今日の1枚(87)
このところ何かと忙しくてCDを聴いている暇がありませんでした。今日から4月、4月は演奏会もほとんどありませんし、雨のスタート。5日振りに音盤を聴いて過ごします。
フルトヴェングラーはまだまだ続きますが、大全集のオペラを手に取ります。「今日の1枚」でオペラを取り上げるのは初めてですが、1日に全曲を3回も4回も繰り返し聴くのは無茶な話ですから、切りの良いところで1幕づつ聴くことにしました。
最初はベートーヴェンの歌劇「フィデリオ」。先ず第1幕です。CDは東芝EMI TOCE-3743/44 で、2つの幕が丁度1枚づつに収められている手頃なもの。
ウィルヘルム・フルトヴェングラー指揮ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団の演奏。1953年10月13日から17日にかけてウィーンのムジークフェラインザールで収録された正規スタジオ録音、もちろんモノラルです。
歌唱はドイツ語ですが、台詞はほとんどカットされています(フィデリオはジングシュピール形式ですから、所謂レシタティーヴォはありません)。 なお、このCDには対訳は付いていません。
第1幕の出演者は順に、
ヤキーノ/ルドルフ・ショック(テノール)
マルツェリーネ/セーナ・ユリナッチ(ソプラノ)
レオノーレ(フィデリオ)/マルタ・メードル(ソプラノ)
ロッコ/ゴットロープ・フリック(バス)
ドン・ピッァロ/オットー・エーデルマン(バリトン)
合唱はウィーン国立歌劇場合唱団、合唱指揮はクレジットされていません。合唱の中で囚人1(テノール)はアルヴィン・ヘンドリックスという人が、囚人2(バス)はフランツ・ピアバッハという人が歌っています。
ショックは1915年4月9日生まれのドイツのテノール。録音の時は38歳。1953年からウィーン国立歌劇場に参加しています(ブックレットでは1951年契約)。後年はオペレッタや映画などでも活躍した人。1986年11月13日死去。
ユリナッチは1921年10月24日生まれのユーゴスラヴィアのソプラノ。録音の時は31歳。ウィーン国立歌劇場には1944年から1983年までの長きに亘って活躍した人。ウィーンには無くてはならない名ソプラノ。特にモーツァルトの諸役では定評がありました。
年齢を加えるごとに声の幅が増し、ここではマルツェリーネを歌っていますが、クレンペラーは1961年にコヴェント・ガーデンの「フィデリオ」でレオノーレ役に抜擢しています。その意味では、ユリナッチのマルツェリーネが聴ける当盤は貴重。
メードルは1912年3月22日生まれのドイツのソプラノ。録音の時は41歳。最初はメゾ・ソプラノからスタートした人で、1950年頃からドラマティック・ソプラノの役も歌ってきました。戦後のウィーン国立歌劇場再開記念の「フィデリオ」でのレオノーレ役。多数の現代オペラで初演を担ってきましたし、ウィーンでは80歳の時に「スペードの女王」の公爵夫人で登場。2001年死去。
フルトヴェングラーは最初フラグスタートを希望したそうですが、様々な経緯の結果メードルに。低音の伸びが抜群の歌唱で、素晴らしいレオノーレが楽しめます。
フリックは1906年7月28日生まれのドイツのバス。私と誕生日が同じで、丁度40年先輩。それもあって大好きなバス歌手です。録音の時は47歳。ウィーン国立歌劇場は1953年から歌っています。
1970年に引退しましたが、1971年には請われてコヴェントガーデンで「パルシファル」のグルネマンツを歌いました。その後も彼方此方でゲスト出演していたようですね。ドイツ独特の“暗いバス”の代表でした。1994年8月18日死去。
エーデルマンは1917年2月5日生まれのオーストリアのバリトン。録音の時は36歳。ロシアで2年間囚人を経験していますから、ある意味でピツァロには適役か。ウィーン国立歌劇場には1947年から参加。ザルツブルク祝祭大劇場の杮落としでカラヤンの「バラの騎士」のオックス男爵として高名。映画でも見ることが出来ます(このときのオクタヴィアンがユリナッチ)。2003年にウィーンで死去。
1953年の録音ですから音質的にも優秀、特にステージ効果のような細工は一切行っていません。
演奏は所謂第3稿、歌劇「フィデリオ」序曲で始まる決定稿によるもの。
第5曲の三重唱、マルツェリーネの最後はハイCまで上げています。
第6曲の行進曲、繰り返しは実行。
第9曲、レオノーレのアリアの最後ではアド・リブのカデンツァをやらずに、ストレートに歌い切ります。
第10曲フィナーレはインデックスで5部に分けています。内訳は ①冒頭 ②第10場の頭(オイレンブルク版スコアの423ページ) ③第11場の頭(444ページ) ④第12場の頭(448ページ) ⑤合唱が登場する Allegretto vivace から(455ページ)。
参照楽譜
オイレンブルク No.914
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