強者弱者(21)
酉の市
酉の市、市民の集り来る者、洪水の堤を決するが如し、浅草公園より大鳥神社に至る七八町の間、右に揉まれ、左に押されて雪崩れ行くに、約一時間を要す。近年、新橋より浅草に行くもの、腕車を日本橋材木町の河岸に駆る。夜に入りて橋南橋北の美人、寂々寥々たる問屋町の暗を衝いて帰る。ゴム輪音なく、只白きヴェールの迅きこと矢の如きを見るのみ。
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11月の干支で酉の日は「酉の市」ですね。干支ですから12進法、年によって2回ある年と3回ある年があります。最初を「一の酉」、二番目が「二の酉」。
三の酉まである年は活気がありすぎて火事が多いという言い伝えがあるそうな。これは神宮館の運勢歴による解説です。
因みに今年(平成21年)は「一の酉」が11月12日、「二の酉」は11月24日です。景気が回復するのは来年でしょうかね。
この文章は恐らく明治43年だと思いますが、この年は「三の酉」まであったのでしょうか。
ここに書かれている「大鳥神社」は「鷲神社」の間違いでしょう。浅草公園から国際通りを歩いて鷲神社までの七八町、酉の日に一度は歩いてみる価値がありそうです。
「腕車」(わんしゃ)は人力車のこと。こういう言い方は忘れられてしまいましたね。ワン(One)車と洒落てみるのもいいかも・・・。
日本橋は現在でも昔の町名がたくさん残っていますが、材木町はなくなってしまいました。現在は日本橋1丁目だそうで、中央通りの「日本橋」が架かっているいる辺りでしょう。
明治時代の日本橋界隈の写真はこちらから。↓
http://www.ndl.go.jp/scenery/map/map_o/nihonbashi-ku/index.html
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