今年アニヴァーサリーの3人

8月25日のプロムスはホスト・オケBBC響の受持ち、指揮するナッセンは同オケの Artist-in-Association という肩書を持っているそうです。

≪Prom 56≫
アレクサンダー・ゲール/変容/舞曲
ナッセン/交響曲第3番
     ~休憩~
ヘレン・グライム/夜の歌(BBC委嘱作、世界初演)
ドビュッシー/聖セバスチャンの殉教
 管弦楽/BBC交響楽団
 指揮/オリヴァー・ナッセン
 独唱/クレア・ブース(ソプラノ)、ポリー・メイ(メゾ・ソプラノ)、クレア・マカルディン(メゾ・ソプラノ)
 合唱/ニュー・ロンドン室内合唱団、BBCウェールズ・ナショナル合唱団

このプログラムで手元にスコアがあるのはドビュッシーだけ。何となく聴いた感想に過ぎません。世界初演の委嘱作を除いては、全て2012年に何らかのアニヴァーサリーを迎える作曲家というのがプログラムの共通点。ドビュッシー以外は現存の作曲家、3人とも現場にいるというのも同じ。

最初のゲールは3人の現役の中では最長老で、1932年生まれですから今年80歳。私も良く間違えますが、父親も作曲家でワルター・ゲール。父も息子のアレクサンダーもベルリン生まれですが、レッキとした英国人ですね。
今回演奏されたのは、ホメロスのオディッセイからインスピレーションを受けた作品で、1973年から1974年にかけて作曲されたもの。新ウィーン楽派の影響下、セリ―の手法で書かれた音楽で、現在ではそれほど新しいという印象は受けません。

2曲目はナッセン自身の作品で、彼も若手だと思っているうちに今年60歳、還暦になったんですね。これも1973年に作曲され6年後に改訂されたもので、1979年の改訂版がその年のプロムスで演奏されて以来の登場だそうです。因みに33年前はマイケル・ティルソン・トーマスの指揮。

3番目のヘレン・グライムは1981年生まれと言いますから、未だ30歳になったばかりの女流作曲家です。
委嘱作は5分ほどの短いもので、演奏が終わったらナッセンが“眼鏡を落としたんで良く判らなかったからもう一度やります” と言って即再演。まぁ眼鏡云々は口実でしょうが、再演にこういう手があるのかと笑ってしまいました。再々演が何時になるかは判りませんが…。

最後は生誕150年のドビュッシー。良く取り上げられる交響的断章として知られる組曲ではなく、声楽を伴う全曲演奏です。全曲がプロムスに登場するのは今回が初めて。
交響的断章は何度か登場しているそうですが、最初はエドガー・ヴァレーズ指揮チェコ・フィルだった由。どんな演奏か想像もつきませんが、実に興味ある記録ですね。
今回はアンゲルブレシュトが書いた台詞は省略され、音楽だけに徹していました。ただし第3部の第5曲、練習番号3の第1小節目から第6曲の第3小節に飛び、その間の10小節はカットされていました。ミュンシュによる有名なCDは全体に数か所のカットがありますが、今回カットされたのもミュンシュと同じ処置でした。

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