日伊声楽コンコルソ入賞者披露コンサート

今日は処暑。暦どおり暑さも一段落しています。というより、夕方から雨が降り出し、いかにも夏の終わりを感じさせる寂しさも漂います。
そんな中、午後のサントリーホールでは以下のコンサートが行われました。
《イタリア・オペラ名曲コンサート》
第44回日伊声楽コンコルソ入賞者披露記念
     ~第1部~
ヴェルディ/歌劇「ジャンヌ・ダルク」序曲
ヴェルディ/歌劇「トロヴァトーレ」~おだやかな夜(ソプラノ/小川里美)
マスカーニ/歌劇「イリス」~私は怖い夢を見た(ソプラノ/岸七美子)
ロッシーニ/歌劇「シンデレラ」序曲
ベッリーニ/歌劇「清教徒」~いとしい乙女よ、貴女に愛を(テノール/大澤一影)
ドニゼッティ/歌劇「連隊の娘」~友よ、なんて楽しい日だろう(テノール/大澤一影)
     ~第2部~
ヴェルディ/歌劇「ルイザ・ミラー」序曲
ヴェルディ/歌劇「ルイザ・ミラー」~むごいことよ、ああ神様(ソプラノ/木下美穂子)
ジョルダーノ/歌劇「アンドレア・シェニエ」~ある日青空を眺めて(テノール/福井敬)
プッチーニ/歌劇「マノン・レスコー」間奏曲
プッチーニ/歌劇「トゥーランドット」~お聞きください(ソプラノ/木下美穂子)
プッチーニ/歌劇「トゥーランドット」~誰も寝てはならぬ(テノール/福井敬)
ヴェルディ/歌劇「オテロ」バレエ音楽
 管弦楽/読売日本交響楽団
 指揮/菊池彦典
日伊声楽コンコルソというのは、日本音楽コンクール、イタリア声楽コンコルソと並んで国内三大声楽コンクールの三冠と呼ばれるものだそうです。
私はこの種のコンクールやその披露演奏会とはこれまで無縁で、今回初めて聴きました。正直に告白すれば、ファンである木下美穂子を聴くのが目的でした。
今年第44回という日伊声楽コンコルソの受賞者は、第1部に登場した3人です。コンクール第1位は大澤一影、第2位が岸七美子、第3位は小川里美の各氏。
これから第一線に羽ばたく三人、それぞれの実力を披露してくれました。その特質は、彼らが選んだ曲目が全てを語っているようです。
最初に登場した小川里美、大変に背が高く舞台栄えのする方。東京音大出身です。
岸七美子はどちらかというと暗目の音色を持った個性的な方。芸大卒。
第1位に輝いた大沢一影も体格に恵まれた方で、やはり芸大卒。ベッリーニやドニゼッティを歌ったように、軽やかでリリックな歌声。ロッシーニもピッタリでしょうね。さすが第1位に選ばれただけあって、客席からも大きな声援が飛んでいました。
お目当ての第2部。やはり木下美穂子は貫禄ですね。オペラには声量や技術に加えて、経験と精進が極めて大切だ、ということを身を以って示してくれました。辺りを払う風格は、正にプリマ・ドンナ、国際級です。
木下は上記三大コンクールを同一年度で制した逸材。日伊声楽コンコルソの記念コンサートとして最高のゲストでした。(木下は2001年、第37回の覇者)
その意味では、福井敬も木下美穂子とデュエットを組む理想的キャスト、のはずでしたが、この日は残念ながら事故がありました。
ジョルダーノではいつもの迫力ある熱唱を聴かせてくれたのですが、トゥーランドットでは最初から声が出ず、辛うじて最後まで歌い切ったものの、私は冷や汗の搔きっ放し。“どうしたんだろう、大事にならなければ良いけど・・・”
それでも客席から大ブラボォが掛かっていましたが、今日の聴衆は普段とは大分異なる質の人たちでした。ねっすん・どるま・・・を聴けばトコロ構わず大歓声を挙げるファン。如何なものでしょう。
あくまでもこれは突然の事故だと考えたいですね。ジョルダーノで張り切りすぎたのかしら。菊池彦典が振る読響、相変わらず大音量で客席の度肝を抜くのですが、これが裏目に出たのかも。歌手には気の毒な指揮者とオーケストラのあり様でしたね。
ということで、当初のプログラムに掲載されていた木下と福井のデュエットによるオテロの二重唱はカット。主催者・読売新聞の関係者からお詫びの挨拶がありました。
最後に、恐らくアンコールとして用意されていた「椿姫」の乾杯の歌が、福井を除く全員で歌われました。
読売さん、指揮者をチャンと選んでください。五輪じゃないんだから・・・。

 

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