ウィーン国立歌劇場公演「フィガロの結婚」(無観客オンライン)

前回のイドメネオ・レポートで2月1日に無観客上演される筈だった「フィガロの結婚」が延期されたと紹介しましたが、僅か三日後の2月4日、改めて無観客での上演が実現し、その様子が現地時間で2月7日(日)の夜にウィーン国立歌劇場から無料配信されました。日本では8日(月)一杯見ることが出来ます。
今回はライブ配信ではなく、4日の上演を配信用に編集し、休憩なく全曲を通して楽しむことが出来ました。マイヤー監督時代のジャン=ルイ・マルティノティ演出ではなく、オールドファンが泣いて喜ぶポネル演出が復活したのが見所と言えるでしょう。若いファンには初めてという方もおられるでしょうが、実に良く計算された舞台で、今回改めて見直しても些かの古さも感じさせません。もちろんキャストは一新され、以下の面々。

アルマヴィーヴァ伯爵/アンドレ・シューエン Andre Schuen
伯爵夫人/フェデリカ・ロンバルディ Federica Lombardi
スザンナ/ルイーズ・アルダー Louise Alder
フィガロ/フィリップ・スライ Philippe Sly
ケルビーノ/ヴィルジニー・ヴェレス Virginie Verrez
マルチェリーナ/ステファニー・ハウツィール Stephanie Houtzeel
ドン・バジリオ/ジョッシュ・ラヴェル Josh Lovell
ドン・クルツィオ/アンドレア・ジョヴァンニー二 Andrea Giovannini
ドン・バルトロ/エフゲニー・ソロドフニコフ Evgeny Solodovnikiv
アントニオ/マーカス・ペルツ Marcus Pelz
バルバリーナ/ヨハンナ・ウォルロート Johanna Wallroth
指揮/フィリップ・ジョルダン Phlippe Jordan
演出/ジャン=ピエール・ポネル Jean-Pierre Ponnelle
舞台稽古/グリシャ・アサガロフ Grischa Asagaroff

総監督がボグダン・ロシッチに交替し、主役級のキャストは大幅に変わりましたね。今回の顔ぶれも、これまでアーカイブ配信で親しんできた名前は見当たらず、ウィーンでも新鮮なメンバーだろうと思われます。
それでも、いわゆる脇役にはマイヤー時代から継続している歌手も少なからずいて、マルチェリーナのハウツィール、ドン・バジリオのラヴェル、アントニオのペルツなど、しっかりウィーンの伝統が継承されていることも確認できました。

急遽上演が決まったせいでしょうか、今日見ることが出来る配信の字幕はイタリア語、ドイツ語、英語の3か国のみ。フィガロですから敢えて字幕が無くても問題ありませんし、私も字幕はオフにして鑑賞したところです。

主役級の歌手たち、私は初めて聴いた人も多いので簡単に紹介しておきましょう。人名の読み方は独断でカタカナ表記しましたが、あるいは間違っているかもしれないので念のため。
ほとんどを1980年代生まれで揃えたキャストで、全員が若々しいのが特徴。むしろアルマヴィーヴァ伯爵も伯爵夫人も若過ぎる、と感じるのは隠居老人の僻みでしょうか。

アルマヴィーヴァ伯爵のシューエン(シュエンとも)は、イタリアのバリトン。オラトリオ歌手としても活躍しているそうです。
伯爵夫人のロンバルディもイタリア生まれで、同役はベルリン・ドイツ・オペラでも歌っている由。モーツァルトではドンナ・アンナ、ドンナ・エルヴィーラ、フィオルディリージ、エレットラをレパートリーにしているとか。
スザンナのアルダー(オルダーとも)は、グラインドボーンのゾフィー役でブレイクしたソプラノで、イギリス生まれ。2014年からフランクフルト歌劇場のメンバーとなり、ヴィグモアホールのリサイタルでも常連です。個人的にはプロムスでゾフィー、フィデリオのマルツェリーナを聴いたことがあります。
フィガロのスライはカナダ生まれ。モーツァルトではフィガロの他、ドン・ジョヴァンニやグリエルモを得意にしているバリトンです。
ケルビーノを歌うヴェレスはフランス人。メットの研修所を卒業した後、エクス・アン・プロヴァンスやリールで活動をスタートさせ、現在はウィーン国立歌劇場のアンサンブル・メンバーに選ばれているメゾです。

以上、高画質で復活したポネル演出のフィガロをお楽しみください。第3幕でスザンナがこっそり伯爵に手紙を渡す場面、止めてあったピンをバルバリーナに預け、それをうっかり落としてしまう様子などがきっちりカメラに収められています。さすがに丁寧に編集された画面であることにも感心しました。

なお、今週のアーカイブ配信はモーツァルト作品がズラリと並んでいて、日本時間の10日はドン・ジョヴァンニ、11日が皇帝ティートの慈悲、12日には今回のフィガロの再放送、13日に魔笛、14日が後宮からの逃走と続きます。
このうち皇帝ティートの慈悲はアーカイブ初登場と思われますので、当ブログでも紹介したいと思っています。

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