昨日もシェークスピア

ハイビジョンのライブ・フロム・ザ・メット、昨日は一昨日に続いてシェークスピアもの。ヴェルディのマクベスでした。
番組冒頭のピーター・ゲルプと指揮者ジェームス・レヴァインのトークによると、マクベスはヴェルディ初期のオペラで、どうしてもヴェルディ作品の上演では後回しになっていまうのだとか。だから比較的珍しいレパートリーです。
でも、レヴァインによると「楽しい」オペラなんだそうで、確かにそういう観点で見てみると、楽しいオペラでした。冒頭の預言者たちの合唱も、一人一人が楽しんで演技してます。
タイトルロールのマクベスはジェリコ・ルチッチ、マクベス夫人がマリア・グレギーナ。主役はこの二人みたいなオペラで、バンクォを歌うジョン・リライア、マクダフのディミトリ・ピタスを含めて、オペラ音痴の私が知っているのはグレギーナだけ。彼女は去年の外套でも凄い存在感でしたからね。
グレギーナさん、舞台だけ見ていればオッカナイ女に見られますけど、例によってインタヴューなどに接してみると、グレギーナ母さんという雰囲気で、おどろおどろしいマクベス夫人にも親しみを覚えるのでした。
指揮のレヴァイン、この人ほどメットが似合う人もいないでしょう。どんなに深刻なオペラを振っていても、この人には全てがエンタテインメントという雰囲気があります。彼が登場しただけで客席からブラヴォがかかる。
この日の演出はエイドリアン・ノーブル Adrian Noble 、ロイヤル・シェークスピア・カンパニーで演出を担当している人だそうです。幕間でインタヴューに応じていましたし、リハーサルの一部も紹介されていました。
話を現代に設定した演出で、4幕冒頭のバーナムの森、難民のシーンに力を入れていたような気がしました。登場したマクダフの目から涙が一筋流れたのは、もちろん本物じゃないんでしょうが、演出家の拘りが感じられます。テレビ映像だから確認できた演出ではあります。
ところでマクベス、オペラの題材としては難しい部分もありますよね。誰が主役かよく判らない話だし、幕切れがどうもアンチクライマックスになってしまう。マクベス夫人の狂乱の歌も、その後のマクベスの苦悶の歌も、あとから帳尻合わせに挿入したような印象になってしまうのです。
実際、リヒャルト・シュトラウスがこれを交響詩仕立てにしたとき、彼は最後をマクベスの勝利と勘違いして、ビューローだったかにそれはマクダフ、と指摘されたんでしたっけ。
ま、あまり難しいことを考えずにオペラとして楽しめばよい。そんなメット公演でした。客席も総立ち、これがニューヨークの習慣なんでしょうね。
放送は8時から11時までの3時間、3幕の最初と中ほどにあるバレーはカットされていました。ここは省くのが通常なんでしょうか。

 

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