待望のアデス新作初演

昨日のプロムスは、今年生誕100年を迎える現代の偉大な作曲を讃えるコンサートでした。ゴスペルの回が間にあったため、≪Proms 8≫ としての公演。
またこの回は、現役の英国最大の作曲家と目されているトーマス・アデスの待ちに待った新作が世界初演されることでも大評判を呼び、世界の批評家がズラリと顔をそろえる壮観なコンサートでもあったようです。日本からも批評家が大挙押し寄せた、などという話は耳にしていませんが、ね。

ブリテン/シンフォニア・ダ・レクイエム
ルトスワフスキ/チェロ協奏曲
     ~休憩~
トーマス・アデス/死の舞踏(世界初演)
 BBC交響楽団
 指揮/トーマス・アデス
 ポール・ワトキンス(チェロ)
 クリスティアーヌ・ストタイン(メゾ・ソプラノ)、サイモン・キーンリーサイド(バリトン)

選ばれた作品も、ご覧の通り重たいもの。アデスは作曲だけでなく指揮者としても活躍している人で、ピアノも達者です。自身のピアノ五重奏曲なども、先日プロムスを沸かせたアルデッティQと初演しているほど。レコーディングもあります。

ブリテン作品はすっかり現代のオーケストラ・レパートリーとして定着したもの。私も実際に一昨年のプロムスで聴いています。何年かに一度は必ず登場する英国の名曲。

今年のプロムスは単にルトスワフスキのアニヴァーサリーを祝うに止まらず、ポーランドの音楽にも焦点を当てていて、他にシマノフスキ、グレツキ、ペンデレツキなど次々と紹介されることになっています。
ワトキンスの圧倒的な名人芸。アンコールに“モア、ルトスワフスキ”として演奏されたのは、無伴奏チェロのためのエッセーで「ザッハー変奏曲」。アンコールとして絶好の一品でしょう。

メインが大注目の新作「死の舞踏」。ルトスワフスキ夫妻の追悼のために委嘱されたもので、正にこの機会を目標に書き上げられたものでしょう。タイトルは「Totentaz」となっているように、ドイツ語のテキストによるメゾ・ソプラノ、バリトンと管弦楽のための大規模な歌曲集という趣です。
作曲者が満を持して発表しただけに、冒頭から惹き付けられます。40分ほど掛かる長大な作品ですが、大編成のオケをフルに用いたもので飽きさせません。

今年のプロムス実況は残念ながらプログラムをダウンロード出来ないので詳しい作品構成などは判りませんが、テキストは第2次世界大戦で破壊されたリューベックのマリア教会内壁(フリーズ)に書かれていた15世紀の作者不詳の文言の由。
(リューベックと言えば、昨日ヘンツェについて語っていた我が沼尻竜典がGMDとして赴任する歌劇場のある街。いつかその縁でこの作品を日本でも取り上げてくれるかも)
全体は通して演奏され、バリトンが死神を、メゾ・ソプラノが翻弄される様々な人間たちを歌う、という構成のようです。地獄を連想させるようなカタストロフ、最後はシューベルト風な安らぎに満ち、二人の歌手の「Tanzen」がリフレインで歌われつつ静かに曲を閉じます。この辺り、マーラー「大地の歌」の「Ewig」を連想するかも。
いずれ各国の批評家たちが健筆を揮うのでしょうが、一聴してアデスの代表傑作に数えられることは間違いなさそう。出版社のフェイバーも、既にスコアと演奏譜の出版予告を出しているほど。

私はアデス作品では、やはりプロムスでも演奏されたアサイラ Asyla くらいしか知らず、CDもEMIのラトル盤しか手元にありませんが、そろそろ本格的にスコアを取り寄せなければいかんでしょうな。先日も紹介しましたが、フェイバーはネットでサンプルを公開していますから、差し当たってアサイラからでも。

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