復刻版・読響聴きどころ(13)
昨日の日記でも触れましたが、2010年4月からスタートした新シーズンから読響のプログラム誌が変わり、曲目解説も充実した内容になっています。
本シリーズは、当時の解説内容に不満があって自己流に聴きどころを予習した記録。振り返れば無茶なことをしたものだと反省頻りなのですが、敢えて恥を忍んで再録しています。
特に2007年6月定期はメシアンの大作。自己流聴きどころは、スコアを眺めつつ纏める方針でしたが、これだけは楽譜を買えませんでした。あまりにも高価ですからね。
スコアに目を通さずにこういうことをしてはいけません、という悪しき前例としてお読みください。
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6月は回替わりで3人の指揮者が登場します。定期演奏会は元常任指揮者の若杉弘氏。45周年を記念しての再登場でしょう。
私が初めて読売日響の会員になったのは若杉時代でしたから、感慨はあります。
今回取り上げるのはメシアンの大作「われらの主イエス・キリストの変容」。若杉のメシアンと言えば、第32回定期での「昇天」を懐かしく思い出しますが、思えばあれがメシアン初体験だったと思います。
私的感傷はさて措き、今回の変容。正直な所これはお手上げです。ナマで聴いたことはありませんし、楽譜も手元にありません。僅かにCDが一点あるだけ。従いまして細かいことに触れる知識はありませんので、調べた範囲のことを羅列するに留めます。
日本初演はこれです。その後演奏されたのかどうか、記録を捜してみましたがよく判りません。今回が再演かもしれませんね。
1978年7月15日 NHKホール
ロリン・マゼール指揮・フランス国立管弦楽団。フランス国立放送合唱団(指揮はロジェ・ワーグナー)、イヴォンヌ・ロリオ(ピアノ)、パトリック・ガロア(フルート)、ルシアン・ルメール(マリンバ)、クロード・タヴェルニエ(ヴィブラフォーン)、ロジェ・アルバン(チェロ)、ギー・ダンゲン(クラリネット)、ベルナール・バレ(シロリンバ)。
従って今回が2度目ということになれば、日本人による初演となります。
先にも書きましたが、楽譜を見ることができません。アルフォンス・リュデュック社から出版されていますが極めて高価、全体は二分冊になっていまして、全部揃えると8万円ほどになります。ということで断念しました、悪しからず。
全体の編成は、合唱が100人丁度。パートが10に分かれていて夫々に10人が充てられています。そのパートは第1ソプラノ、第2ソプラノ、メゾ・ソプラノ、第1コントラルト、第2コントラルト、第1テノール、第2テノール、バリトン、第1バス、第2バスです。
次にソリストが登場しまして、フルート、クラリネット、シロリンバ、ヴィブラフォーン、マリンバ、チェロ、ピアノの7人です。
シロリンバというのは聞きなれませんが、想像されるとおり、シロフォンとマリンバの合体。マリンバに更なる高音部を付け足したもののようで、相当な大型打楽器です。この際、よく見ておきましょうか。
オーケストラは、ピッコロ2、フルート3、オーボエ3、イングリッシュホルン、E♭クラリネット、クラリネット3、バスクラリネット、ファゴット3、コントラファゴット、バス・サクソフォーン、ホルン3、ソプラノ・トランペット3、トランペット3、トロンボーン3、バストロンボーン、チューバ、コントラバス・チューバ、弦5部(16-16-14-12-10)、打楽器6人です。
打楽器は1番奏者がトライアングル、レコ・レコ、アンティック・シンバル3、懸垂シンバル、シンバル。第2奏者はクロタル、クラヴェス、テンプル・ブロック6、マラカス、ルミノフォーン、シンバル。第3奏者はテューブラー・ベル。第4奏者がゴング7、第5奏者はタム・タム3、第6奏者が懸垂シンバル、トム・トム3、大太鼓となっています。
ルミノフォーンとは何だ、という突っ込みは入れないで下さい。資料を転載しているだけですから。
オーケストラを合計すると109人になります。トゥーランガリラ交響曲が丁度100人ですから、それより9人多く、なおかつソリストと合唱ですからトゥーランガリラの2倍以上、今回は特設ステージを用意する大掛かりなものになります。まず壮観でしょうね。最大の見どころか。
作品は2部に分かれ、夫々が7曲づつで構成されています。数字の「7」を意味するセプテネールと呼ぶそうです。この構成を頭に入れておけば、全体はそう難しいものではありません。
二部とも同じ形で、最後にコラール(賛歌)が置かれています。どちらも極めて遅いテンポですが、第1部はピアニシモで、第2部はフォルティッシモで演奏されます。
残り6曲ずつの割り振りもシンプルです。先ず「叙唱」(レシタティーヴォ)と呼ばれる曲が置かれ、これに2曲の「瞑想」が続きます。叙唱の内容を歌い上げるものですね。これがセット。各部とも2セットありますので、全体は14曲から出来ていることになります。
恐らく第1部と第2部の間に休憩が入るでしょう。第1部は40分、第2部が1時間強の演奏時間ですね。
合唱曲ですからテキストがありますが、さすがにそれはプログラムに掲載されるはずです。しかし歌詞にはあまり拘らなくてもよいように思います。マタイ伝、旧約聖書、新約聖書、トマス・アクイナスの神学大全などから採用したもので、全てキリストの変容に題材を取ったもの。
音楽は4月名曲の「われら死者の復活を待ち望む」と良く似たものです。様々なタイプの音楽がブロックのように組み合わされ、反復されていきます。メシアンの常套手段でしょう。
それらが合唱やソロ楽器を伴い、更に立体的に表現されていますから、好きな人には堪えられないでしょうし、嫌いな人には苦痛を伴うかもしれません。
鳥の鳴声がたくさん登場するのも、インドのリズムが複雑に絡み合うのも、金属打楽器がエスニックな雰囲気を醸し出すのも同じです。ただ真に長い。
個々の曲に触れる余裕はあまりありませんが、私が面白いと思ったのは次のような点です。
第8曲。叙唱は全部で4曲ありますが、他がほとんど同じ趣向なのに対し、第2部冒頭のものは弦楽器のグリッサンドが輝く雲を描写しています。チョッと聴くとペンデレツキを連想させ、飽きません。
第1部では第5曲が素晴らしいですね。チェロのソロ、合唱のハミングと弦の和音に乗るピアノ・ソロなどとても美しく聴きました。
第2部の第9曲も面白いでしょう。同じことを2度繰り返すので長く感じますが、ゴング7とタムタム3、即ち第4・第5打楽器奏者が高い音から低い音の順に全部で10発の轟音を響かせます。これが2度出るわけで、全体でも良く目立つ箇所でしょうか。
第12曲と第13曲も同じことの反復や3回繰り返しなどで時間が掛かりますが、どちらも最後の音響の盛り上がり方などは大変にスリリングなものですね。
以上、大した聴きどころにはなりませんでした。好事家の皆様の補足をお願いいたします。
最後にメシアンのホームページを紹介しておきます。
ご存知かもしれませんが、来年はメシアンの生誕100年に当たります。メシアンの誕生日である12月10日に向けて世界中で記念の催しが計画されていますが、その一端がここに掲載されています。
Concerts をクリックしてずっと下の方をご覧下さい。7月17日のところ。“アッ”と声を挙げる方も多いのじゃないでしょうか。私もビックリしました。
もしこれが情報の誤りでなければ、今回の定期を実体験することこそが最大の「聴きどころ」になると思います。
http://www.oliviermessiaen.org/messiaen2index.htm
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