強者弱者(58)

節分

 四日、節分、豆撒きの古例は成田の不動、浅草の観音、川崎の大師などに残りて弥よ盛に行はるれど、各戸の式としては大に廃れたるものゝ如し。旧家の聞えある商家には尚ほ之を踏襲するもの少からず。柊にゴマメの頭、追儺の声の頓狂なるに若き女どものドッと笑ひ崩れたる、福茶の香のかんばしき、豆拾ふとてひしめく児等の声の賑やかなる、かくして光淡き冬の日は行くめり。

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節分の情景です。これを読むと、昔は各家々でももっと盛んに行われていたことが偲ばれますね。

そもそも節分は立春、立夏、立秋、立冬の前日のことで、年に4回あるもの。それが立春の前だけ騒がれるようになったのはそれなりのワケがあったのでしょう。

節分の行事で最も一般的なのが豆撒き。成田、浅草、川崎が定番なのは100年前も変らないようです。

「柊にゴマメの頭」にある「ゴマメ」とは、カタクチイワシを干したもののこと。現在では柊(ひいらぎ)に鰯の頭を刺して戸口に飾るという風習になっていますが、比較的新しい魔除けの儀式の由。

「追儺」をスラスラ読める人は少ないでしょうが、これは「おにやらい」と読みます。広辞苑には「ついな」で載っていますから、興味がある人はそちらを御覧なさい。
要するに、“鬼は外、福は内”のこと。元は宮中で行われていた大晦日の儀式です。

その他に節分に因んだ行事がいろいろありますが、最近の流行は恵方巻でしょうか。この由来はよく知りませんが、関西方面の習慣だと聞いたことがあります。少なくとも東京ではこんな風習はありません。どうせ誰か仕掛け人がやったことでしょうね。

それよりは秀湖も触れているように、福茶を呑むことの方が理に適っているように思えませんか。

 

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