NHK音楽祭2007/ドレスデン国立歌劇場管弦楽団

放送音楽

今年のNHK音楽祭はオペラ・バレエ特集らしいですね。先週見たパリ管弦楽団はラヴェル中心。次のドレスデンは、当然のことにドレスデン縁の作曲家のオペラが中心でした。
最初はウェーバーの「魔弾の射手」序曲、次がワーグナーの「オランダ人」からアリア。ダーラントの歌で、オランダ人をゼンタに紹介する場面の音楽。第2幕6番のアリア、切りの良いところまででした。バスはクルト・リドル。
再びウェーバーに戻って、今度は「オイリアンテ」序曲が演奏されたあと、バリトンのハンス・ヨアヒム・ケテルセンが登場してリヒャルト・シュトラウスが歌われます。曲目は「ダナエの愛」から第3幕の間奏曲と最後の場面。
間奏曲は、練習番号82の9小節目、拍子が4分の4に変わるところから練習番号86の手前までですね。舞台でも幕が降りて間奏になる箇所です。休みを入れずそのままフィナーレに続けられ、練習番号137、変ロ長調に転調してからのジュピターのアリアが最後まで通して演奏されました。ダナエの“ミダス!”という呼びかけは、当然ながら歌無しでした。

ここで休憩があったようで、後半はワーグナーの「ワルキューレ」第1幕全曲。よくやる演奏会形式の定番です。ジークリンデはエヴリン・へルリツィウス、ジークムントがヴォルフガング・シュミット、フンディンクがクルト・リドルの再登場です。
以上の指揮は、ファビオ・ルイージ。

ドレスデンは歌劇場自体が来日公演中で、このコンサートは合間を縫って行われた特別プログラムみたいでした。オペラも公演日、演目によって随分バラツキのある評が出てますね。ルイジのときは良いようですが、他は概して不評みたいです。

このコンサート、例によって放送ですから細かいことは分かりませんので、見たまま聴いたままの感想です。

伝統あるヨーロッパのオーケストラですが、並びは普通のスタイルで、ヴィオラを右に配置していました。コントラバスも普通に右奥。音色はいかにも「東側」っていう感じがしますね。今頃そんなことを言うのは古いんですが、ベルリン・フィルなどの華やかな音作りではなく、ガッシリした中にも独特な柔らかさがあります。ただし、古い録音などで聴くドレスデンのイメージからすると、大分「ドレスデン色」は薄まっているようにも感じました。

ルイジは楽譜を見ながら指揮していました。ウェーバーなどは独特な劇場スタイルがあるようで、スコアとは若干異なる音量設定もありましたね。この辺が伝統なんでしょうか。

後半のワルキューレが良かったですね。歌手も安定していましたが、リドルが断然の存在感。ドイツ語が上手い、ってバカみたいなこと言いますが、ワーグナーは本物のドイツ語でないとどうにもなりません。リドルのフンディングを聴いていると、いかにもワーグナーを聴いた、という感じがします。

それに対して酷かったのはシュトラウス。さすがのドレスデンも常時取り上げているレパートリーじゃないのでしょう。間奏曲はまだしも、アリアでは歌唱とオケがバラバラ。ケテルセンという歌手は声もあまり魅力がないし、歌そのものがアバウト過ぎますね。縦線なんか滅茶苦茶、勝手に歌っていて、ルイジが懸命にオーケストラをコントロールするのだけれど、歌とは全く別のことやってました。音だけ聴いていればまぁまぁかも知れないけれど、スコアを見ていたので実に不愉快でした。

それで一つ安心しましたね。ドイツ・オペラの本場物といったって、「ダナエの愛」のような日常的レパートリーで無いものは酷い水準だ、ってこと。これなら二期会が本気になって練習し、適材適所を過たなければ、ドレスデンなんて怖くないと思いました。

客席は凄く沸いていました。私の感想では玉石混交、としておきます。

Pocket
LINEで送る

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください