強者弱者(90)

大師河原

 十二日八せん。此頃風雨多し。十七日上野東照宮の祭礼。落花地に委して境内転た寂寥たり。
 小金井の花毎年此頃を以て盛りとす、小金井の特色は前に説きたるが如し。大師河原は東京の染井桜を移植したものなれば俗悪にして見る可からず。殊に『天狗の巣』のはびこるに委せたるは見苦しとも見苦し。近年小利根(江戸川)の堤防にも亦桜を植えたり。樹若くして未だ見るに足らざれども、鴻の台に対し、清流にのぞみ、最も其処を得たれば遠からずして近郊唯一の遊覧地たるに至る可し。

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珍しく平仮名で書いてありますが、八せんは、「八専」と書きます。私は知らなかったのですが、暦で十干十二支の組み合わせのうち、壬子(みずのえね)から癸亥(みずのとい)までの12日間の中から丑・辰・午・戌を除いた8日間のことなのだそうです。
年によって日付けは異なりますが、年に6回ある計算になるそうです。今年の場合は、

1月2日~1月13日までの間の8日間
3月3日~3月14日までの間の8日間
5月2日~5月13日までの間の8日間
7月1日~7月12日までの間の8日間
8月30日~9月10日までの間の8日間
10月29日~11月9日までの間の8日間

となります。
この間は雨が多いと言い、法事や婚礼は凶なのだそうですね。この文章が書かれた年は4月12日が八専で、謂れの通り雨だったのでしょう。

川崎大師に面した大師河原、現在もソメイヨシノが並んでいるのでしょうか。ソメイヨシノが嫌いな秀湖はボロクソに貶しています。

『天狗の巣』というのは、植物の病気のこと。こんなホームページを見つけました。↓

http://flower.naro.affrc.go.jp/kankobutsu/newspaper/28/index.html

一方、江戸川堤防の桜には期待していますね。こちらはソメイヨシノではないのでしょうか。現在の江戸川区の地図を見ると、「さくら通り」とか「親水さくらかいどう」という名前が見られますから、明治末年に植えたという桜が残っているのでしょうか。

 

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