三鷹の快速

今日はマチネー、シュトゥットガルト室内管弦楽団の演奏会に行ってきました。今帰ったばかり。
これは本来行く予定ではなかったのです。従姉妹が武蔵野市民文化会館の会員か何かでチケットを優先的に入手したけれど、用事で行けない。それが従兄弟に回ったのだけれど彼も都合が悪くなった、ということでピンチヒッターの役目をおおせつかった次第。
武蔵野市民文化会館には一度ルプーを聴きに行ったことがあるだけ。行きも帰りも苦労したような記憶が・・・。

真剣にネット路線検索を掛けると、湘南新宿ラインと中央線快速で三鷹に出れば速い。三鷹から徒歩だけれど、13分で着くらしい。バスは時間が当てにならないけれど、徒歩なら狂わないでしょう。よし、これに決~めた。
ということで、あまり期待もせず聴いてきました。ところがドッコイ素晴らしいコンサートでしたわ。

シュトゥットガルト室内管弦楽団ははるか昔に聴きました。今回が2度目。前回はまだミュンヒンガーが振っていた頃で、上野の文化会館大ホールの被り付きで聴きました。バッハのフーガの技法がメインだったことを覚えているだけ。
今日のプログラムも全てバッハ。以下のもの。

バッハ/ブランデンブルグ協奏曲第5番
バッハ/3つのヴァイオリンのための協奏曲 二長調
~休憩~
バッハ/ゴルトベルク変奏曲より(編曲:ドミートリ・シトコヴェツキ)
バッハ/G線上のアリア
バッハ/管弦楽組曲第2番 ロ短調

指揮者は置かず、コンサートマスターのベンジャミン・ハドソンが全体をリード。ブランデンブルグのソロはハドソンの他、フルートがガビー・ギロームという女性。チェンバロはヨルグ・ハルベク。チェンバロの使用楽器はジャン=クロード・グジョンの1749年モデル。
3台ヴァイオリンはハドソンとヴォルフガング・クスマウルに女性奏者カロリン・フォースターが加わります。
最後の組曲はもちろんギロームのソロ。
全員でも20名弱、これでフルメンバーなのか、昔より随分小振りのアンサンブルですね。

曲目はそれこそバッハ名曲集。武蔵野向けと言う訳でもないようで、東京都心でも同じプログラムが組まれている由。
私は普段バッハをあまり聴く機会が無いので、演奏をどうこう言える資格はありません。それでもこれは良かったなぁ。
最初のブランデンブルグは少し退屈する所もありましたが、3台ヴァイオリンは良かった。3人の音色も呼吸もピッタリ、芯がシッカリしていながら実に柔らかい合奏です。昨日マーラーで大分大雑把になった耳が一気に修正。こうでなくちゃ。

圧巻は最後、組曲第2番です。この団体はもちろんピリオド系じゃありません。古楽器奏法とも無関係。
しかし古色蒼然とした重々しいバッハではなく、テンポは速め、リズムも歯切れ良くキビキビとした心地よさで進んで行きます。
序曲、ロンドと次々に進み、最後のバディヌリは超快速。ただ速いのではなく、音楽が生気に充ち、内側から沸騰してくる推進力。フルートのギロームさん、即興を交えながら乗って行きます。

万来の拍手に応えてアンコール、バディヌリ Again。これが凄い。本編とは全く異なる即興を加え、聴衆を唖然とさせました。
なおも鳴り止まぬ拍手にロンドをもう一度、これまた即興も表情もチョッとしたフレージングも本編とはガラリと変化。
どんなやり方でも、何度でも演奏できるぞ、と言わんばかり。
大満足のバッハ、思いもよらない至福の時でしたね。

冷静に振り返れば、シュトゥットガルト室内管弦楽団のテクニックが抜群に優れているわけではないのです。もちろん素晴らしい合奏ですよ。しかし私が随喜したのは現代楽器による本格的なバッハが聴けたこと。
東京には大編成オーケストラが8つもあります。彼等は現代風バッハはやりません。やれば批評家やマニアックな聴衆から馬鹿にされますからね。それに大ホールはバッハには向かない。

提案したいのは、優れた室内管弦楽団をいくつか創設すること。バッハなどを中心に、現代作品までをレパートリーに定期的な活動をする。決して不可能なことではないと思います。

そんなことを考えながらホールを飛び出したのが5時10分。ひたすら三鷹駅を目指して5時27分の中央線快速をキャッチ。吉祥寺→荻窪→中野→新宿と飛ばして5時48分の湘南新宿ラインにヒラリ。
6時4分には西大井に降り立ったのであります。1時間前には三鷹でバディヌリーに酔っていたのが信じられない。シュトゥットガルトの快速バッハもビックリ。
これで武蔵野市民文化会館というのもコンサート通いの視野に入ってしまった。まずいぞ!

 

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