強者弱者(46)

六根清浄

 七日 七草の節句。春とは名のみ、野沢の氷昼も解けやらず。毎年此頃より北風吹きすさみて降雪屡至る。各戸皆門松を撤す。屠蘇の酔漸く醒めて人皆新しき活動に入る。宮中御講書始め。
 八日 陸軍始観兵式、夜来の天候険悪なれば臨幸中止となる。毎年此式に列する兵員暁霜に銃身のつめたきを把って凍傷頓に多し。此日、新兵は式に列せず後方にありて拝観す。
 寒に入りて、毎夜『六根清浄』の声、戸外の霜に冴ゆるを聞く。深川、目黒の不動に水垢離をとるものあり。中に妙齢の婦女を見る。雪の夜にうち振る鈴の音、ひとり天地の静謐を破りてあはれ深し。

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特に触れることもありませんが、六根清浄は六根が清らかであることを唱えるものですね。特に寒の修行の時に六根清浄を口々に唱える習わしだそうです。

六根とは眼、耳、鼻、舌、身体、心の六つ。我々俗人にとっては「心」が一番難しい、かな。

「水垢離」(みづごり)は、神仏祈願の際に冷水を浴びること。いわゆる水行ですね。水垢離は「する」のではなく、「掻く」と表現するのだそうです。あるいは「取る」とも。「垢離」(こり)だけで水行の意味がある由。

 

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