クローズ・ハッチェス、名実ともにGⅠ馬に

今週のアメリカは静かな週末です。G戦は土曜日の4鞍のみ。GⅠもベルモント・パーク競馬場の一鞍だけ、と。

そのGⅠが、マザー・グース・ステークス Mother Goose S (GⅠ、3歳牝、8.5ハロン)。fast の馬場に出走馬は5頭だけ。しかもG戦に勝ったことがあるのは2頭だけで、ガルフストリーム・オークス(GⅡ)勝馬でケンタッキー・オークスは不利があって4着のドリーミング・オブ・ジュリア Dreaming of Julia が1対5の圧倒的1番人気です。
しかし小頭数レースは却って荒れるもの。最低人気のトースティング Toasting が逃げ、ドリーミング・オブ・ジュリアも3番手に付けていましたが、3~4コーナーで後続が一団となった時に若干遅れを取り最後方に。ここで前半4番手から一気に先頭に押し上げた2番人気(4対1)のクローズ・ハッチェス Close Hatches が主導権を奪うと、2着以下に7馬身4分の1差を付ける圧勝劇を演じました。最後の最後でドリーミング・オブ・ジュリアも伸びてきましたが、半馬身差3着のマラソン・レディー Marathon Lady を捉えるのがやっと。
ウイリアム・モット厩舎、ジョエル・ロザリオ騎乗のクローズ・ハッチェスは、前走エイコーン・ステークス(GⅠ)で2着。その前ケンタッキー・オークスは7着で、前年まではGⅠだったガゼル・ステークス(春開催に移動したのに伴いGⅡに格下げ)に勝っており、ここで晴れてGⅠウイナーになった次第です。ジャドモント・ファームの自家生産馬で持ち馬、陣営にとっても新たなスター登場でしょうか。前走より肉体的にも成長しているとのことで、これまで同馬のレース全てに騎乗してきたロザリオは、ロイヤル・アスコット遠征から帰国して早々のタイトルです。

次はハリウッド・パーク競馬場から、こちらも3歳牝馬戦のハリウッド・オークス Hollywood Oaks (GⅡ、3歳牝、8.5ハロン)。馬場は同じく fast 、出走頭数も同じ5頭で、G戦はデビューながら一般ステークスに2連勝中のドゥーイングハードタイムアゲン Doinghardtimeagain という長ったらしい名前の馬が4対5の大本命でした。
1番枠スタートからそのまま先頭に立った本命馬、後続に隙を与えないまま2馬身半差の逃げ切りでG戦初タイトル獲得です。2着は2番人気(2対1)アイオタパ Iotapa が入り順当。更に半馬身差で3番人気(5対1)オンディーヌ Ondine が3着。
勝馬を管理するジェリー・ホーレンドルファー師は、このレース、2006年のヒステリカレディー Hystericalady に続く2勝目。鞍上はラファエル・ベハラノでした。これで9戦5勝2着3回、次はGⅠを狙いたいところでしょうね。

最後はコロニアル・ダウンズ競馬場から2鞍のG戦。何れも芝コースのG戦で、馬場は firm 。最初のオール・アロング・ステークス All Along S (芝GⅢ、3歳上牝、9ハロン)は7頭立て。出走馬中にG戦勝馬は唯1頭、スワニー・リヴァー・ステークス(芝GⅢ)を制したチャンネル・レディー Channel Lady だけでしたが9対5の2番人気。これを抑えて8対5の1番人気に支持されたのは、プリークネス・ステークス当日にピムリコ競馬場で行われたギャロレット・ハンデ(芝GⅢ)で3着したアピーリング・キャット Appealing Cat 。4度目のG戦挑戦で初勝利を目指します。
ウエルカム・ダンス Welcome Dance の逃げを2番手で追走したアピーリング・キャットでしたが、直線では5着に失速。替って前半は内ラチ沿いに3番手を進んだチャンネル・レディーが逃げ馬を外から捉え、後方から猛然と追い込むアイドル・トーク Idle Talk に1馬身差を付けて優勝、先輩G戦勝馬の貫録を見せ付けました。2馬身差でクレア・スカイズ・アヘッド Clare Skies Ahead が3着。
トッド・プレッチャー厩舎、ニューヨークから駆け付けたハヴィエル・カステラノ騎乗のチャンネル・レディーは、前走チャーチル・ダウンズのディスタッフ・ターフ・マイル(芝GⅡ)では4着。上記の通り、124ポンドのトップ・ハンデを背負いながら二つ目のG戦を制しています。

もう一鞍がコロニアル・ターフ・カップ・ステークス Colonial Turf Cup S (芝GⅡ、3歳上、9.5ハロン)。前年まではリステッド戦として行われてきましたが、今年からいきなりGⅡに格上げされた珍しいケースです。出走馬は8頭。ここまでG戦の勝鞍は無いものの、去年のベルモント・ステークスとBCマラソンの3着馬アティガン Atigan が3対2の1番人気。前走ルイヴィル・ハンデ(芝GⅡ)でも半馬身差2着と惜しい所で優勝を逃しているだけに、ここでG戦初勝利を挙げたいところ。
レースは3番人気(7対2)スイフト・ウォリアー Swift Warrior が逃げ、1番枠スタートのアティガンは終始内に包まれながらの苦しいレース運び。直線、スイフト・ウォリアーが粘っていましたが、終始最後方で待機していた最低人気(50対1)のロンドン・レーン London Lane の末脚が爆発、これも後方から同時に追い込んだハイパー Hyper に4分の3馬身差を付ける番狂わせです。頭差で粘ったスイフト・ウォリアーが3着。直線でも前が開かなかったアティガンは、競馬をしないままブービー7着敗退。また2番人気(5対2)に推された去年の2着馬でヴァージニア・ダービー(GⅡ)馬エア・サポート Air Support も6着に敗れる大波乱でした。レース実況アナウンサーが、“ロンドン・レーンだ! あっハッハァ~”と絶叫したのは、如何にショックが大きかったかの表れでしょう。
ローレンス・マレー厩舎、オラシオ・カラマノス騎乗のロンドン・レーンは、この2年間は11戦して1勝のみ。今年も27対1のオッズで6着敗退の1戦のみでしたから、誰もが無視していたのも当然でしょう。勝星は去年7月にデラウェア競馬場でマークしたアローワンス戦以来。3歳時に一般ステークスで3着した実績しかない6歳せん馬です。もちろんステークスもG戦も初勝利。

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