強者弱者(37)

新兵入営

 一日 新兵入営。都下の新聞紙皆競うて此日の光景を報道す。その観察の浅薄にして皮相に過ぎざること、寧ろ滑稽の感に堪えず。麻布龍土の歩兵第三連隊は主に近在より徴されたるものを集め、赤坂檜町の歩兵第一連隊は主に市内の壮丁を収容す。新兵入営に就いての滑稽種は専ら龍土に在り。江戸ッ児のきびきびしき入営振りは必ず之を檜町に就いて索めざる可からず。近衛に就いて江戸ッ児の入営を説くは迂なり。

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新聞報道などのマスコミは、100年前からほとんど進歩していないようですね。当時も浅薄にして皮相に過ぎざる報道しかしていない。現在もその滑稽度を笑うしかありませんな。

麻布龍土町と赤坂檜町の気質の違いが描かれていますが、これは現在では認められないでしょう。

「索め」は、「もとめ」と読みます。もとめる、は普通「求」を使いますが、これは広い意味で無いものを有るように求めること。これに対し、「索」は探し求めるの意味。正に検索ですね。

「迂なり」は、「うなり」。実情に合わないと言う意味で、迂闊(うかつ)の「迂」と言えば判り易いでしょう。

 

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