グローリアス・グッドウッド2012・2日目
グッドウッド2日目、というより開催全体の最注目はこの日のメイン、サセックス・ステークスですが、その前にヴィンテージ・ステークス Vintage S (GⅡ、2歳、7ハロン)から行きましょう。この日の馬場も good 、10頭立て。
ここ10年で1番人気が6勝しているレース、しかもニューマーケットのサパラティヴ・ステークス(GⅡ)が絶好のガイドとなる一戦でもあります。ここ2年連続してこのレースを制しているリチャード・ハノン、リチャード・ヒューズのコンビには3連覇がかかっていました。
そんな中で1番人気(2対1)に推されたのはゴスデン厩舎のグレアー Ghurair 、ニューマーケットで7ハロンの新馬戦を勝ったばかりの馬です。一方サパラティヴに勝ったオリンピック・グローリー Olympic Glory は3連覇がかかるハノン/ヒューズ・チームのエース、GⅡ勝ちのペナルティー3ポンドを背負って11対4の2番人気。1番人気が勝つか、サパラティヴ組が強いか、3連覇は成るか、が見所でしょう。
レースはブービー人気(80対1)のルハイフ Luhaif の逃げ、2頭出しゴドルフィンの一角タヒアー Tha’ir が2番手。本命グレアーは好位、オリンピック・グローリーは7~8番手の後方に待機します。
ルハイフが粘る中、オリンピック・グローリーは直線に向かうコーナーでバランスを崩し外に膨れ、最後方で直線へ。この時点では敗戦確実に見えました。
しかしヒューズ騎手が巧みに馬を立て直し、大外に持ち出すと反応は素晴らしく、大混戦の先頭争いを纏めて半馬身差し切ってしまいました。2着から5着は全て頭差という接戦で、写真判定の結果、アルティジアーノ Artigiano (実況ではアチジアーノと聞こえますが)が2着、逃げたルハイフ3着、タヒアー4着、本命グレアー5着。レース内容から見て3ポンド重いオリンピック・グローリーが抜け、2着から5着の4頭は拮抗した実力という印象でした。
実況アナが“イギリスが初めて金メダルを取った日に相応しく、オリンピック・グローリー優勝!”と叫んでいましたが、調べてみたらこの日、女子のボート競技でイギリス・チームが英国に初の金メダルを齎したのだそうです。
冒頭に紹介したように、リチャード・ハノン調教師、リチャード・ヒューズ騎手にとっては2010年のキング・トーラス King Torus 、2011年のチャンドリー Chandlery に続くハットトリック達成。2000ギニーのオッズ、はこれまでの20対1から16対1に上がりました。このあとはシャンペン・ステークスからデューハースト・ステークスに向かうでしょう。
一方2着したアルティジアーノは、ロイヤル・アスコットのコヴェントリー・ステークス5着(オリンピック・グローリーは2着)、サパラティヴ・ステークスは4着でしたから、今年もサパラティヴ組が強かった、ということになるでしょう。これに伴い、コヴェントリーを制したドーン・アプローチ Dawn Approach の評価は増々高まりそう。
そして愈々サセックス・ステークス Sussex S (GⅠ、3歳上、1マイル)。初日にも少し触れたように、フランケル Frankel を恐れて出走馬は僅かに4頭、しかもバレット・トレイン Bullet Train はフランケルのペースメーカーですから、実質的には3頭立て。
しかしながら小頭数は荒れる、というのもヨーロッパの格言。セシル厩舎はメーカーを出走させて万全を期しました。フランケルのオッズは1対20という凡そあり得ないような圧倒的なもの。ここGⅠ2戦で立て続けに掲示板に載り、追加登録料を支払って参戦してきたファー Farhh は11対1の2番人気、3番人気のガブリアル Gabrial に至っては80対1というオッズでした。
レースは予定通り、そして予想通り。バレット・トレインが淀みない流れを演出して役割を完璧に果たします。フランケルは2番手、ファーが3番手、ガブリアルは最後方で直線に向かいます。
この時点で早くもファーのデットーリ騎手が懸命に追っているのに対し、フランケルの鞍上トム・クィーリーは持ったまま、後ろを確認する余裕も。一度クィーリーがゴーサインを出すと、フランケルの反応は瞬時かつ圧倒的。最後は手綱を緩めながらも、ファーに6馬身差を付けて連勝記録を「12」に伸ばしました。3馬身4分の1差でガブリアル3着。ゴール前はスタンドからも大拍手。さしずめ“待っていたゾ、フランケル!” ということでしょうか。
確か、サセックス・ステークス2連覇は史上初。去年はキャンフォード・クリフス Canford Cliffs に5馬身差で勝ったフランケルですが、内容としては前走クィーン・アン(2着に11馬身差)を上回るものではなかったでしょう。指標にはならないかもしれませんが、ペースメーカーを務めたバレット・トレインとの着差は、アスコットでは16馬身あったものの今回は10馬身。
フランケルが更なる評価を高めるためには、新たな領域への挑戦が必要でしょう。陣営は次走にジャドモント・インターナショナル(8月22日)、更にはチャンピオン・ステークス(10月20日)を予定していますし、間が空く9月にムーラン・ド・ロンシャン賞(9月16日)を使う計画もあるそうです。
いずれにしてもフランケルが競馬史に残る名馬であることは間違いありません。我々はフランケルと同じ時代の空気を吸っていることを幸福に思うべきでしょうね。
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