久し振りの競馬ネタ

既に日本でも報道されているように、昨日の午後、香港のシャー・ティン競馬場で4鞍の国際レースが行われました。当競馬日記の守備範囲はヨーロッパですが、シーズンが終わったヨーロッパの馬たちも香港に多数チャレンジします。

大スポンサーであるキャセイ・パシフィックを冠に戴く4レース、最初は香港ヴァーズ(GⅠ、3歳上、2400メートル)。日本からは、ジャパン・カップでも4着したジャガーメイル Jaguar Mail が挑戦していることでも注目されていました。

14頭が出走を予定していましたが、日本でも走ったジョシュア・トゥリー Joshua Tree が前日に跛行、当日になっても回復しないために取り消し、13頭立てで行われました。

11対10の1番人気にはメルボルン・カップを制したアメリケン Americain が推されていましたが、極端なスローペース(地元のマイティー・ハイ Mighty High の逃げ)が合わず3着まで。
優勝は、英国のスロール厩舎がデットーリ騎乗で送り込んだマスタリー Mastery でした。2馬身半差2着に同じく英国のレッドウッド Redwood (バリー・ヒルズ厩舎)が入り、更に半馬身差で本命アメリケンの順。
日本のジャガーメイルも大健闘、更に1馬身4分の1差4着に食い込んでいます。

優勝馬のオッズは19対5の2番人気。

英国馬が香港の国際レースに勝ったのは、2007年のラモンティ Ramopnti (香港カップ)以来のこと。オーナーのゴドルフィンにとっては、これが国籍を問わず今シーズン200勝目という節目なのだそうです。

勝ったマスタリーは去年のセントレジャー馬。次走はドバイのシーマ・クラシックの予定で、早くも来年の香港ヴァーズ連覇を目標とする旨の宣言が出されました。

敗れたアメリケン陣営(デュプレ厩舎、モッセ騎乗)は、ペースが速くなる(はずの)ジャパン・カップの方が良かったかな、とのコメント。来年は矛先を変えてくるかも、ね。

ウィリアムズに乗り替わったジャガーメイルは日本と同じ着順でしたが、勝馬との差は香港の方が2馬身ほど大きい結果。単純な計算で能力を図るのは禁物ですが、全体的なレヴェルを考えれば香港の出走馬の方がレヴェルが高かったと思慮します。

続いては香港スプリント(GⅠ、3歳上、1200メートル)。14頭立ての1番人気(11対5)は、香港のスター的存在のセイクリッド・キングダム Sacred Kingdom 。しかし本命馬はここでも利あらず、3着敗退です。

優勝は南アフリカのジェイ・ジェイ・ザ・ジェット・プレーン J J The Jet Plane 。短頭差2着にはシンガポールのロケット・マン Rocket Man が粘り込み、4分の3馬身差3着がセイクリッド・キングダムでした。
唯1頭英国から挑戦したキングスゲート・ネイティヴ Kingsgate Native (スタウト厩舎、ムーア騎乗)は6着まで。

勝ち馬のオッズは179対10の中穴。勝利調教師は“ラッキー”の異名を取るМ.ホウダラキス師。勝利騎手はピエール・ストライダムのコンビです。
地元勢が圧倒的に強い香港スプリントを外国勢が制したのは、9年間で初めての由。

三つ目の香港マイル(GⅠ、3歳上、1600メートル)は英国ハノン厩舎のパコ・ボーイ Paco Boy が2対1の断然本命に期待されていましたが、意外や13頭立てのシンガリ負け。ヨーロッパ・シーズンを沸かせた名マイラーも、恐らくこれで引退となるでしょう。

当初は15頭が登録を済ませましたが、レース直前の1頭を含めて2頭が取り消して行われました。
日本からはマイルチャンピオンシップで穴を開けたエイシンフォワード A Shin Forward が、追加登録料を支払って挑戦してきました。

結果は91対10の地元馬ビューティー・フラッシュ Beauty Flash の優勝。4分の3馬身差2着にロイヤル・ベンチ Royal Bench が入り、更に半馬身差3着がサブレーザ Sahpresa の順。
4着は2頭の同着で、フランスのラジサマン Rajsaman と日本のエイシンフォワード。オブライエン厩舎のベートーヴェン Beethoven は生彩を欠いてブービー12着惨敗に終わりました。

フランスのトリオが2~4着を占めましたが、勝馬は香港で開業しているトニー・クルーズ師の管理馬で、鞍上も香港をベースとするジェラール・モッセとのコンビです。

最後はインターナショナル・ディのメインでもある香港カップ(GⅠ、3歳上、2000メートル)。世界の強豪が顔を揃えましたが、何故か日本からは参戦がありません。

13頭立ての本命は、6対4の熱い支持を集めたスノー・フェアリー Snow Fairy 。そう、先日エリザベス女王杯で京都のファンの度肝を抜き、日程がきついのを理由にジャパン・カップをスルーして香港に向かった女傑です。
前3レースでは尽く本命馬が討ち死にする嫌な流れがありましたが、スノー・フェアリーには関係なし。見事に香港のファンの度肝をも抜いて見せました。

直線を向いた時には後ろから二つ目。京都と違って外に持ち出したライアン・ムーア、その剛腕に応えて繰り出した鬼脚は、ゴール直前で粘るイリアン Irian を首差交わしての快勝。着差は首でも、その圧倒的なパフォーマンスは京都以上だった、というのが現地記者たちの印象だったようです。

更に1馬身4分の1差3着は地元のパッキング・ウイナー Packing Winner 。以下、前年の覇者でフランスから遠征したヴィジョン・デ・タ Vision D’Eta が4着、騎乗停止中のスミオンに乗り替ってデットーリが手綱を取ったプランテール Planteur 5着の順。
その他主だったところでは、フランスの牝馬スタチェリータ Stacelita は8着。英国の2騎、スライ・プートラ Sri Putra 11着、グラス・ハーモニアム Glass Harmonium 12着という結果でした。

スノー・フェアリーを管理する英国のエド・ダンロップ師にとって、香港は5年前のヴァーズをウイジャ・ボード Ouija Board で制して以来のことになります。

以上、今年の香港は、ヨーロッパ的視点で見れば英国馬の2勝で目出度く幕を閉じました。事前の水曜日に行われたジョッキーズ・チャンピオンシップもライアン・ムーア騎手が2勝して優勝、イギリスにとっては言うことの無い結果になったようです。

逆に日本から見れば、いろいろ考えされられる香港ではありました。

先日行われたジャパン・カップに比べて、遙かにレヴェルの高い馬たちが参戦している。一日に四つのジャンルで国際レースが行われるというプログラムの魅力もあるでしょうが、やはり良い馬を集められるというプロモーションの差があるようにも感じられます。

近年ジャパン・カップにはトップ・クラスの馬が参戦してこないのは何故か。香港の盛況を見るにつけ、日本の権威者たちにはこの問題を真剣に考えるべき時が来ているように思われます。

昨日阪神ジュヴェナイル・フィリーズを制したレーヴディソールには、牝馬クラシックではなく日本ダービーに出走すべきだ言う解説者もありましたが、私に言わせれば、海外のクラシックを目指すべきじゃないでしょうか。

そのことも含めて、日本の競馬システムにはそろそろ変革が必要になっていると思慮します。一言で言えば、危機感の不足。これに尽きると思われるのですが・・・。

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