アルトゥール・ロジンスキ指揮ニューヨーク･フィル(８)

音楽監督としては最後、１９４５－１９４６シーズンに入りますが、その前に第３回サマー・シーズンに出演した時の１回から。
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《第３回サマー・シーズン》
１９４５年７月一日　カーネギーホール
　モーツァルト/アイネ・クライネ・ナハトムジーク
　ワーグナー/楽劇｢ニュルンベルクのマイスタージンガー｣前奏曲
　チャイコフスキー/交響曲第５番
　　指揮／アルトゥール・ロジンスキ
《１９４５－１９４６シーズン》
１９４５年１０月４・５日　カーネギーホール
　バッハ＝バーンズ/カンタータ第２２番～コラール｢目覚め、我が主｣
　ベートーヴェン/交響曲第３番
　コープランド/バレエ組曲｢アパラチアの春｣
　ラヴェル/バレエ｢ダフニスとクロエ｣～管弦楽抜粋と第２組曲
　　指揮／アルトゥール・ロジンスキ
１９４５年１０月７日　カーネギーホール
　ベートーヴェン/交響曲第３番
　コープランド/バレエ組曲｢アパラチアの春｣
　ラヴェル/バレエ｢ダフニスとクロエ｣～管弦楽抜粋と第２組曲
　　指揮／アルトゥール・ロジンスキ
１９４５年１０月１１・１２日　カーネギーホール
　シェリング/管弦楽のための幻想曲｢戦勝舞踏会｣
　Ｒ．シュトラウス/ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら
　カバレフスキー/ピアノ協奏曲第２番ト短調作品２３
　ベートーヴェン/交響曲第５番
　　指揮／アルトゥール・ロジンスキ
　　ピアノ／ナディア・ライゼンバーグ
１９４５年１０月１４日　カーネギーホール
　ワーグナー/歌劇｢ローエングリン｣前奏曲
　Ｒ．シュトラウス/ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら
　カバレフスキー/ピアノ協奏曲第２番ト短調作品２３
　ベートーヴェン/交響曲第５番
　　指揮／アルトゥール・ロジンスキ
　　ピアノ／ナディア・ライゼンバーグ
１９４５年１０月１８・１９・２１日　カーネギーホール
　ウェーバー/歌劇｢オベロン｣序曲
　チャイコフスキー/ヴァイオリン協奏曲
　マーラー/交響曲第１番
　　指揮／アルトゥール・ロジンスキ
　　ヴァイオリン／ナタン・ミルシテイン
１９４５年１０月２０日　カーネギーホール
　ウェーバー/歌劇｢オベロン｣序曲
　プロコフィエフ/ピアノ協奏曲第３番
　マーラー/交響曲第１番
　　指揮／アルトゥール・ロジンスキ
　　ピアノ／ヤーデル・スコロフスキー
１９４５年１０月２５・２６日　カーネギーホール
　グリンカ/歌劇｢ルスランとリュドミラ｣序曲
　プロコフィエフ/子供のための組曲｢夏の日｣
　ラフマニノフ/パガニーニの主題による狂詩曲
　チャイコフスキー/交響曲第５番
　　指揮／アルトゥール・ロジンスキ
　　ピアノ／ウイリアム・カペル
１９４５年１０月２７日　カーネギーホール
　グリンカ/歌劇｢ルスランとリュドミラ｣序曲
　プロコフィエフ/子供のための組曲｢夏の日｣
　ロパトニコフ/ヴァイオリン協奏曲作品２６
　チャイコフスキー/交響曲第５番
　　指揮／アルトゥール・ロジンスキ
　　ヴァイオリン／ヨゼフ・フックス
１９４５年１０月２８日　カーネギーホール
　チャイコフスキー/歌劇｢エフゲニ・オネーギン｣～ポロネーズ
　ラフマニノフ/パガニーニの主題による狂詩曲
　チャイコフスキー/交響曲第５番
　　指揮／アルトゥール・ロジンスキ
　　ピアノ／ウイリアム・カペル
１９４５年１１月１３日　ブッシュネル・メモリアル・ホール
　バッハ＝バーンズ/カンタータ第２２番～コラール｢目覚め、我が主｣
　ベートーヴェン/交響曲第５番
　シェリング/管弦楽のための幻想曲｢戦勝舞踏会｣
　Ｒ．シュトラウス/ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら
　Ｊ．シュトラウス/円舞曲｢ウィーンの森の物語｣
　　指揮／アルトゥール・ロジンスキ
１９４５年１１月１５・１６日　カーネギーホール
　ピストン/交響曲第２番
　ベートーヴェン/ピアノ協奏曲第４番
　アルベニス＝アルボス/組曲｢イベリア｣～セヴィリアの聖体祭
　ドビュッシー/海
　　指揮／アルトゥール・ロジンスキ
　　ピアノ／ロベール・カサドシュ
１９４５年１１月１８日　カーネギーホール
　ピストン/交響曲第２番
　ベートーヴェン/ピアノ協奏曲第４番
　アルベニス＝アルボス/組曲｢イベリア｣～セヴィリアの聖体祭
　Ｊ．シュトラウス/円舞曲｢ウィーンの森の物語｣
　　指揮／アルトゥール・ロジンスキ
　　ピアノ／ロベール・カサドシュ
１９４５年１１月２２・２３・２５日　カーネギーホール
　ワーグナー/楽劇｢ラインの黄金｣～神々のワルハラへの入場
　ワーグナー/楽劇｢ジークフリート｣～森の囁き
　ワーグナー/楽劇｢神々の黄昏｣～ジークフリートの葬送行進曲
　ワーグナー/楽劇｢神々の黄昏｣～ブリュンヒルデの自己犠牲
　ワーグナー/楽劇｢ワルキューレ｣第３幕全曲
　　指揮／アルトゥール・ロジンスキ
　　独唱／テルマ・アルトマン、ドリス・ドー、ドリス・ドレー、マルガレーテ・ハーショウ、
　　　ビール・ホーバー、ヘルベルト・ヤンセン、ジャンヌ・パーマー、
　　　マクシーヌ・ステルマン、ヘレン・トラウベル、テルマ・ヴォティプカ
１９４５年１１月２４日　ニュージャージー、マッカーター劇場
　バッハ＝バーンズ/カンタータ第２２番～コラール｢目覚め、我が主｣
　ベートーヴェン/交響曲第５番
　シェリング/管弦楽のための幻想曲｢戦勝舞踏会｣
　Ｒ．シュトラウス/ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら
　Ｊ．シュトラウス/円舞曲｢ウィーンの森の物語｣
　　指揮／アルトゥール・ロジンスキ
１９４５年１１月２９・３０日　カーネギーホール
　ヴォルフ＝フェルラーリ/歌劇｢スザンナの秘密｣序曲
　カーペンター/交響組曲｢七つの時代｣(世界初演)
　ブロッホ/シェロモ
　シューベルト/交響曲第７番ハ長調｢ザ・グレイト｣
　　指揮／アルトゥール・ロジンスキ
　　チェロ／レナード・ローズ
１９４５年１２月１・２日　カーネギーホール
　カーペンター/交響組曲｢七つの時代｣
　ハイドン/ハープシコード協奏曲二長調
　モーツァルト/ピアノ協奏曲変ホ長調Ｋ.４８２
　チャイコフスキー/組曲第４番｢モーツァルティアーナ｣(２日は第４楽章のみ)
　　指揮／アルトゥール・ロジンスキ
　　ピアノ／ワンダ・ランドフスカ
１９４５年１２月６・７日　カーネギーホール
　ミヨー/フランス組曲(作曲者指揮)
　ミヨー/マルティニック島の舞踏会(世界初演)(作曲者指揮)
　メンデルスゾーン/｢真夏の夜の夢｣序曲、夜想曲、間奏曲、スケルツォ
　ベートーヴェン/ヴァイオリン協奏曲
　　指揮／アルトゥール・ロジンスキ
　　ヴァイオリン／ユーディ・メニューイン
１９４５年１２月９日　カーネギーホール
　ワーグナー/楽劇｢ニュルンベルクのマイスタージンガー｣前奏曲
　メンデルスゾーン/｢真夏の夜の夢｣序曲、夜想曲、間奏曲、スケルツォ
　ベートーヴェン/ヴァイオリン協奏曲
　　指揮／アルトゥール・ロジンスキ
　　ヴァイオリン／ユーディ・メニューイン
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１０月１１日のシェリング Ernest Schelling (1876-1939) はほとんど知られていないアメリカの作曲家ですが、いわゆる天才に属する人。４歳でフィラデルフィアでピアニストとしてデビュー、ヨーロッパで多くの著名人に付いて勉強し、ヨーロッパとアメリカをピアニストとしてツアー、北米に定着してからはピアニスト、指揮者、作曲家として多面的に活躍した人です。
その作品も当時は極めて人気があり、ニキシュ、リヒター、トスカニーニ、モットル、フィードラー、ムック、プフィッツナー、メンゲルベルク、ストコフスキー、ストック、ダムロッシュなどの大指揮者たちが挙って指揮しています。
ニューヨーク・フィルではヤング・ピープルズ・コンサートに多く携わった他、ボルチモア響の指揮者も務めていました。
趣味も多彩で、武器と甲冑のコレクター、水泳の名手、ボート界の花形スター、芸術一般に造詣が深く、マクダウェル協会を設立したりもしています。知的でハンサム、５ヶ国語がペラペラだったと言いますが、その作品が現在ではほとんど演奏されないのも判るような気がします。
ロジンスキの演奏が録音として残されていれば、一度だけ聴いてみたいもの。
１１月に３日間、ワーグナー・プロを振っているのが大注目です。特にワルキューレの３幕全曲。
ロジンスキはニューヨークに新しいプログラムを持ち込みましたが、その一つの試みがオペラの演奏会形式上演です。それまでのニューヨークでは考えられなかったことでした。ニューヨークの音楽監督に就任する以前、ロジンスキはショスタコーヴィチの｢ムツェンスクのマクベス夫人｣を取り上げたことがあり(１９３５年クリーヴランド)、それが同作品のアメリカ初演となっています。
ワルキューレの歌手については全く判りませんので名前のアルファベット順、もちろんトラウベルがブリュンヒルデ役だったことは間違いありません。
ロジンスキの新機軸のもう一つの柱が、１２月初めのプログラムに象徴されています。現代音楽を積極的に紹介することと、作曲家本人に作品を指揮する機会を与えること。
このときはフランスの大作曲家ミヨーが登場し、自作を２曲、内１曲は世界初演の新作というプログラムでした。｢マルティニック島の舞踏会｣は作品２４９、２台ピアノのための原曲をオーケストラ用にアレンジした作品です。