2009クラシック馬のプロフィール(7)

今回は先のオークスを1番人気で制したサリスカ Sariska を取り上げます。
彼女もまたサラブレッドのプロフィールを描くに牝系を中心にしなければ本質を捉えられない一例です。
サリスカは父ピヴォタル Pivotal 、母メイコックス・ベイ Maycocks Bay という血統。母の父はアレッジドAlleged 産駒のムータラム Muhtarram です。
鉄則に従って母の血を遡りましょう。
母はヨーク競馬場のシルヴァー・カップ・トロフィーという14ハロン(約2800メートル)のリステッド戦に勝ったステイヤーです。
サリスカの半姉に、去年ノッティンガム競馬場でやはり14ハロンのリステッドに勝ったガル・ウイング Gull Wing がいます。この馬は重馬場を大変得意にしていました。
二代母ビーコン Beacon は未出走馬。産駒にそれほど目立った馬はありませんが、9戦2勝のインディアン・ライト Indian Light 、イタリアで3勝したホビーン Hobean などがいます。
サリスカの直接の牝系で先ず登場する大物は、3代母にあたるマウンテン・ロッジ Mountain Lodge 。
彼女は3歳時、ニューマーケットの長距離ハンデ戦として最も伝統あるセザレウィッチ・ハンデ(18ハロン、約3600メートル)を勝ち、明けて4歳の1983年、アイルランド・セントレジャー(GⅠ、14ハロン)で牡馬を一蹴してその名を残します。
このときの馬場状態も、この牝系が得意とする重馬場。(次走のフランス・セントレジャーは良馬場で負けています)
因みにアイリッシュ・セントレジャーは既に古馬にも解放されており、厳格な意味でのクラシック・レースとしてのステイタスは失っていました。
繁殖に上がったマウンテン・ロッジ、ビーコンの他にはベルギーのオステンデ大賞典のタービン・ブレイド Turbine Blade 、ゴードン・ステークス(GⅢでセントレジャーのトライアル)に勝ったコンプトン・エース Compton Ace などを輩出します。
この牝系、更に遡れば、7代母に彼のセレーネ Selene が出てきます。セレーネこそ名馬ハイペリオン Hyperion の母であり、ステイヤー系種牡馬として名をなしたゲインズボロー Gainsborough の祖でもあります。
セレーネからはランカシャー・オークスに勝ってサリスカの5代母になるアイウォッシュ Eyewash 、パークヒル・ステークスのコリリア Collyria 、リングフィールド・オークス・トライアルのヴァリナ Varina など、いずれも優れたステイヤー系の名馬が綺羅星の如く生まれてきます。
サリスカは6号族e 、イギリスでも屈指のステイヤー牝系が産んだクラシック・ホースと言えるでしょう。
父ピヴォタルについても一言。
ピヴォタルはポーラー・ファルコン Polar Falcon 、ヌレエフ Nureyev を経てノーザン・ダンサー Northern Dancer に到るサイヤーラインに属します。
いわゆるノーザン・ダンサー系、現在では主に6頭の馬を介して種牡馬王国を築いて行くと見て良いでしょう。ノーザン・ダンサーの「六人衆」、あるいは「六老僧」とでも言うべきか。その6頭、生年順に挙げれば、
①ニジンスキー Nijinsky
②リファード Lyphard
③ダンジグ Danzig
④ヌレエフ Nureyev
⑤ストーム・バード Storm Bird
⑥サドラーズ・ウェルズ Sadler’s Wells
ヌレエフは1980年の2000ギニー、1着で入線しながら進路妨害で失格したことで有名。
その仔ポーラー・ファルコンはラッドブローク・スプリント・カップとロッキンジ・ステークスに勝ったスプリンター/マイラー。
サリスカの父ピヴォタルはナンソープ・ステークスとキングズ・スタンド・ステークスを制したスプリンターです。
種牡馬となったピヴォタル、産駒にはもちろんスプリンターが多いものの、配合に拠って自身より長距離を克服する馬も数多く、これまでプリティー・ポリー・ステークス(2000メートルのGⅠ)のコーリスト Chorist 、1マイルのGⅠ戦サン・チャリオット・ステークスとロッキンジ・ステークスを制したピアレス Peeress 、愛1000ギニーのソワール Saoire 、セント・ジェームス・パレス・ステークスに勝ったエクサレント・アート Excellent Art などを出してきました。
そして去年、独1000ギニーをブリセイダ Briseida が、仏2000ギニーをファルコ Falco が、愛1000ギニーをハーフウェイ・トゥー・へヴン Halfway To Heaven が夫々制して、一気にクラシック産駒の数を増やしたのでした。
今年のオークスに勝ったサリスカ、2400メートルの距離では最初のピヴォタル産駒のクラシック馬ですが、それは前半に記したように、牝系のスタミナに与るところが大きいでしょう。

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