強者弱者(68)
春漸く近し
春近く、杉の色あかし。松柏は霜に緑の色をほこるも、春に遇うて衰ふ。たとへば意志強き人の、燃ゆらん青春の日を厳粛なる努力に送りて、功成り名遂げたる暁既に頭上半白の霜を加へたるに似たり。二月の末、野に立ちて、杉の木立の色漸く衰へゆくを見る時、誰か歓楽短くして、悲哀長き人生を思はざるものあらんや。
二十五日、孔子祭。例によりて市内各所に儒者のひからびたる講演あり。たまたま神田の聖廟に詣づるものあり。毘沙門、金比羅、薬師、大師の縁日に比べて何ぞそれ寂々寥々たるの甚しきや。
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人生を植物の姿に喩えた文章です。
「松柏」は(45)で解説しました。
二月二十五日は孔子祭とのことですが、これが良く判りません。孔子の誕生日を祝う孔子祭は、現在では9月28日ということで定着しているようです。明治時代は別の説が採られていたのでしょうか。
因みに孔子の命日は4月11日ということになっています。
いずれにしても現代の東京では儒者の干からびた講演などは行われていません。
神田の聖廟とは、もちろん昌平黌(しょうへいこう)のこと。今でも大きな孔子像が安置されています。
昌平黌の孔子祭は、毎年4月の第4日曜日に行われる由。やはり講演も行われるようですから、干からびた、などと言ってはいけませんね。
http://www.seido.or.jp/year.html
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