ツタバウンラン

世の中に雑草はありません、と看破されたのは昭和天皇でしたが、正にその通り、全ての植物には名前があります。「名もなき花」などというのは真っ赤な嘘で、口走った人の無知を暴露しているだけ。
すっかり習慣になっている散歩で気が付くのは、自分の無知。路傍で見かける小さな花々の名前が判りません。ソメイヨシノなら誰でも知っているけれど、“あ、ツタバウンランが咲き出した” という人はあまり多くはないでしょう。
気になっている名前の知れない花。今日は一部を採集し、本気で検索してみました。現在では入手困難かも知れませんが、保育社から出版された長田武正著・長田喜美子写真「野草図鑑」。野草の様々な特徴から同定出来る優れもの図鑑です。
で、判明したのが「ツタバウンラン」。
ポイントは ①双子葉であること。つまり「つる植物」ではなく、単子葉(葉が細長く、平行脈)でもないこと、ですな。
②花は左右相称であること。つまり小花が集まって頭花になるタイプではなく、放射状の花でもないこと。
①と②から、件の野草は第5巻「すみれの巻」に収められている、と判断。
次に「すみれの巻」から、①花に距(きょ)があること、②葉は単葉であることから大体の種類を予想します。
距がある、というのは、花を支える花柄が花全体を支えるのではなく、花の後方に「ふくろ」のような突起物があるということ。取ってきた花を見ると、なるほど距がある。
そして写真による同定。一発で判明しましたね。ツタバウンラン。
ヨーロッパ原産、本州と北海道で帰化。茎は細くて地を這う。長い柄は暗い場所に向かって伸びる性質があり、地中に潜って結実。石垣や城壁の隙間に生える。花は6~8月。
確かに暗い場所、石垣の周りに目立っていました。漠然とカキドオシではないかと思っていましたが、これは間違いであることも確認。
花期が早すぎるようですが、ヨーロッパでの生態や近年の気候変化を考えれば、都内で花が咲くのも早まっているのでしょう。
学名は Cymbalaria muralis 。キンバラリア・ムラリス と読みます。
属名キンバラリアとは、葉の形を楽器のシンバルに見立てたから。なぁるほどねぇ。
種名ムラリスとは、城壁性の、という意味。「城壁に咲くシンバル」。
チョッと近所を散歩してみて下さい。地面を這うように咲いている淡い青色の小さい花。ツタバウンランに出遭えるはずです。

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