ママ・ラザレフ
昨日は日本フィルのマエストロ・サロンに参加してきました。首席指揮者・ラザレフ登場。
天才的なロシア語通訳は、お馴染の小賀明子さん。
サロンがあるとないとでは、定期演奏会の理解に大きな差が出ます。もちろんマエストロによって程度には違いがありますが、ラザレフの場合は格別でしょう。
特に今回のプロコフィエフ/第3交響曲の聴きどころは、批評家や学者の理解を遥かに超えたもの。
第1楽章。抒情的なテーマの上に、しゃぶしゃぶ、鉄板焼き、すき焼き、お刺身がてんこ盛りになります。これを楽員が完璧に演奏すれば、実に素晴らしい音楽になるのです。
第2楽章。人魚が出てきます。人魚は海で泳ぐ生き物ですが、ここでは木の枝に腰掛けているのです。何とも不思議な世界でしょ。
第3楽章。夥しい数のゴキブリが蠢いています。特に3回目は独特の会話を交わすんですよ。初日のリハーサルでは冬眠から覚めたばかりで動きが悪かったのですが、今日は素晴らしかった。特にサッと去っていく時の色彩感が見事でしたね。最後は上がる音、下がる音が一つの音に集約します。これほど独自性の強いスケルツォは他にないでしょう。
第4楽章。ここでは大地が吠えています。特に最後の音は、それまでの和声の動きや旋律の流れからは予想が出来ない驚き。イタリアで演奏した時、前列で聴いていた女性がミンクのコートを纏っていたのですが、恐怖のあまりコートを被っていました。私はミンクがそこにいると思いましたね。
という具合。マエストロによれば、第3交響曲はプロコフィエフが書いた最初の本格的交響曲の由。必ず聴くべし。
チャイコフスキー。音楽で女性を描くことに関しては、チャイコフスキーに並ぶ作曲家はいないでしょう。ジュリエット然り、テンペストに於けるミランダ然り、リミニのフランチェスカ然り。先日マンフレッド交響曲を演奏しましたが、そこでは恋人アシュタルテの亡霊が出てきます。亡霊なので、弦楽器は弱音器を付けているんですよ。今回のハムレットでもオーボエがオフェーリアの主題を吹きますが、指揮することが出来ないくらい、素晴らしい女性像が描かれるのです。
今回はマエストロのタマーラ夫人も参加されていました。
司会者の“マエストロは毎回単身で来日されますが、奥様はいつも猫の世話があるのでこられないということでした。今回、猫は大丈夫なんでしょうか” という質問には夫人が自ら答えられました。
「家庭」において全体を指揮しているのはタマーラ夫人という回答には、誠に説得力がありましたね。実に可愛く、チャーミングなママ・ラザレフです。
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