プロムスの「セヴィリアの理髪師」
プロムスには毎年、グラインドボーン祝祭歌劇場が登場し、その年の音楽祭の出し物から1本をプロムスでセミ・ステージ上演するのが習わしです。
今年の出し物はロッシーニの「セヴィリアの理髪師」、キャストは以下の面々。
7月25日 ≪Prom 14≫
ロッシーニ/歌劇「セヴィリアの理髪師」(セミ・ステージ上演、イタリア語歌唱)
ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団 London Philharmonic Orchestra
指揮/エンリケ・マッゾーラ Enrique Mazzola
ロジーナ/ダニエレ・ド・ニース Danielle de Niese
医師バルトロ/アレッサンドロ・コルベルリ Alessandro Corbelli
アルマヴィーヴァ伯爵/テイラー・ステイトン Taylor Stayton
フィガロ/ビヨルン・ビュルガー Björn Bürger
ドン・バジリオ/クリストフォロス・スタンボグリス Christophoros Stamboglis
ベルタ/ジャニス・ケリー Janis Kelly
フィオレッロ/フー・モンタギュー・レンドール Huw Montague Rendall
グラインドボーン祝祭歌劇場 Glyndebourne Festival Opera
今年のグラインドボーン音楽祭はセヴィリアの理髪師の他、マイスタージンガー、フィガロの結婚に加え、シェークスピア没後400年を記念してブリテンの「夏の夜の夢」とベルリオーズの「ベアトリスとベネディクト」も上演されています。
プロムスに登場したセヴィリアは新演出とのこと。
例によって音声だけでは歯痒い思いがするのは止むを得ない所。時折聴こえる客席の笑い声や拍手が気になりますが、ここは我慢するしかありません。喜劇だけにこれは残念。
ロジーナのド・ニースはグラインドボーンのクレオパトラ役(ヘンデルのジュリオ・チェーザレ)でブレイクした人だけに、今やグラインドボーンの顔。今回も魅力を十二分に発揮したようです。
グラインドボーンはキャストが泊まり込みでミッチリ稽古を積んでいるのが最大の強み。今回の演奏も計算し尽くされた感のある充実した公演と聴きました。
アリアはもちろん、レシタティーヴォに至るまでほとんどカットは無く、オリジナルに忠実に再現されるので、スコアを見ながら聴いているファンには耳にも目にも満足がいきます。
ただ、聴いていてアレッと思ったのは、第2幕の後半。私が参照したのは47年も前に入手したインターナショナル・ミュージック版のフルスコアですが、「嵐の音楽」の前にロジーナの聴き慣れないアリアが歌われます。
オペラの最新研究には疎いのですが、最近の校訂版には異稿でも掲載されているのでしょうか。慌ててネットで検索してみましたが、初めて聴いたロジーナのアリアに関する記事は見当たりませんでした。ロジーナがてっきり裏切られたと思ってリンドーロへの怒りをぶつける楽曲のようです。
このアリアが加わったこともあるのでしょうか、フィナーレの一つ前に歌われるシーンとアリア、伯爵と合唱が歌うナンバーがカットされていました。この前後にあるレシタティーヴォが続けて演じられます。
ペトルッチで閲覧できるリコルディ版のスコアもインターナショナル・ミュージック版と全く同じですから、現時点ではグラインドボーンの新解釈は謎のまま。ご存知の方がおられたらご教示願いたい位ですね。
カーテンコールでコメンテイターが歌手を紹介していましたが、フィガロ役のビュルガーは、ダルムシュタット生まれでフランクフルトで活躍しているバリトンの由。つい先日現地に行ってきた身にとっては大いに親近感が沸きます。
ダルムシュタットで生まれ、フランクフルトで活躍、“さもありなん”と思ってしまいました。フランクフルト歌劇場の音楽監督ヴァイグレは来月読響に登場しますし、そのフランクでヴァイグレが振った「ドン・ジョヴァンニ」に、ビュルガーはマゼット役で登場していましたっけ。
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