第6回・エク蓼科音楽祭

毎年のことですから詳しいことは触れませんが、今年も蓼科の隠れ山荘「むさし庵」でチェルトの森 アフタヌーン・コンサートを聴いてきました。
最近では土日の二日間、異なったプログラムが披露されることが定着したようで、私が聴いた初日はこんなプログラムです。

ハイドン/弦楽四重奏曲第36番イ長調 作品20-6
シューベルト/弦楽四重奏曲第12番ハ短調 D703「四重奏断章」
     ~休憩~
ベートーヴェン/弦楽四重奏曲第8番ホ短調 作品59-2「ラズモフスキー第2番」

別荘域内の地図が無いので、今年も迷いながら会場に着きます。迷うことも計算に入れているので、どうしても定刻より早目の到着。
同じ行動パターンで東京から馳せ参じたエク・フレンズの仲間と談笑しながら開演時間を待ちました。

夏の別荘地でのコンサートながら演奏曲目は本格的で、例えば楽章に繰り返しがあれば省略すること無く通して弾かれます。
コンサートの進行は、今年の顔であるヴィオラの吉田有紀子。彼女は地元に近い諏訪の出身というアットホームな雰囲気もあるのですね。

ハイドンは去年も取り上げられましたが、今年の作品20は多分エクでは初めて聴きました。フーガを取り入れた作品を含むハイドンの実験的な試みで、最後の6番にも様々な工夫があって如何にもハイドンらしい佳作。
プログラムには終楽章に Fuga con 3 Soggetti との紹介がありました。この「ソゲッティ」とは何ぞやというのがコンサート前の話題でしたが、確信も無いので帰京してから調べたところ。

ズバリ「Soggetti」とはイタリア語でテーマのことで、単数形は Soggetto 、3つの主題によるフーガということで、Soggetti と複数形になっているわけ。もちろん音楽の専門用語と言うことではなく、音楽で用いられる場合はフーガのテーマということに限定されるようです。
ハイドンは作品20でフーガ形式をいくつも試み、例えば第2番の終楽章は Fuga a 4 Soggetti 、第5番のフィナーレには Fuga a 2 Soggetti という具合。その意味で改めて譜面を確認すると、作品20の6曲の各楽章の表現記号は全て異なっている。ハイドンが如何に1曲づつ工夫していたかが判って面白いものです。
ハイドンはどれも同じ、というアホな音楽家紛いがとんでもない発言をしているようですが、そういう人はスコアを見直すべき。批判をハイドンの目の前で言う勇気はないでしょう。

次のシューベルトも、吉田氏の短い解説の中に真実が隠されています。3連音符の扱いについてですが、演奏は本格的でも気楽に接することが出来るアフタヌーン・コンサートならではの楽しみ。
何気なく聴いてしまい勝ちなシューベルトを新鮮な気持ちで聴くことが出来ました。

最後は定期でも取り上げたばかりのラズモ2番。楽章の途中にはウグイスの「ホーホケキョ」も和すなど、緑豊かな環境ならではの楽しさ。カッカ、カッカ、カッカ、カ、というベートーヴェンならではのリズムに思わず手に汗を握るのでした。

ということで6年目のコンサートも無事に終了、アンコールには最近発売されたCDにも含まれているドヴォルザークの糸杉から第1曲。
演奏会の後は、ワインと軽食の付いたパーティーで盛り上がります。三々五々お開きと言うスタイルですが、気が付けば最後まで残っていたのは私共とエクのメンバーに若干名。長ッ尻は良くないな、と思いつつ話題の絶えない一日でした。

なお今年の二日目(日曜日)は、初日と同じシューベルトの他にメンデルスゾーンの2番、フランセの洒落た四重奏の後、ピアソラの楽しい曲で締められる予定。日曜日には初めて幸松氏が来られるということで、アンコールは氏の日本民謡集から選ばれると想像します。
最後は“また来年会いましょう”という挨拶が自然に出てきてしまう、自然体の演奏会です。

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