第4回・エク蓼科音楽祭
2009年に始まった「チェルトの森 アフタヌーン コンサート」、今年も聴いてきました。日記のタイトルは私が勝手に付けたもの。
このコンサートについては毎年触れていますので、全て省略。
2012年は、8月4日(土)と5日(日)の2日間行われ、2種類のプログラムが用意されていました。2回になったのは去年から、土・日でプログラムが替ったのは今年からです。
私が聴いた土曜日は以下のプログラム
ハイドン/弦楽四重奏曲第48番ヘ長調作品50-5
コダーイ/弦楽四重奏曲第2番作品10
~休憩~
ベートーヴェン/弦楽四重奏曲第7番ヘ長調作品59-1「ラズモフスキー第1番」
クァルテット・エクセルシオ
去年はリゲティがあり、しかも演奏会当日に配られたプログラムで全体の演奏曲目を知ったのですが、今年は最初からコダーイがアナウンスされていました。その意味では去年のようなサプライズはありません。
“コダーイをやるなら行かなくちゃ”と予定を変えてこられた方もあったほどです。
一方ハイドン、事前に入手したチラシには第40番とあって、どの曲を取り上げるのか良く判らない日々もありました。ハイドンの通し番号は様々な資料があって特定し難いのです。
ホームページなどで確認し、第2楽章に「夢」という名前が付けられている曲であることが判明。48番は昔から通称されていた番号で、例えばオイレンブルクの旧版でも表示されているもの。
プログラムには手短な曲目解説がありましたが、書かれた方の署名はありません。
演奏に先立って、今回は第2ヴァイオリンの山田百子さんによるトーク。去年は西野、一昨年は吉田の各氏が話されましたから、毎年持ち回りで、というルールにしてるのかも知れません。第1回は解説は無かったように思います。ということは、来年はチェロの担当かな。
最近はこの種のプレトークが盛んですが、多くの場合は音楽評論家などが受け持つようで、啓蒙的、学問的な話になり勝ち。その点、ここでの話は演奏家自身が語りかけるもので、意外な「聴き所」が聞けるのが良いですね。
今回もハイドンは“話し上手の落語家の語り口のような感じ”とか、コダーイについては“泣く所は大袈裟に、民謡調のフレーズは躰を揺するように”という具合。
最後のベートーヴェンも、“この曲でベートーヴェンは『何か』を掴んだのではないか”という感想にはなるほどと説得されました。
音楽は、特段の解説には捉われず聴く人が自分の感性で楽しめばよい、と基本的には思いますが、意外な視点を見つけるのも鑑賞のツボでしょう。改めてクラシック音楽のディープな世界に触れてきました。
最初のハイドン。手渡されたプログラムには「フィナーレでは、当時では珍しい第1ヴァイオリンの特殊な奏法にご注目!」と書かれていました。実は聴いた時には良く判らなかったのですが、帰宅して確認すると、sopra una corda と書かれた奏法のことだろうと言うことに行き当たります。
つまり1本の弦だけを使って弾くということですね。恥ずかしながらこれまで意識したことはありませんでしたが、これからは注意して演奏を「見る」ことにしましょう。録音だけでは判らない世界ですからね。こういう些細なことも、現地に行けば大きな収穫になるという実例です。
コダーイは2楽章構成の短いもので、ナマでは初めて接したと思います。現代的な響きの第1楽章と、民謡風な民族色豊かな第2楽章との対比が面白い作品。
第1楽章ではセカンドが時折悲鳴を上げるのが聴き取れ、ははぁ~ん、これが大袈裟に泣く所か、と思ったりもします。第2楽章も頭デッカチにならない所が如何にもコダーイ。
休憩を挟んで演奏されたベートーヴェンは流石でした。エクのベートーヴェンに接すると、常設クァルテットとしての実力に改めて感じ入ります。もちろん前半も大いに楽しめたのですが、演奏の完成度とか緻密さ、作品への集中力に関しては常時演奏している作品ならではのもの。
この素敵な演奏が、時々サロンを吹き抜ける風に乗って耳を擽る様は、都会のホール・コンサートでは決して味わえない至福の時でしょう。室内楽の本来の楽しみは、こういう空間で味わうものだと確信しました。
終了後のパーティーで、大友氏はそれでも満足できないと言うか、毎回毎回が試行錯誤というような受け答えでしたが、やはりここまでの水準に達するのは並みのことではなかろうと思慮します。
ベートーヴェンにはロシア民謡も用いられおり、アンコールは日本民謡を一つ。「五木の子守唄」を幸松版で。冒頭、アルペジオに乗ってヴィオラが民謡を歌い始めるヴァージョンです。突然の転調や曲想の変化に富み、単純に民謡を楽器に移し替えたものではありません。もちろんコダーイにも共通する世界。
終演後のパーティー、今回は長居してしまいました。結局最後まで駄弁っていたのじゃないでしょうか。お蔭で、むさし庵マスターの興味深いお話も聞けたし、音楽を離れた話題も満載。
2回とも聴くという方、東京から遠征してこられる方も年々増えているようだし、クァルテットとの付き合いは愈々ディープになって行きます。
例によって我々は霧ヶ峰・クヌルプとの往復。今年はクヌルプ一泊、蓼科一泊から、再び霧ヶ峰に戻る旅程で、例年になく多いアサギマダラの乱舞を楽しんできました。
そうそう、ニッコウキスゲが鹿の食害で激減しているという話は、今年55周年を迎えるクヌルプ松浦翁から聞いたこと。自然保護の難しさに思いを馳せるのも、この時期の恒例になってしまいましたね。
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