二期会公演「こうもり」
2021年も残り5週間、昨日は日生劇場でヨハン・シュトラウスの喜歌劇「こうもり」をタップリ楽しんできました。笑えること間違いなし、私が見たのは小林啓倫アイゼンシュタイン組の初日、公演全体としては公演2日目の舞台です。キャストは、
ヨハン・シュトラウスⅡ世/「こうもり」
アイゼンシュタイン/小林啓倫
ロザリンデ/木下美穂子
フランク/杉浦隆大
オルロフスキー/成田伊美
アルフレード/金山京介
ファルケ/加耒徹
ブリント/大川信之
アデーレ/雨笠佳奈
イーダ/内山侑紀
フロッシュ/森公美子
合唱/二期会合唱団
管弦楽/東京交響楽団
指揮/川瀬賢太郎
演出/アンドレアス・ホモキ
舞台美術/ヴォルフガング・グスマン
照明/フランク・エヴィン
舞台監督/幸泉浩司、三宅周
ホモキ演出の「こうもり」と言えば、2017年に見たのと同じ舞台。あの時は二期会創立65周年記念公演でしたが、それから4年後の今回は、2022年に創立70周年を迎える二期会の記念公演の一環でもあります。ベルリン・コーミッシェ・オパーとの提携公演で、NISSAY OPERA 2021として上演中です。
未だ2公演残っていますから、ネタバレしないように簡単に触れておきます。とは言っても4年前の舞台について当ブログでも詳しく触れていますから、どうしても知りたい方はそちらをググってくださいな。
通常は3幕仕立てのオペレッタですが、ホモキ演出では2幕版。シャンペンの歌で休憩に入ります。その休憩が終わる直前でオーケストラがハンガリー万歳を演奏するのも前回と同じ。ただし、前回は聴衆が戸惑う程のサプライズでしたが、今回はほぼほぼ聴衆が客席に戻った頃を見計らって指揮者登場の拍手なしに、客席の照明を落とさず演奏したのが相違点でしょうか。4年前に体験していたファンも多かったようで、前回ほどの驚きは無かったように思います。
ドイツ語歌唱、日本語字幕付き。台詞は日本語。二期会だけでも今回が15回目となる、オペレッタの中でも最も親しまれている傑作だけに、態々字幕を見る必要もないほど。日生劇場は「こうもり」には最適のサイズで、響きもややデッドな分、台詞も聴き取り易く、公演を集中して楽しむことが出来ました。
勿論4年前とは変わった部分もあります。パーティーの場面(と言ってもアイゼンシュタイン邸と同じ舞台ですが)の最初の方、オルロフスキーがアイゼンシュタインにウォッカを強要する場面ではロシアン・ルーレット(オルロフスキーがロシア貴族という設定だからという洒落でしょう)が使われていたのは、前回と同じだったでしょうか。そこまでは覚えていません。
この場面、拳銃の発射音が衝撃的でしたね。これでビクッとしなかったひとはほとんどいなかったでしょう。
歌手陣も、一部を除いては大幅に入れ替わりました。ヴェテランから新人までバランス良く組み合わされていて、大いに楽しめます。歌はもちろん芝居がみな達者、若い頃に見た日本のオペレッタを知る者には隔世の感がしました。
オーケストラも前回の東フィルから、今回は東響へ。指揮者も阪哲朗から川瀬賢太郎にバトンタッチされ、更に新鮮味が増したように思います。
2017年のフロッシュはイッセー尾形でしたが、今回の森公美子がケッサク。第2幕後半(通常の第3幕)は彼女の独り舞台で、アドリブを交えた台詞はかなり長くなっています。フロッシュに起こされて杉浦フランクが思わず開口一番 “長いよ~” に客席は爆笑の渦。
おっと、思わずネタバレしそうになりましたが大丈夫、恐らく森フロッシュのアドリブは日替わりで楽しめるのじゃないでしょうか。私が見た26日は、30年前はオペラ歌手だったという森が尊敬していたモンセラート・カバリエの話。カバリエといっても若いファンはピンと来ないかもしれませんが、私共ロートル・ファンは腹を抱えて笑いました。話の内容? とてもSNSで明かすわけにはいきませんよ。実際に日生劇場で体験した人たちだけのヒ・ミ・ツ。
このフロッシュに触発されたこともあるでしょう、誰かのチョットした言い間違いを、直ぐアドリブで洒落に転用する歌手たち。二期会のオペラ水準が着実に向上していることを実感できる舞台でもありました。
それこそフロッシュが言う、昔は声さえよければ舞台に立てましたが、今はそれだけじゃねェ~。
今回、ホモキはリモートでリハーサルに参加したそうですが、演出家本人も大満足だった由。森がフロッシュ役に起用されたこともあってか、演出の娯楽性、エンターテインメントとしての性格がより強くなったように感じます。もちろん良い意味で、ですよ。
その分ホモキが本来伝えたかったであろうメッセージは薄まった印象で、前回はホモキ自身のこうもり感が掲載されていたプログラムも、今回はより普遍的な内容に変わっていたのが何よりの証でしょうか。
この日は、平日にも拘わらず午後2時開演。少し早めに家を出て日比谷公園で晩秋を楽しみました。公園ではご当地鍋フェスティバルが開催中、イチョウの紅葉が見事で、松本楼にも長い列ができていました。雲形池ではカワセミがエサを取っていて、ここにも撮影隊の長い列。
3日目と4日目が開催されるこの土日、秋晴れが期待されており、日比谷・銀座界隈の人出は更に多くなること間違い無し。どうか皆様、感染にだけは注意してホモキ「こうもり」をお楽しみください。
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