オリジナル版、でも短縮版による「ボリス」

昨日はいろいろ忙しく、プロムスを聴いている時間がありませんでした。で、漸く時間が取れたので二日目のコンサートを聴きましょう。
今年はファースト・ナイトに続いていきなりのオペラ全曲演奏会。毎年登場するロイヤル・オペラが今年披露するのは、ムソルグスキーの大作でした。

7月16日 ≪Prom 2≫
ムソルグスキー/歌劇「ボリス・ゴドゥノフ」(1869年オリジナル版)(演奏会形式、ロシア語歌唱)
 ロイヤル・オペラ・ハウス管弦楽団 Orchestra of the Royal Opera House
 指揮/サー・アントニオ・パッパーノ Sir Antonio Pappano conductor
 ボリス・ゴドゥノフ/ブリン・ターフェル Bryn Terfel
 フョードル/ベンジャミン・ナイト Benjamin Knight
 クセーニャ/ヴラーダ・ボロフカ Vlada Borovko
 シュイスキー/ジョン・グレアム=ホール John Graham-Hall
 シェルカロフ/コスタス・スモルギナス Kostas Smoriginas
 ピーメン/アイン・アンガー Ain Anger
 フィリップ・グリゴリー/デヴィッド・バット David Butt
 ワルラーム/アンドリイ・ゴンジュコフ Andrii Goniukov
 ミサイール/ハリー・ニコール Harry Nicoll
 宿屋の主人/レベッカ・デ・ポント・デイヴィス Rebecca de Pont Davies
 聖なる愚者/アンドリュー・トーティス Andrew Tortise
 合唱/ロイヤル・オペラ・コーラス Royal Opera Chorus

当初からオリジナル版と告知されていましたが、念のため一般的なリムスキー=コルサコフ改訂版を手元に置いて聴き始めます。ところが聴き出して直ぐ、これとは全く異なる版であると認識。一旦放送をストップし、ペトルッチでオリジナル版の譜面を探すことにしました。
幸いカーマス社のヴォーカル・スコアが閲覧できたので、これを全幕ダウンロードして再挑戦。このサイトはプロローグから最後の第4幕までが夫々五つのファイルで構成されているため、幕毎に放送を一時停止しながらの鑑賞です。

プロローグ、第1幕と順当に進みましたが、第2幕第1場「狂乱の場」まで来たところでスコアとは異なる音楽が流れ始めます。ここで再度休憩し、譜面を探してみると最後の第4幕に飛んでいることを発見し、ここから再開。そのままボリスの死までが演奏され、今回の演奏会は大団円を迎えました。
即ち、今年のプロムスで演奏されたボリスはムソルグスキー自身が書き残したオリジナル版を用いながらも、第2幕第2場はカット。続く第3幕も全てカットし、第4幕の第1番「ボリスの死」で終了。終幕の第2場も演奏されませんでした。
2時間強、休憩無しの演奏で、幕間の拍手もありません。ロイヤル・オペラの公演もこれと同じだったかは判りませんが、私は初めて体験したエディションでの演奏でした。

終了後にコメンテイターが伝えていたように、配役は全員が舞台衣装を着用して歌っていたようで、演奏ノイズや動きが判ることから、演奏会形式とは言いながらアクションは舞台公演とほぼ同じに演じられていたのでしょう。
何と言ってもターフェルのボリスが圧巻で、恐らく聴衆は歌唱と演技に声を潜めての鑑賞だったと思われます。幕間の静寂はプロムスとは思えませんでしたが、終わってからの拍手歓声も尋常のものじゃありませんでしたね。流石にプロムス。

 

 

Pocket
LINEで送る

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください