知った次第です。
参照楽譜
①カーマス A 2447
②ブライトコプフ Nr.3326
③オイレンブルク No.649
④カーマス
⑤ブージー&ホークス No.681
⑥オイレンブルク No.893
⑦エノック
⑧ドーヴァー(歌劇全曲版)
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