英国音楽のチャンピオン、尾高忠明

7月最後のプロムスは、31日に行われたオール英国音楽プログラムです。BBCウェールズ管と、その桂冠指揮者・尾高忠明の指揮。
放送の司会者も紹介していたように、我が尾高マエストロは英国音楽のチャンピオン。エルガーだけじゃないのですね。

≪Prom 23≫
ヴォーン=ウィリアムス/トーマス・タリスの主題による幻想曲
アイルランド/These Things Shall Be
     ~休憩~
ディーリアス/楽園への道
ウォルトン/オラトリオ「ペルシャザール王の饗宴」
 管弦楽/BBCウェールズ・ナショナル管弦楽団
 指揮/尾高忠明
 バリトン、バス・バリトン/ジョナサン・ルマールー
 吹奏楽/ロンドン・ブラス
 合唱/BBCシンフォニー・コーラス、BBCウェールズ・ナショナル合唱団

特に今年のプロムスはディーリアスの生誕150年、ジョン・アイルランドの没後50年という記念の意味も籠められていましたし、アイルランドとウォルトン作品はBBCの委嘱によって生まれた作品。ロンドン五輪を彩る音楽の祭典としてのコンサートとして聴くのも一興でした。

冒頭のヴォーン=ウィリアムスは弦合奏による極めて美しい作品。録音では第2オーケストラの音量が小さく、遠くから聴こえてきましたが、レポーターのコメントでは第2オケはアリーナに置かれていたようです。ここは平土間の立見席ですが、どのようにセッティングされていたのか興味深い所。映像もあるそうですが、探し出せていません。

ジョン・アイルランド (1879-1962)は日本ではほとんど知られていませんが、英国の重要な作曲家。今回演奏されたのは、キング・ジョージ5世戴冠記念の演奏会にBBCが委嘱したもの。題名は何と訳すのか判りませんが、ジョン・アディントン・シモンズの詩「展望」から言葉を取り、バリトン・ソロと合唱を伴う管弦楽による20分強の作品です。

3番目のディーリアスは、本来は歌劇「村のロメオとジュリエット」の間奏曲で、サー・トーマス・ビーチャムが演奏会用に編んだ「3つの管弦楽小品」の第1曲として有名。尾高が取り上げたのも、ビーチャム編のオーケストラ版でした。

最後は英国を代表する傑作。イギリス合唱音楽の頂点を成すもので、マエストロは日本フィルの定期でも紹介してくれましたね。2年前の演奏も見事でしたが、今回もプロムスの聴取は大喝采で演奏者たちを讃えていました。

日本人指揮者としてプロムスに最も多く登場しているのは尾高忠明でしょう。BBCウェールズのポストが長かったこともありますし、何より英国の音楽ファンから最も信頼されている指揮者の一人でもあります。今回が何回目の登場かは判りませんが、他に複数回登場しているのは広上淳一くらいのもの。それでも出演回数は尾高がダントツでしょう。
音だけで聴いていても、英国のファンから大きな声援を浴びる尾高氏に誇りを感ずる一夜でした。

Pocket
LINEで送る

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください