強者弱者(140)

カンナの花

 ダリヤに次いでカンナの花咲く。カンナは釈迦のみまかれる霊鷲山に咲くといへり。真紅にして燃ゆらんかなしみを語る。其色彩の極端なる寔に熱帯の情調にふさへり。ダリヤは近年の流行なり。由来欧人は草花に就きて主に色彩と香気とをもとめ、邦人は専ら情調を尚ぶ。秋の七草といひ、春の七草といふ、もと其色彩を愛づるにあらず、香気を歓ぶにあらず、専ら其風情を尚ぶなり。ダリヤの如きは日本固有の趣味と距たること遠し。近年の流行、趣味の向上といはんか、堕落といはんか。

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「霊鷲山」は、「りょうじゅせん」と読むのだそうです。
カンナは江戸初期に日本に渡来した由。当時はこういう言い伝えがあったのでしょうか。

「寔」は「まこと」。「誠」や「実」と同じですが、現在ではほとんど使われないようです。従って読める人も天然記念物的存在。

「尚ぶ」は、言うまでもなく「たっとぶ」。これも「尊ぶ」や「貴ぶ」に同じ。「尚賢」(しょうけん)とは、賢者を尊ぶことですからね。

西洋人と日本人の趣味の違い、正にその通りでしょう。近年は日本人の趣味趣向が西洋化し、園芸でも色彩や香りが重視される傾向にあります。日本人の特色は失われてしまいました。
秀湖はこれを向上か、堕落か、と問うていますが、当然私は堕落と考えたいですね。何もDNAだけの所為ではないと思います。

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