NHK音楽祭2007/NHK交響楽団

放送音楽

NHK音楽祭の最後の出し物、N響の放送です。オペラ・バレエ特集ということで、N響が指名したのはイタリアの巨匠・ネルロ・サンティ、合唱は新国立劇場合唱団です。
プログラムがやや変わっていて、最初がドビュッシーの海。後半(多分)がイタリア・オペラ合唱名曲集というもの。尤もボロディンもありましたけど。

いつものように見たままの感想。海はオペラ・バレエとは関係ないと思うけど、堅いことは言わない。
「海」には見どころがいくつかありますね。第1楽章では例のチェロ合奏でしょう。ドビュッシーが書いたスコアでは、4本づつ4組に分かれるように指示されています。4×4で16本のチェロが必要なんですけど、現代のオケはこんなに揃えません。それでどうするか、というのがオーケストラの、指揮者の悩みなんですねぇ。

いくつか解決法があるそうですが、サンティ爺さんの選択は、ヴィオラを助っ人に加える方式。テレビカメラの担当者にはそんな知識は当然無いので、漠然とチェロたちを映してましたが、端っこに数人のヴィオラが弾いているのが映ってました。スコアではヴィオラはお休みの個所。

このやり方はフルネさんが使ってましたね。彼自身でオリジナルのパート譜を準備しているそうです。
サンティさんとフルネ翁の関係は知りませんが、古いタイプのマエストロは、こういう裏技を共有し、伝統として伝えているんですねぇ。ここ、感心して見た人には二重丸を上げます、って、何にも出ませんけど。

あとは第3楽章の金管のファンファーレ。これはカットしてました。というかデュランの決定稿による演奏です。
もう一つが最後の最後。コルネット2本の3連音符駆け上がりですね。サンティさんはここもチャンと演奏してました。これもデュラン決定稿。

最近よく聴くのが、デュランじゃない海賊版みたいなコルネットなしによる演奏で、日本版の楽譜なんかこれが印刷されてますよ。こういうスコアを普段から愛用している人は、最後のタタタタタタァッ、ていうコルネット聴いたら腰を抜かすでしょうね。でもこれが正解、と、私は思ってますがねぇ。

海を充分に楽しんだ後は、オペラ合唱集。こんなものが取り上げられてました。
マスカーニ/イリス~太陽の賛歌
プッチーニ/蝶々夫人~ハミングコーラスと間奏曲
プッチーニ/トゥーランドット~斧を研げ、月への祈り
ヴェルディ/オテロ~喜びの炎よとバレエ音楽
ボロディン/イーゴリ公~ダッタン人の踊りと合唱
ヴェルディ/アイーダ~大合唱の場

サンティさん、これらを全部暗譜で振ってました。普段取り上げられないような部分(蝶々夫人など)もありましたが、隅から隅まで頭に入っているんでしょうね。多分、全曲演奏でも暗譜で振れるでしょう。イリスなんて驚きです。

N響も普段演奏していないレパートリーということもあって、みな必死の形相。これが心地良い緊張感を生んで、N響らしからぬ緊迫した演奏になっていました。

ということで、NHK音楽祭の4公演を見終わったんですが、もしライヴで行けたとしたらどれにしますか、と問われれば、悩んだ挙句にN響かな。
パリもドレスデンもマリインスキーも夫々の良さがあるけれど、天邪鬼の私が一番面白かったのは東京のオケでした。

それにしても新国立劇場さん、サンティのようなオペラの生字引みたいな人に顧問か何かに就いてもらい、アドバイスしてもらうのがいいんじゃないのかなぁ。

最後にサンティの「海」。テンポが遅すぎて、私の好みじゃなかったです。念のため。

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