ドイツの刺客登場
ロイヤル・アスコットが終わった翌日、今度はフランスのサン=クルー競馬場で伝統のGⅠ戦が行われました。
最近はこの日に行われるのが仕来りとなっているマユレ賞 Prix de Malleret (GⅡ、3歳牝、2400メートル)からレポートしましょう。メインのグラン・プリと同じ距離で行われる3歳牝馬戦。仏オークスはチョッと距離が短いという馬にとっては、秋のヴェルメイユ賞を目指す恰好のトライアルでもあります。
馬場は発表では soft でしたが、実際にはもう少し良く good 程度だという意見もあったほど。10頭が出走し、ペネロープ賞(GⅢ)勝馬で前走サン=タラリ賞(GⅠ)では3着だったフェレヴィア Ferevia が23対10の1番人気。英オークス3着のザ・ラーク The Lark が速い馬場のロイヤル・アスコットを回避してこちらに回ってきました。実績から5対2の2番人気。
しかしレースは又してもフランス特有のスローペースに流れてしまい、人気両馬にとっては不満の残る内容になってしまいました。逃げたのは伏兵(24対1)シャルネッタ Chalnetta で、ペースが無いと言えるほどの超スロー。最後まで粘り続け、好位追走の3番人気(61対10)パシフィック・リム Pacific Rim に2馬身半差交わされたのみ。更に4分の3差3着にも人気薄(12対1)のオリオン・ラヴ Orion Love が入り、フェレヴィアは4着、ザ・ラークも5着と力を出し切れません。
パシフィック・リムは、ミケール・デルザングレ厩舎、ペースの読みが良かったウンベルト・リスポリ騎乗。3歳デビューの新星で、2戦目にメゾン=ラフィットで初勝利を挙げ、続く前走ロンシャンの条件戦と連勝。初挑戦のG戦でハットトリックとなり、当然ながら秋のヴェルメイユ賞を目指すことになるでしょう。その結果によっては凱旋門賞も夢ではありませんね。
そして日曜日のメインは、かつてエルコンドルパサーが勝ったこともあるサン=クルー大賞典 Grand Prix de Saint-Cloud (GⅠ、4歳上、2400メートル)。より凱旋門賞に直結するGⅠでもあります。
11頭が出走してきましたが、何と言っても注目はシリュス・デ・ゼーグル Cirrus des Aigles 。せん馬のため凱旋門賞には出走できませんが、フランケル Frankel が引退したことにより世界ランキングで最強馬に挙がった7歳。調整が遅れてシーズン初戦となったものの、6対4の1番人気に支持されていました。
早目に先頭に立ったペリエ騎乗のシリュス・デ・ゼーグル、やはり休み明けが堪えたのか最後はバテて後退、結局は5着に終わってしまいます。2011年の香港カップ以来初めて1・2着から外れましたが、元々同馬はシーズン・デビュー戦で勝ったことは無く、バランド=バルブ調教師も敗戦は余り失望していない様子。“2000メートルなら勝っていたし、この一叩きで本調子が戻るでしょう”と、来月のキングジョージ遠征は予定通りの由。オッズは4対1で変わりません。
ところで勝ったのは、中団から外を通って伸びた3番人気(57対10)のノーヴェリスト Novellist 。2着の2番人気(43対10)デュナデン Dunaden (メルボルン・カップ優勝馬)に1馬身4分の1差を付けていました。3着は1馬身差で凱旋門賞4着のハヤ・ランダ Haya Landa 。
イタリアとドイツの競馬は原則として紹介してこなかった当ブログではノーヴェリストは初登場ですが、ドイツのアンドレアス・ヴォーラー師の管理馬。去年のドイツ・ダービー2着馬で、シーズン最後にはイタリアに遠征してジョッキー・クラブ大賞典(GⅡ)に勝った馬。今期も5月にドイツのGⅡ戦に勝っており、連勝でGⅠホースの仲間入りを果たしました。ドイツ調教馬がサン=クルー大賞典に勝ったのは、1986年のアカテナンゴ Acatenango 以来のことでしょう。
今回騎乗したのは、ロイヤル・アスコットでゴールド・カップを制したばかりのライアン・ムーア。直線では先頭に立つのが若干早かったかな、とコメントしていましたが、ムーアにとっては2009年のスパニッシュ・ムーン Spanish Moon に次ぐ2度目の大賞典制覇です。
ノーヴェリストは、長年ドイツの競馬で活躍馬を輩出してきた「Nファミリー」の代表馬。ネッカー Neckar を初め、最近ではネックスト・デザート Next Desert (1999年)など何頭ものドイツ・ダービー馬が出ている血統です。
この勝利で、陣営はキングジョージ出走宣言。6対1のオッズが出されました。せん馬ではないことから凱旋門賞のオッズも出され、20対1に顔を出しました。先ずはキングジョージでの走りっ振りに注目が集まりましょう。果たしてドイツの刺客となるか・・・。
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